季節の変わり目(春、冬)リウマチの痛みはなぜ?原因を紹介

季節の変わり目、特に春と冬は関節リウマチの症状が悪化しやすい時期です。

気温や気圧の変動は体調に大きな影響を与え、関節の痛みや炎症を引き起こします。

この記事では、季節性の症状悪化の原因と、具体的な対策方法を詳しく解説しています。

季節の変わり目は毎年つらい症状に悩まされています

医師 高杉

寒さや季節の影響もある病気であるため、一緒に効果的な対策を考えていきましょう。関節リウマチの患者さんは、昔から「寒いと関節が痛む」「雨が降ると調子が悪い」と感じる方が多い病気でしたが、最近の研究でもやはり季節や天候と症状悪化の関連性がまとまってきています。

目次

季節の変わり目にリウマチが悪化?その原因と対策

季節の変わり目、特に春と冬は関節リウマチの症状が悪化しやすい時期だという論文も多く、実際に冬には痛みが強くなる患者さんが増えます。

気象条件の変化は体調に大きな影響を与え、関節の痛みや炎症を引き起こす原因となります。

気温の変化が激しい時期は、痛みが強くなって辛いわ

医師 高杉

日本の研究では、春にリウマチの病勢が最も悪化し、秋に改善する傾向があると報告されています。日本の保険データを集めた研究などでも、春に新規の抗リウマチ薬を追加された報告が多いです。

なぜ季節の変わり目に体調を崩しやすいのか

寒冷かつ湿潤な気候条件で関節リウマチの自覚症状(痛みやこわばり)が悪化しやすく、反対に暖かく乾燥した環境では症状が和らぎやすいという報告が多いです。

スペイン・マドリードで行われた研究では、平均気温が低い日にRA患者の症状悪化(救急受診数の増加)が有意にみられ、冬季に患者報告の痛みスコアが他季節より高い傾向が報告されています​

スペイン・マドリードで行われた研究では、平均気温が低い日に関節リウマチ患者さんの症状悪化(救急受診数の増加)が有意にみられ、冬季に患者報告の痛みスコアが他季節より高い傾向が報告されています​。

気温低下により関節液(滑液)の粘度が上昇し、関節が硬く動かしにくくなるという報告もあり、実際、健常時は“卵白”程度の粘度をもつ滑液も寒冷下では濃く粘稠になり、関節軟骨の摩擦抵抗が増すため痛みやこわばりが生じやすくなります​・

さらに寒い環境では血流が減少し局所の循環が悪くなるため、組織の栄養・酸素供給が滞り炎症が悪化しやすいと考えられ、低温時の末梢血管収縮により関節周囲の筋肉・靭帯も硬直し、関節の可動域が低下して痛みが増幅している可能性もあります。​

寒さで関節が固くなるんですね。

医師 高杉

関節液の粘度や周囲の筋の硬さもあがるという論文が多数あります。


また、雨のような湿度が高い日ほど痛みがわずかに増す傾向が報告されました(対象は変形性関節症含む関節痛全般)​

湿度が高いと発汗による体温調節が妨げられ身体が冷えやすくなるうえ、低気圧(雨天)とも相まって関節周囲の軟部組織が膨張しやすくなります​。その結果、関節包内の圧力が高まり神経受容体を刺激して痛みや違和感が生じると考えられます。

温度変化と痛覚受容体の関係として、急激な温度変化も関節の痛覚に影響します。気温が急降下する状況では、関節内の温度変化を感知する受容体(温度感受性TRPチャネルなど)が刺激され、痛みが強くなる可能性があります。実際、気温急変時には炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)やインターロイキン6(IL-6)が上昇することが報告されており​、急激な冷え込みが炎症反応を誘発し痛みを悪化させることがあると考えられます。また寒冷刺激は痛覚過敏を引き起こしやすく、冷えによる交感神経緊張で筋痙攣が起こることも痛み感受性を高める要因です​。

このように低温・高湿度環境下では物理的(滑液粘度・関節内圧)変化と生理学的(神経・血流)変化が相乗して関節炎症状を悪化させると考えられます。

季節の変わり目は自律神経のバランスが乱れやすい時期です。季節変化は身体にストレス刺激として作用し、自律神経や内分泌系にも影響を及ぼします。寒冷や嵐に伴う低気圧環境では交感神経系が活性化し、心拍数や血圧の変動だけでなく免疫細胞の機能にも変化が生じます。実際、強い精神的ストレスはサイトカインの放出を促し炎症と痛みを増幅することが知られており​ます。

