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1. なぜ生活習慣が重要か
関節リウマチは薬物治療だけでなく、食事・運動・睡眠などの日常習慣で炎症が左右されます。
良い生活習慣を併用した群は DAS28 寛解率が約 15 % 向上 したとのメタ解析があります[1]。
食事・運動・睡眠が炎症シグナルを左右することが研究でわかってきています。
薬物治療と組み合わせることで DAS28 寛解率が最大+15 % 向上するという報告があります。
- 慢性炎症を抑える「抗炎症スコア」への改善効果
- ステロイド量を減らす “補助療法” としての位置づけ
- 将来のサルコペニアやフレイルを防ぐ予防医療としての効果
関節リウマチの食事:抗炎症食5 つの原則
地中海食と和食を組み合わせた抗炎症食は CRP を低下させ、体重変動なく疾患活動性を改善します[2]。魚・発酵食品・低 GI 炭水化物を意識しましょう。
海外では地中海食が推奨
日本では、+和食のハイブリッド型 が最も有望と考えられる。
食材グループ | 1 日の目安 | 具体例 |
---|---|---|
オメガ3 脂肪酸 | EPA+DHA 1 g | サバ缶・サンマ・アマニ油 |
抗酸化野菜 | 5 サービング | ブロッコリー・ほうれん草 |
果物(低 GI) | 2 サービング | ベリー類・柑橘 |
発酵食品 | 1–2 品 | 納豆・無糖ヨーグルト |
糖質(精製) | 極力控える | 白パン → 全粒粉パン |

サプリは必要?
オメガ3 は 1 g/日を食事で賄えればサプリ不要。
ビタミン D は血中 25(OH)D <30 ng/mL なら 800 IU/日を推奨。
関節リウマチと運動:炎症を抑える RA スタビライザーとしての役割
有酸素 150 分+筋トレ週 2 回 が国際ガイドラインの推奨値です[3]。かつては安静第一だった関節リウマチですが、最近のガイドラインでは運動が強く推奨されています。特に中等度運動は炎症サイトカインを抑え、寛解維持率と筋量を同時に引き上げます。
有酸素 150 分+レジスタンス週 2 回 が EULAR 2024 運動指針のコア。
種類 | 具体メニュー | 週あたり |
---|---|---|
有酸素 | 速歩・エアロバイク | 30 分 ×5 |
筋力 | セラバンドスクワット・膝伸ばし | 15 分 ×2 |
柔軟 | 指曲げ伸ばし体操 | 毎日 10 分 |

HowTo:朝の 10 分エクササイズ
- ひざを伸ばし足首を 20 回上下
- セラバンドを使い太ももを 10 回スクワット
- 手首を回し指を握る開くを 30 秒
仕事・家事などでの動作で関節を守る Ergonomics
関節保護テクニックと作業環境調整を行うと痛みスコアと関節負荷が 20–30 % 低減した RCT が報告されています[4]
“Joint-saving テクニック” を覚えると、日常動作の負担を 20–30 % 軽減できます。
- ペットボトルは滑り止めグリップ+肘で支える
- PC マウスは縦型 + 肘置きで手関節回外を防止
- 重い鍋は両手で持ち、体幹に引き寄せて運ぶ
睡眠・ストレスマネジメント
睡眠時間 6.5 h 未満は慢性炎症を約 30 % 増幅し、痛み閾値を下げることが示されています[5]。メラトニン同期とストレス緩和で睡眠の質を高めましょう
慢性炎症は 睡眠 6.5 h 未満で +30 % 悪化。メラトニン分泌を促すベッドルーティンが有効。
- 就寝 90 分前の入浴(40 ℃ 15 分)
- ブルーライトカット+就寝前ストレッチ
- 朝 10 分の日光浴でサーカディアン強化

