関節リウマチ治療中は、定期的な血液検査が重要です。しかし、結果をどのように見たらよいか気になりますよね。
このページでは、肝臓に関わる数値のみかたや、関節リウマチの治療薬が肝臓に与える影響について、この記事では詳しく解説します。なぜ関節リウマチ治療中は定期的な血液検査が必要かも合わせて解説していきます。
肝臓の基本的な働きから、ASTやALTといった数値の意味、そしてメトトレキサートなどの抗リウマチ薬がどのように肝臓に作用するのかを理解することで、より安心して治療に取り組むことができるでしょう。

見ても説明してもらってもよくわからないから、一度しっかり教えて欲しい
この記事でわかること
- 肝臓の基本的な機能
- AST、ALTの基準値
- メトトレキサートの特徴と副作用
- 肝機能を守るための生活改善
関節リウマチ薬と肝臓への影響、肝機能酵素の見方
肝臓の基本的な働き
肝臓は体内で最も重要な解毒器官です。
主な機能 | 詳細 |
---|---|
薬物代謝 | 化学物質や薬の解毒と排出 |
タンパク合成 | アルブミンなどの重要なタンパク質の生成 |
胆汁生成 | 脂肪の消化と吸収を助ける胆汁の分泌 |
栄養素の貯蔵 | 栄養の保存と放出 |

いろいろな働きがあるんですね。
ASTとALTの役割と基準値
ASTとALTは肝細胞の健康状態を示す重要な指標です。
検査項目 | 基準値 | 意味 |
---|---|---|
AST (GOT) | 10-40 IU/L | 肝細胞の障害度を示す |
ALT (GPT) | 5-45 IU/L | 肝細胞の障害度を示す |

定期的な血液検査で数値をモニタリングすることが大切です
メトトレキサートの作用機序と特徴
メトトレキサートは関節リウマチの標準治療薬として広く使用されています。
作用 | 内容 |
---|---|
抗炎症効果 | 炎症を抑制し関節破壊を防ぐ |
免疫調節作用 | 過剰な免疫反応を抑える |
代謝への影響 | 葉酸代謝を阻害する |
抗リウマチ薬の種類と使用目的
各抗リウマチ薬には特徴的な作用と使用目的があります。
薬剤種類 | 特徴 | 主な使用目的 |
---|---|---|
メトトレキサート | 第一選択薬 | 炎症抑制と関節破壊防止 |
サラゾスルファピリジン | 従来型抗リウマチ薬 | 軽症例での使用 |
イグラチモド | 従来型抗リウマチ薬 | 軽症例での使用 |
ブシラミン | 従来型抗リウマチ薬 | 軽症例での使用 |
タクロリムス | カルシニューリン阻害薬 | メトトレキサート使用困難な際や間質性肺炎、妊娠などの場面で使用 |

どの薬が自分に合っているか知りたいです
治療効果を最大限に引き出すには、薬剤の特徴を理解し、定期的な検査で経過を見守ることが重要です。
リウマチQ&Aリウマチ治療の流れを説明します こちらなど参考にしてください
定期的な肝機能検査の重要性
メトトレキサートなどの抗リウマチ薬による肝機能への影響を早期に発見し、適切に対応することが大切です。
定期的な検査は、治療を安全に継続するために必須の取り組みだと考えています。
必要な血液検査項目
肝機能をチェックするために、以下の項目を定期的に検査する必要があります。
検査項目 | 内容 | 基準値 |
---|---|---|
AST(GOT) | 肝細胞の障害を反映 | 30 IU/L未満 |
ALT(GPT) | 肝細胞の障害を反映 | 30 IU/L未満 |
γ-GTP | 胆道系の障害を反映 | 50 IU/L未満 |
ALP | 胆道系の障害を反映 | 350 IU/L未満 |