リウマチと季節の関係性

関節リウマチの症状は季節によって症状が変動すると考えています。

日本の研究では、春と冬に症状が悪化し、秋に改善する傾向が報告されています。

季節の変化で症状が変わるなんて、知らなかったわ

医師 高杉

冬は痛いことが多いのですが、治療強化に繋がらないことも多いです。
これは、痛みが炎症によるものでない場合と、冬だから仕方ないと様子をみられているケースの両方があると思います。大事なのは適切な評価ですね。また、減薬のタイミングも、気候変動で調整する(病勢が安定しやすい時期にバイオフリーをトライするなど)もあります。

春と冬、リウマチの痛みが悪化する理由

関節リウマチの痛みは季節によって大きく変動し、特に春と冬に症状が悪化しやすいという研究結果が報告されています。

春と冬の痛みがつらくて、毎年この時期が憂鬱になってしまいます

医師 高杉

患者さんの多くが冬から春にかけて、症状の悪化を経験されている方が多いです。

寒暖差による血流への影響

寒暖差が大きい季節の変わり目は、血流を変化させ、炎症を悪化させる原因となります。

気圧変動が関節に与える影響

春と冬は気圧の変動が大きく、関節内の圧力バランスが崩れやすい季節です。

気圧の変動に対しては、室内環境の整備や適切な運動を心がけることが大切です。

日照時間とビタミンD不足の影響

冬季は日照時間が短く、日光を浴びて活性化するビタミンD不足が免疫機能に影響を与え、症状を悪化させる要因となる報告が増えてきています。

日照時間の短い時期は、意識的にビタミンDを補給することで、症状の悪化を予防できる可能性があり、また日本人女性はビタミンD摂取が不足している方が多いため補充を検討する必要があります。

季節による痛みを回避するための生活習慣

関節リウマチの季節の痛みを和らげる方法やセルフケアを解説します。

関節リウマチ(RA)は天候や生活習慣の影響を受けやすく、日常のセルフケアで症状の悪化を和らげることができます、(1)気温・湿度・気圧への対応策、(2)免疫や炎症を整える生活習慣、(3)ストレス管理と心理的ケア、(4)セルフケア実践例の4点について解説します。

1. 寒冷・湿度・気圧変動への対応策

寒さへの対策(防寒): 寒冷環境では関節液が粘調になり関節が硬くなるため、冷えから身体を守る工夫をしましょう​。具体的には、衣類の重ね着や保温に努め、手足の関節は手袋やレッグウォーマーで冷やさないようにします​

室内では暖房やヒーターで適温(一般に20℃前後)を保ち、必要に応じて膝掛けやひざサポーターで関節部を温めます。朝起きた直後のこわばりには温シャワーや温浴が効果的です。15~20分の入浴で筋肉がほぐれ、関節の動きが良くなります​。入浴後は身体が冷えないよう速やかに服を着込んで保温しましょう。

湿度管理:高すぎる湿度は関節周囲の組織に水分を含ませ、腫れや痛みを感じやすくする可能性があります​。そのため、梅雨時や湿度の高い日は除湿機やエアコンで室内湿度を適度(目安40~60%)に保つと良いでしょう。逆に乾燥しすぎる冬場は加湿器で適度な湿度を維持し、関節や呼吸器の負担を減らします。一般に暖かく乾燥した気候が関節には最適とされ​、湿度・温度の極端な変化を避ける環境作りが大切です。また、梅雨時期など気圧や湿度の変動が大きい季節は体調管理により注意し、無理な外出を控えるなど計画を調整しましょう。

気圧変動への工夫:気圧の急な低下(天気が崩れる前など)は関節内部の圧力変化や組織の膨張を招き、関節痛が増す一因と考えられています​。気圧変動そのものは防げませんが、対処法として天気予報を活用した準備があります​

