「指がズキズキ…」ヘバーデン結節の最新モヤモヤ血管治療とは

目次

ヘバーデン結節とは?

  • 定義:指先のDIP関節(第1関節)に生じる変形性関節症の一型。骨棘(こつきょく)が突出し、痛みや可動域制限を伴う。
  • 好発40〜60代の女性に多い。家事やキーボード・スマホ操作など細かな動作が痛みで困難に。
  • 従来治療:鎮痛薬・装具・リハビリが中心で、進行例では手術を検討。劇的に痛みを抑える方法は限られていた。

痛みの犯人「モヤモヤ血管」とは?

  • モヤモヤ血管=病的新生血管
    • 慢性炎症部位に張り巡らされた細い異常血管で、画像下では“霞がかった”ように映るためこの名が付いた。
    • 血管と一緒に異常神経線維が増殖し、**痛み物質(サイトカイン)**を放出→神経を刺激して疼痛を増強
  • 40歳以降は自然消退しにくく、慢性疼痛の温床となることが近年の研究で判明

最新治療「動注療法(モヤモヤ血管塞栓)」の仕組み

  1. 薬剤:水に溶けにくい抗菌薬イミペネム/シラスタチン(IPM/CS)を微粒子のまま使用。
  2. 方法:手首の橈骨動脈などから極細カテーテルを挿入し、患部を栄養する動脈に薬剤を少量注入(片手約1〜2 mL)。
  3. 作用機序:微粒子がモヤモヤ血管のみを選択的に一過性塞栓 → 血流低下 → 痛みの閾値が下がる神経も同時に縮退。正常血管はすぐ再開通するため安全性が高い。森ロコモクリニックPubMed

治療プロセス(説明外来・施術自体は 5〜10 分)

ステップ内容患者の所要時間日常生活への制限
1. 診察・超音波確認血管走行と病変を確認10 分なし
2. 動脈穿刺サーフローカテーテル使用1 分施術部位の一時圧迫
3. 薬剤注入IPM/CSを1〜2 mL注入1–2 分直後から手指使用可
4. 観察15 分休憩し出血確認当日入浴可(長湯は翌日から)

エビデンスと効果

  • 疼痛VASの平均50–70 %減少が治療後4週でピーク。1クール2〜3回で8割以上が「痛みが気にならない」レベルに改善
  • 安全性:JVIR 2023年報告では重篤合併症0 %、一過性の皮下出血・熱感が10 %未満

リスクと副作用

  • 穿刺部内出血・腫脹(多くは数日以内に消退)
  • 一過性の発熱・紅斑
  • アレルギー(β-ラクタム系抗菌薬既往がある場合は要注意)

代表的な臨床シチュエーション

シチュエーション従来治療の限界動注療法が有用な理由
① デスクワークでキーボード入力が必須NSAIDsで胃が荒れる/サポーターで可動域が制限外来短時間で即日復帰可
疼痛改善効果が高く、仕事への支障が減る
② 手芸・ピアノなど巧緻作業を続けたい関節内注射はDIPへ届きにくい痛みの原因血管を根本ターゲット
③ 高齢者で鎮痛薬が使いにくい慢性腎障害や消化管潰瘍内服を増やさず疼痛コントロール
④ 他院で「治療法がない」と言われた慢性例保存療法が頭打ち血管新生が主体の病態に直接作用

よくある質問(FAQ)

何回受ければ良い?

4〜6週間おきに2〜3回が一般的。1回で痛みが十分に軽快する例もあります。

治療直後に家事や入浴は可能?

当日から可能です。ただし穿刺部の強い揉み洗いは24時間避けましょう。

健康保険は使えますか?

現在自費診療(片手 2.5〜3.8 万円程度)。クリニックにより料金設定が異なりますが、当院はオクノクリニックの正規料金の規定での料金としております。

モヤモヤ血管は再発しない?

生活動作や年齢によって再形成するため、疼痛が戻る場合は追加治療を検討します。


まとめ

  • モヤモヤ血管はヘバーデン結節痛の新しい治療ターゲット
  • 動注療法は外来5〜10 分で完了し、痛みを半分以下に抑えられるエビデンスが蓄積。
  • 手指の痛みで日常生活や趣味を諦めている方にとって、選択肢の一つとなる可能性が高い。

参考文献

  1. Okuno Y, Inui S, et al. JVIR. 2021.
  2. 医療法人祐優会プレスリリース, 2023-11-30.
  3. オクノクリニック公式サイト「モヤモヤ血管とは?」(閲覧2025-05-18)
  4. なごやEVTクリニック「異常新生血管と慢性痛」(閲覧2025-05-18
  5. OKUNO Y Clinic Price List, 2024
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