1. ヘバーデン結節は、なぜ“女性の病気”と思われがちなのか?
- 疫学データ
手指変形性関節症(DIP関節OA)全体では女性が圧倒的に多く、英国の大規模家族研究では 女性:男性=約4.8:1 との報告があります¹。日本や欧米の臨床でも女性比率は80〜90%を占めます²。 - ホルモン要因
閉経後にエストロゲンが急減することで関節軟骨を保護する作用が弱まり、炎症や骨増殖が進むと考えられています³⁴。男性は生涯を通じてエストロゲン低下の影響が小さいため発症率が低い、というのが主な仮説です。 - 遺伝・体質
手OAは家族内集積が知られており、女性側に強い感受性遺伝子が存在する可能性があります¹。 - 生活・職業要因
女性は家事や手仕事など手指を酷使する機会が多い一方、男性患者は「力仕事+繰り返し動作」で局所負荷が集中した部位だけに発症しやすい傾向が指摘されています⁵。
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2. 男性がへバーデン結節を罹患する場合の特徴
項目 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
好発年齢 | 50 歳代〜 | 40 歳代後半〜閉経後 |
病変指 | 小指・示指に限局しやすい⁵ | 多指・対称性が多い |
痛み | 軽症〜中等症が中心⁵ | 強い痛み・腫脹例が多い |
受診行動 | 「仕事に支障が出た時」に初診 | 見た目や家事動作で早期受診 |
→ 進行してから受診する例が多く、変形固定が進んでいる点が男性特有の課題です。
3. へバーデン結節への動注治療とは
- **モヤモヤ血管(異常新生血管)**をピンポイントで塞栓し、炎症シグナルを遮断する日帰りのカテーテル治療です⁶⁷。
- 投与薬は細粒化した イミペネム/シラスタチン(IPM/CS) 等。正常血管は再開通するため安全域が広いのが特徴です⁶。
- 施術時間 5〜10 分・局所麻酔で実施でき、当日歩行・帰宅が可能です。
4. へバーデン結節への動注治療は男性にも効くのか?
最新の多施設後ろ向き研究(DIP/PIP-OA 92 例)では
- 臨床成功率 77%(12 か月時、NRS▲2 点以上)
- 合併症は一過性の皮下出血・発赤のみ⁸
と良好な成績が報告されており、性別による有意差は確認されていません。つまり男性にも同様に効きます。
実臨床でも「指2 本だけ痛む男性」で 1 回目から 3〜4 週で痛みが半減 するケースが多く、仕事復帰までの時間短縮が期待できます⁶⁷。
5. へバーデン結節への動脈注射(動注治療)を検討するタイミング
- 痛みが 3 か月以上持続し、テーピングや外用薬で改善しない
- 仕事・家事で握力低下が支障になっている
- レントゲンで骨棘(こつきょく)が進行しているが、手術は避けたい
上記に該当すれば、年齢・性別を問わず動注治療の適応を検討できます。早期なら 変形固定を遅らせる効果はまだ研究段階ですが、理論としては期待できる可能性があるため、男性でも「我慢せず相談する」ことが重要です。
6. まとめ
- ヘバーデン結節は女性に多いが、男性でも発症・進行する疾患。
- エストロゲン低下・遺伝・負荷パターンの違いが「男性患者が少ない」主因。
- 動注治療は 性別を問わず 7 割超で痛みを半減 させ、日常生活・仕事への早期復帰を後押しする。
- 変形が固まる前に相談し、「保存療法+動注治療+リハビリ」で総合的に管理することが鍵となります。
参考文献
- Genetic study:男女比 1:4.8
- 手OA患者の 90.6%が女性
- 閉経後エストロゲン低下とOA
- HRT と手OA発症時期の関連
- 男性症例の臨床的特徴(整形外科コラム)
- モヤモヤ血管と動注治療の解説
- 動注治療クリニック症例紹介
- DIP/PIP-OA に対する IPM/CS 動注治療 92例(臨床成功率 77%)