気圧低下が予想される日はあらかじめ痛み止めや温熱グッズを用意したり、外出や重労働を避けて休息日に充てる計画を立てましょう。また、雨天や低気圧の日でもできる範囲で体を動かすことも大切です。天候が悪いときに家にこもって動かないでいると筋力低下や関節のこわばりが進み、かえって痛みが増すリスクがあります​。

室内でできるストレッチや関節可動域運動(ゆっくり関節を曲げ伸ばしする運動)を行い、血行を促すことで関節の硬直を防ぎましょう。関節を支える周囲の筋肉を適度に動かすと、気圧変化による不調を和らげる助けになります。

免疫系や炎症反応を整える食事習慣

● 抗炎症作用のある食事: 食生活の改善は関節リウマチの炎症を抑える上で重要な要素です。特にオメガ3脂肪酸を多く含む食品(青魚〔サバ・サケ・イワシ等〕、亜麻仁シード、クルミなど)には抗炎症作用があり、関節リウマチ患者さんのの症状改善に役立つことが研究で示されています。最近のガイドラインでは、これらの要素を含む地中海食が推奨されています。​

週に2回以上の魚摂取でも疾患活動性の低下に関連するとの報告があり​、日々の食事に魚やナッツ類を取り入れることが推奨されます。また、野菜や果物、全粒穀物、大豆製品をバランス良く摂る地中海式の食事は、飽和脂肪や精製糖を控えることで炎症を抑える効果が期待できます。

逆に過度の脂肪分や糖分は慢性炎症を助長するため、ファストフードや過度に加工された食品を減らすことも有効です。さらに、日照不足からビタミンDを豊富に含む食品(魚、キノコ、卵黄、強化乳製品など)も意識して摂りましょう。ビタミンDには免疫調節作用もあり、不足すると骨粗鬆症や季節性のリウマチの悪化が起こりやすくなる可能性があります。

体を温める食事の工夫

体を内側から温める食事は、関節の痛みを和らげる効果があります。

これらの食材を毎日の食事に取り入れることで、体を芯から温め、血行を促進します。

睡眠の質を高める方法

質の良い睡眠は、関節リウマチの痛みの緩和に重要な役割を果たします。

医師 高杉

質の良い睡眠をとることで、痛みの軽減だけでなく、心身の回復も促進されると実感しています

良質な睡眠で体のリズムを整えることは、痛みの予防と管理に効果的です。

簡単な運動とストレッチの習慣化

適度な運動は、関節の柔軟性を保ち、痛みを軽減します。

無理なく続けられる運動を見つけたいわ

始めは短時間から取り組み、徐々に時間を延ばしていくことで、継続的な習慣にすることができます。

服装選びのポイント

気温の変化に対応した適切な服装選びが、体温管理の基本となります。

体を冷やさないことで、関節の痛みを予防できます。

温熱療法の活用: 関節や筋肉の痛み・こわばりに対しては温熱療法も取り入れましょう。痛む関節を温めると血流が改善し、筋肉がリラックスして痛みの感じ方が和らぎます​。前述した入浴や温シャワー以外にも、温湿布・ヒートパックの利用が手軽です。市販の温熱シートや蒸気湿布を痛む関節に貼ったり、使い捨てカイロをタオルに包んで当てるといった方法で局所を温めます。理学療法士による温熱マッサージ機器がなくても、家庭で電子レンジで温めるタイプのホットパック等を利用できます​。注意点は低温火傷を防ぐため、直接肌に当てないことと、熱すぎない適温を守ることです​

温める時間は1回20分程度までにし、肌が赤くなりすぎないよう確認してください。朝の準備中や就寝前に温熱療法を取り入れると、関節が動かしやすくなり日中の活動や睡眠が楽になります。特に手指のこわばりには、「オイル&グローブ法」(手にベビーオイルなどを塗りゴム手袋をはめてから温水に浸ける)も有効で、関節がよくほぐれるとされています​

● セルフマッサージとケアグッズ: マッサージも痛みやこわばりを和らげる手段の一つです。専門のマッサージ師による施術を受けることが難しい場合でも、自分でできる簡単なマッサージがあります。例えば入浴中や入浴後に、痛む関節の周囲の筋肉を指でゆっくり揉みほぐしてみましょう。患部周辺を優しくマッサージすることで血行が促進され、関節の腫れやこわばりの軽減につながります​

