Difficult to treat RA(治療困難性関節リウマチ)

関節リウマチの治療は過去に比べて大幅に進歩しています。痛みや腫れがない「寛解」または少なくとも低疾患活動性という目標と、それに応じた治療の強化により多くの方は症状が改善します。

しかし、一方で、依然としてまだコントロールされきれない症状を抱えるリウマチ患者さんも居ます。最近、その難治性の方々を医療側が認識するための用語が「治療困難性RA(Difficult-to-Treat RA)」という概念です。

EULARの治療困難性リウマチ (D2T RA) の定義

3つの基準すべてがD2T RAの診断に必要です。

治療の失敗
EULARの勧告に従い、csDMARD治療に失敗した後に、異なる作用機序を持つ2つ以上のb/tsDMARDの治療が失敗していること(csDMARD治療が禁忌でない限り)。*治療へのアクセスが経済的要因で制限されている場合を除く。

活動性/進行性疾患を示唆する兆候
以下のいずれかが認められること:
a. 関節数を含む検証された複合指標に基づき、少なくとも中等度の疾患活動性(例: DAS28-ESR > 3.2 または CDAI > 10)。
b. 急性期反応物質や画像診断を含む活動性疾患を示唆する兆候、または症状(関節関連またはその他)。
c. プレドニゾロン7.5mg/日以下にグルココルチコイド治療を減量できない。
d. 急速な放射線学的進行(活動性疾患の兆候があるかどうかを問わず)。
e. 上記の基準に従って病状が良好に管理されているが、依然としてリウマチ症状が生活の質の低下を引き起こしている。

症状の管理が問題であるとリウマチ専門医または患者が認識している

Difficult to treat RA(治療困難性関節リウマチ)の状態は、いろいろな病態が含まれる

Difficult to treat RA(治療困難性関節リウマチ)は、色々な病態をひっくるめた考え方です。この言葉を複雑にする要因としては、DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)への抵抗による持続的な炎症活動、薬物副作用や併存疾患による薬物選択の制限、治療不遵守、線維筋痛症、変形性関節症、ストレスなどの併存疾患が、非炎症性の症状(例: 痛み)も含まれるためです。

リスクファクターとして、下記は含まれる要素とされています。

長期罹患

  • 関節リウマチを長期間にわたって患っていると、症状が悪化し、治療がより難しくなることがあります。

b/tsDMARDの導入遅れ

  • 生物学的DMARDや標的合成DMARDの導入が遅れると、炎症が進行し、病気が難治化するリスクが高まります。

血清反応陽性

  • 血液検査でリウマチ因子や抗CCP抗体が陽性の患者は、炎症が激しく、治療反応が遅れる可能性があります。

メトトレキサート(MTX)の禁忌・不耐性

  • メトトレキサートが使用できない、または不耐性のある患者では、治療の選択肢が限られ、効果的な治療が難しくなります。

ステロイドの使用

  • 長期的なステロイドの使用は副作用のリスクを増大させ、またステロイドを減量することが難しい場合、炎症のコントロールが難しくなります。

肺病変の合併

  • 肺疾患の併発は、特に治療の選択肢を制限し、治療が難しくなる要因の一つです。リウマチ性肺疾患などが合併している場合、全身状態を考慮した治療が必要です。

治療困難性関節リウマチにしないために

治療困難性関節リウマチにしないための研究は、定義を作ったためにこれから進んでいくことが期待されます。

リウマチ専門医として考えることは、①早期に寛解導入に導くこと②ステロイドを早期終了できるよう、関節炎のコントロールを行うこと③JAK阻害薬の有効性の報告が治療困難性関節リウマチで増え始めていること④IL-6阻害薬もその可能性があること

早期発見・早期治療・病態や基礎疾患に留意しながらも、その中で使用できる薬剤で早期に寛解導入を行うことが大切です。