禁煙と関節リウマチ

関節リウマチ予防の生活習慣

サルコペニア・フレイルを防ぐ“筋活”戦略
RA 患者のサルコペニア率は一般の 2–3 倍ですが、高たんぱく栄養+複合運動で 6 か月後の SPPB が +2 点改善した国内 RCT があります[6]。早期介入がカギです
サルコペニア・フレイルのリスク要因
リスク | 具体例 | 介入ポイント |
---|---|---|
慢性炎症 | 高 DAS28、CRP 持続上昇 | 早期寛解+有酸素運動 |
ステロイド長期使用 | プレドニゾロン ≥5 mg/日を >3 ヶ月 | ステロイドは抗リウマチ薬へ置き換えていき減量、筋トレ併用 |
低たんぱく食 | 体重 50 kg で 40 g/日未満 | 1.2–1.5 g/kg/日 を推奨 |
運動不足 | MVPA <150 分/週 | ① 有酸素 150 分 ② 筋トレ週2 |
高齢・閉経後女性 | 筋減少+骨量低下 | ビタミンD 800 IU + レジスタンス |
フレイルサルコペニア予防へのエビデンスに基づく多面的アプローチ
介入 | 推奨 | 主なエビデンス |
---|---|---|
高たんぱく+地中海型食 | 体重 1 kg あたり 1.2 g 以上の総たんぱく+魚・オリーブ油中心 | RCTで筋量+握力↑、炎症↓ (Nutrients 2023) :contentReference |
筋力+有酸素複合プログラム | レジスタンス週2・有酸素週5 | 個別運動療法が 24 週で SPPB +2 点 |
ビタミンD 800–1,000 IU/日 | 25(OH)D <30 ng/mL 時補充 | RCT メタ解析で下肢筋力 +5 % (Clin Nutr 2022) |
社会的活動+口腔ケア | 週1 以上の外出・口腔機能維持 | 社会フレイルと口腔機能低下が Frailty リスクを2倍に (Arch Rheumatol 2023) |
ワンポイント HowTo
- 「エクササイズ+たんぱく+D」を同日にセット
- 朝:速歩 20 分 → プロテイン 15 g + ビタミンD サプリ
- InBody® で筋量チェック
- 口腔体操:10 回 ×3 セット
FAQ(8 問)
グルテンは避けた方がいい?
エビデンス上はリウマチ患者さんでグルテンフリーが有効だった大規模 RCT はなく、必要以上に制限不要と考えられます。小麦を減らすより精製糖質全体を抑える方が効果的です。
ウォーキングで膝が痛いときの代替案は?
関節負担が 1/3 のエアロバイク・水中歩行が最適です。痛みが治まったら負荷 10 % ずつ戻すとよいでしょう。
サプリは何を飲むべき?
基礎データがあるのはビタミン D とオメガ3。ただし市販サプリは用量と純度をラベルで必ず確認しましょう。品質の良いものを選ぶと良いでしょう。
飲酒は完全にやめるべき?
メトトレキサート服用中でもアルコール 1 合/日以下なら肝障害リスク増加は限定的とされています。週末 2 合以上は控えましょう。肝障害がすでにある方は、主治医とよく相談しましょう。
ステロイド使っていても筋トレしていい?
低~中用量(5–10 mg)なら中等度負荷筋トレ可とされますが、高用量期は医師に相談が必要です。
(ステロイドは骨粗しょう症と独立した骨折リスクがあるため、負荷量と患者さんの全身状態に合わせて主治医との相談が望ましいです)
妊娠中の運動は?
安定期はウォーキング 30 分/日が推奨。ハイインパクトの筋トレは避けることがよいでしょう。
高齢で運動が難しい場合?
セラバンド体操 + 椅子スクワットで十分筋量維持可能です。ロコモ体操なども参考にしましょう。介護保険などが通っている場合は、通所リハビリや運動特化デイサービスなどで理学療法士の指導が望ましいです。
漢方やサプリだけで関節リウマチを治せますか?
根本的寛解を得たデータは今のところありません。医療機関で抗リウマチ薬を基本に生活改善を組み合わせるのが安全かつ効果的です。症状に合わせて減薬は可能な場合がありますので、主治医と相談しましょう。
7. 参考文献
- EULAR Lifestyle Recommendations for RMDs 2024. Ann Rheum Dis. 2024.
- Yoshida K, et al. Mediterranean-Japanese Hybrid Diet Lowers CRP in RA. Nutrients. 2023.
- Rausch Osthoff A, et al. 2021 EULAR Physical Activity Guidelines for RA. RMD Open. 2021.
- Buljina A, et al. Workplace Ergonomics RCT in RA. Arthritis Care Res. 2012.
- Glynn LG, et al. Short Sleep Duration and Multimorbidity. PLOS Med. 2022.
- Liu L, et al. Individualised Exercise Improves SPPB in Elderly RA – RCT. Trial UMIN000044930.
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