特に手や膝など自分で届く部位では、毎日数分間マッサージを行う習慣をつけると痛みの感じ方や不安感が軽減したとの報告もあります。実際、RA患者では定期的なマッサージ療法により関節痛の軽減や可動域の改善、不安の低下がみられたとの研究があります(10)。マッサージにはリラクゼーション効果もあるため、就寝前のルーティンに取り入れるのも良いでしょう。ただし関節が熱を持って腫れている炎症が強い時期(フレア時)には、その関節への直接のマッサージは避けてください​

炎症が治まり痛みが落ち着いている範囲で、周囲の筋肉をほぐすようにしましょう。また市販のセルフケアグッズも活用できます。手指用の小さなマッサージボールで手のひらを刺激したり、足裏をほぐすローラーを使ったりすると、自宅で手軽にマッサージ効果を得られます。さらに痛みの強い関節には負担軽減のためのサポーターや装具を使うことも検討してください。手首や膝用のサポーターは関節を安定させ余分な動きを防ぐので、痛みの軽減に役立ちます。日常生活で関節にかかる負荷を減らす工夫(関節保護)も重要なセルフケアです。。

アロマやマッサージでリラックス

心身の緊張をほぐすことで、痛みの緩和が期待できます。

定期的なケアを習慣にすることで、痛みの予防と緩和につながります。

専門家への相談も選択肢の一つ

関節リウマチの症状管理には、専門医との連携が重要な役割を果たします。

関節の痛みや腫れが続く場合は、早めの受診をお勧めしています。

寒い日が続いて関節が痛くて、病院に行くか迷っています

医師 高杉

季節の変わり目は症状が悪化しやすい時期なので、専門医に相談することをお勧めします

症状が改善しない場合の病院選び

関節リウマチの治療には、専門的な知識と経験を持つ医療機関の選択が重要です。

症状の早期発見と適切な治療開始のために、信頼できる医療機関を見つけることが大切です。

適切な診療科の選び方

関節リウマチの診療は、主にリウマチ科や整形外科で行われます。

症状や状態に応じて、最適な診療科を選択することが治療効果を高めます。

専門医に相談するメリット

専門医による適切な診断と治療は、症状の改善に大きな効果をもたらします。

専門医との良好な関係を築くことで、長期的な症状管理が可能になるはずです。

参考文献

  1. Mori H et al. Influence of seasonal changes on disease activity and distribution of affected joints in rheumatoid arthritis. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20(1):30​pmc.ncbi.nlm.nih.govpmc.ncbi.nlm.nih.gov.
  2. Ando F et al. Seasonal exacerbation of rheumatoid arthritis detected by big claims data analysis: a retrospective population study. Mod Rheumatol. 2023;33(1):46-53​

よくある質問(FAQ)

春と冬の痛みには、どんな準備をすればいいですか?

季節の変わり目の2週間前から、温かい食事を心がけ、保温グッズを用意することで痛みを和らげることができます。部屋の温度管理を徹底し、着脱しやすい重ね着を取り入れると効果的です。

気圧の変化による痛みを軽減する方法はありますか?

室内に加湿器や除湿器を設置し、一定の湿度を保つことで痛みを軽減できます。気象予報で気圧の変化を確認し、前日から温かい入浴やストレッチを行うと良い対策になります。

寒暖差の大きい日は何に気をつければいいですか?

体温調節しやすい服装を選び、首や手首、足首を特に温かく保つことが大切です。急激な温度変化を避けるため、外出時は必ず上着を持参し、こまめな着脱を心がけます。

自律神経の乱れによる痛みには、どんな対策が効果的ですか?

規則正しい生活リズムを保ち、質の良い睡眠をとることが基本です。リラックスできる香りのアロマや、軽いストレッチで自律神経のバランスを整えられます。

日照不足による体調不良を防ぐには?

天気の良い日は積極的に日光浴を行い、ビタミンDを効率的に摂取します。魚類や乳製品を意識的に食事に取り入れ、必要に応じてサプリメントの活用も検討します。

痛みが強くなった時の緊急対処法はありますか?

患部を温めるホットパックの使用や、温かい飲み物で体を内側から温めます。無理な動きは避け、十分な休息をとりながら、痛みの程度に応じて医療機関への相談を検討します。

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