ヘバーデン結節の変形抑制に動脈注射治療は有効なのか。

ヘバーデン結節(手指DIP関節の変形性関節症)の治療のお悩みは、大きく分けると2つです。

1.痛みが取れるのか
2.変形抑制効果が期待できるのか

へバーデン結節の動注治療では、痛みの緩和に関してはエビデンスが出てきています。

このページでは、変形抑制効果についての動注治療の考えを伝えていきます。

目次

動注治療と臨床報告

動脈注射療法(動注療法)について、国内外で複数の臨床報告があります。代表的なものを挙げると、2023年の日本からの後ろ向き研究では手指DIP/PIP関節痛の患者92名に対し、橈骨動脈または尺骨動脈からカルバペネム系抗生剤(イミペネム/シラスタチン)を動脈内注入し経過を追いました​

その結果、12か月後に77%の患者で疼痛NRSが2ポイント以上改善し(平均NRSが7.8から約3.8に低下)、手の機能障害スコア(QuickDASH)も27から19に有意に改善し、かつ重篤な有害事象は報告されておらず、安全に施行できていたという報告です。

また、台湾からのパイロット研究(2023年)では保存療法で効果のない手指OA患者9名に二回の動脈塞栓術を行い、6か月後の疼痛VASが平均76mmから18mmに大きく改善、患者の88.9%が疼痛半減(50%以上の痛み軽減)を達成しました。同時に手指OA評価指数(AUSCAN)の痛み・こわばり・機能スコアも有意に向上、追跡期間中に重篤な副作用は生じてていない、という報告があります。​これらの結果により、動注療法が保存療法無効な症例に対して有効で安全な新規治療になり得ると結論づけています​

さらに日本の奥野祐次医師(オクノクリニック)らの臨床報告では、2回の動注療法施行で約9割の患者に何らかの症状改善が得られたとされ​、実臨床でも高い奏効率が示唆されています。動注治療は国内60以上の医療機関で導入され、2023年までに延べ8,000人以上が施行を受けていますが重篤な副作用の報告はなく、日本だけでなく米国・ドイツ・台湾からも学術論文が発表されるなど国際的にも注目されています​

今のところ、効果の評価基準として、臨床研究では主に疼痛緩和と機能改善が指標とされています。例えば疼痛の評価にはVASやNRS(数値評価スケール)が用いられ、前述の研究では治療後の疼痛スコアがベースラインに比べ有意に低下しています​。

ある研究では12か月後の疼痛NRSが平均で約半分まで改善し、患者の主観的改善度(PGIC)でも高い満足度が示されました​

機能面ではQuickDASHやAUSCANといった手指の疼痛・障害に関する質問票スコアを用い、痛みに伴う日常動作困難の改善を定量的に評価しています​

実際に治療後はつまむ・握る動作や筆記動作が容易になるなど機能向上が報告されており​、生活の質の向上につながっています。​

一方、変形抑制効果の評価については、X線画像での関節変形度合いの変化など客観的な形態評価は現時点で十分なデータがありません。もう変形が進んでしまっているヘバーデン結節の既に生じた骨の節(結節)そのものが小さくなることは期待できません​。しかし、慢性的な炎症を抑えることで将来的な変形進行を食い止める可能性はあるのでは、という考えもあります。実際、変形性関節症では炎症に伴う異常血管新生が軟骨破壊や骨増殖を促進しうるため、その炎症源を断つ本治療が病勢進行を遅延させる可能性があります​。レントゲンでの変化や変形性関節症の形態学的な時系列評価は評価が難しい部分もあり、そのためまだ研究段階といえます。

また、痛みから可動域低下につながる部分に関しては、疼痛緩和により改善できる見込みがあります。

つまり、変形については長期的な追跡研究が今後必要ですが、少なくとも治療を受けた患者では痛みによる関節使用制限が軽減するため関節可動域の維持・拘縮予防にも寄与する可能性はあると考えられます。

他の治療法との比較:

  • 保存療法との比較: ヘバーデン結節に対する保存的アプローチには、安静・生活指導、装具による関節固定やサポート、痛み止めの内服・外用(NSAIDsや鎮痛薬)、温熱療法やリハビリテーションなどがあります​。これらは一定の痛み軽減や機能補助には有用ですが、効果は一時的または限定的であることが多く、関節の変形進行を食い止める作用はありません。実際、高齢者に多い手指OAに対して有効な根本治療は長らく存在せず、「痛みは年月とともに自然に収まるまで耐えるしかない」と告げられるケースもあります。こうした中で動注療法は、保存療法では痛みが取れない方へ、疼痛軽減をもたらす新たな選択肢です。保存療法無効例の集積研究において、動注療法後は大半の患者で痛みと機能が著明に改善し、併用していた鎮痛薬や装具の使用も減少する傾向が報告されています​。したがって動注療法は従来の保存療法では得られにくい痛みのコントロールと生活の質向上を実現しており、難治性のヘバーデン結節痛に対する画期的な治療と位置づけられます。
  • 手術療法との比較: ヘバーデン結節が重度で日常生活に支障が大きい場合、手術治療が検討され、一般的にはDIP関節の関節固定術(骨融合術)が行われます。関節固定術は変形した関節面を切除して骨同志を癒合させる手術で、痛みの根源である関節運動を止めることで痛みを確実に除去できる反面、指の曲げ伸ばしができなくなるというトレードオフがあります​。複数指に痛みや変形がある場合でも一度の処置で広範な関節痛に対応できる利点があり、関節の構造自体は温存されます。関節可動域を残したまま痛みのみを取ることが期待できる点で手術療法に対する大きなメリットがあります。
  • 他の注射療法との比較: ヘバーデン結節を含む手指OAに対しては、従来から関節内注射による治療も行われてきました。代表的なのはステロイド(副腎皮質ステロイド剤)注射で、炎症と疼痛を一時的に鎮める目的でDIP関節内に少量を注入します。ステロイド関節注射は一定の痛み軽減効果がありますが持続期間は数週間~数か月と短期的で、効果が切れるたびに繰り返し打つ必要がある点が問題です。また関節内への繰り返し注射は感染のリスクや軟骨・腱への悪影響も伴うため慎重な適応が求められます。一方のヒアルロン酸注射(関節潤滑剤)も変形性関節症治療で広く用いられていますが、主に膝など大関節が適応であり、手指の小関節に対する有効性は明確ではありません。
  • 近年、自己血由来のPRP療法(多血小板血漿注射)も手指関節の変形性関節症に応用する試みがあります。いくつかのランダム化比較試験ではPRPがプラセボやステロイドと比べて手指OAの痛み・機能を改善したとの報告もあり​メタアナリシスでもPRP注射群の方が有意に症状改善する傾向が示されています。しかし、PRP療法は関節内に複数回注射する必要がある場合も多く、その効果発現や持続は症例によってばらつきがあります。またステロイドやPRP・ヒアルロン酸のいずれも、関節の変形進行を抑制する効果(疾患修飾効果)は証明されておらず​、あくまで痛みなど症状の緩和が目的です。これらと比較して動注療法は、関節内ではなく痛みの原因とされる異常血管網(モヤモヤ血管)へ直接アプローチする独特の手法であり、1~2回の治療で得られる鎮痛効果が半年~1年以上持続するケースが多い点が大きな特徴であることと、炎症の元となる血管新生が遮断されれば、将来的な変形悪化も食い止められる可能性がある点は単に関節腔内へ薬剤を投与する従来の注射療法にはない利点といえます。
  • もっとも、動注療法自体も現時点では痛みの原因を断つことで間接的に変形進行を遅らせると期待される段階であり、その変形抑制効果を裏付ける長期エビデンスはこれからの課題です。

研究の信頼性(エビデンスの質)にも留意が必要です。動注療法に関する現在のデータは主に疼痛や自覚症状の改善に対して、非ランダム化の症例シリーズや後ろ向き研究から得られており、エビデンスレベルとしてはまだ確立途上です。現時点でヘバーデン結節に対するRCT(ランダム化比較試験)やメタアナリシスは存在せず、専門家もプラセボ対照試験など高品質な研究による検証が今後必要だと指摘しています​

しかしながら、国内外で蓄積されつつある臨床成績は一貫して有望な傾向を示しており、痛みの大幅な軽減と機能向上が再現性高く報告されています​。副作用も少ないことから、安全性と一定の有効性は信頼できる水準にあると言えます。最終的には、動注療法の変形抑制効果を含めた長期的な有用性を明らかにするため、さらなる大規模試験や長期追跡研究の成果が期待されています。

動注治療を
豊田市で受けられる

この治療法は、症状の改善だけでなく、痛みを抱えた日常生活を取り戻す希望として、多くの患者様から期待を寄せられています。

愛知県で動注治療を受けられるクリニックはまだ限られていますが、当院はオクノクリニックとライセンス契約を結び、専門的な治療を提供しています。

へバーデン結節治療の新しい選択肢として、ぜひご検討ください。

動注治療で 84.5% が改善

3ヶ月以内に痛みの自覚症状が改善

オクノクリニックでは、動脈注射療法の効果を追跡するため、定期的に報告会を実施しています。最近のデータでは、治療を受けた方の84.5%が3ヶ月以内に痛みの自覚症状が改善したと報告されています。

この高い改善率は、動脈注射療法がヘバーデン結節の根本的な原因にアプローチし、痛みを効果的に和らげる治療法であることを示しています。

さらに、動注治療後1年間の116例を対象としたアンケート研究では、3ヶ月後に84.5%、6ヶ月後に72.5%、12ヶ月後に75%の方が症状改善を実感しています。この結果は、動注治療が持続的な効果を持つことを裏付けています。

多くの患者様が、この治療によって日常生活の質を取り戻し、新たな希望を見出しています。痛みや不調に悩む方は、ぜひ動注治療を選択肢の一つとしてご検討ください。

痛みの軽減と日常生活の改善を目指し、患者様一人ひとりに合わせた治療を提供しております。

もし「痛みが続いている」「改善が見られない」と感じている方はぜひご相談ください。ご予約はお電話またはウェブで承っております。ご来院心よりお待ちしております。

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