検査値が基準値を超えているのが気になります
これらの数値は、肝臓の状態を評価する重要な指標となります。数値が少し上がっていても症状はないことが多く、悪くしている原因を検討し調整する必要があります。
検査の頻度と判断基準
メトトレキサートの服用開始後は、以下の頻度で検査を実施します。
期間 | 検査頻度 | 判断基準 |
---|---|---|
開始2ヶ月間 | 2週間~4週に1回 | 基準値の2倍以上で減量 |
3ヶ月目以降 | 4週間に1回 | 基準値の3倍以上で休薬 |
1年以降 | 4~8週に1回 | 基準値内で継続 |

定期的な検査で、早期に対応できることは心強いですね
肝機能異常のサイン
普段の生活で以下のような症状がある場合は、肝機能異常のサインかもしれません。
症状 | 説明 | 重症度 |
---|---|---|
疲労感 | 普段より強い疲れ | 軽度 |
食欲不振 | 食べたくない | 中等度 |
嘔気 | 吐き気がする | 中等度 |
皮膚の黄染 | 皮膚が黄色い | 重度 |
全てが肝臓の数値の影響である可能性は低いですが、これらの症状があるときは担当医と相談することが重要です。
緊急受診が必要な症状
以下の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
症状 | 説明 | 対応 |
---|---|---|
強い腹痛 | 右上腹部の痛み | 即日受診 |
高熱 | 38.5度以上 | 即日受診 |
皮膚の黄染 | 目の白目が黄色い | 即日受診 |
意識障害 | ぼんやりする | 救急受診 |
早期発見・早期対応が重要ですので、気になる症状がある場合は担当医に相談することをお勧めします。
肝機能をまもるための生活改善
関節リウマチの治療中は、肝機能を守るための生活改善も重要です。

薬をこわがるだけではなく、生活習慣の改善も大切なのね
食生活の見直し方
肝臓に優しい食生活を心がけることで、肝機能の改善が期待できます。
項目 | 内容 |
---|---|
推奨する食事 | 野菜・果物・魚介類・大豆製品 |
控えめにする食事 | 脂質・塩分・加工食品・糖質 |
食事のタイミング | 規則正しい3食 |
間食 | 控えめに |
食事は一度に多く摂取せず、少量ずつバランスよく摂ることを心がけると良いと考えています。
アルコールとの付き合い方
アルコールは肝機能に大きな影響を与えるため、適切な飲酒量を守ることが重要です。
飲酒の目安 | 内容 |
---|---|
純アルコール量 | 20g以下/日 |
ビール | 500ml以下 |
日本酒 | 1合以下 |
ワイン | グラス2杯以下 |
「お酒との付き合い方を考えることで、肝臓の回復を助けることができます」と私は患者さんに伝えています。
体重管理と運動のポイント
適度な運動は、肝機能の改善に効果があると言われています。
運動の種類 | 目安 |
---|---|
ウォーキング | 30分/日 |
軽いジョギング | 20分/日 |
ストレッチ | 朝晩10分 |
水中運動 | 週2-3回 |
運動は無理せず、体調に合わせて徐々に増やしていくことが大切です。
睡眠と休養の取り方
睡眠不足は摂取カロリーを増やす、という報告もあり、質の良い睡眠をとることは、肝障害の回復にも重要な役割を果たします。
項目 | ポイント |
---|---|
睡眠時間 | 7-8時間 |
就寝時間 | 23時前 |
昼寝 | 30分以内 |
ストレス解消 | 趣味や運動 |
抗リウマチ薬による肝障害への対策
抗リウマチ薬による肝障害を予防し、早期発見・対処するための具体的な方法をご説明します。

メトトレキサートの副作用が心配で不安です
薬の飲み方と注意点
メトトレキサートは服用時間や方法を正しく守ることで、肝臓への負担を軽減できます。
服用のポイント | 内容 |
---|---|
時間 | 食後30分以内に服用 |
間隔 | 週1回の一定間隔 |
分割→1回へ | 肝障害は、分割内服で若干増え、1回内服で減るとされます。 |
飲酒 | 飲酒は避ける |
葉酸 | メトトレキサートの肝障害は、葉酸で予防できることが多いです。 |

メトトレキサートの場合、量や内服方法や葉酸の調整で改善することも多いです
葉酸の活用法
メトトレキサートによる副作用を軽減するため、葉酸の活用が重要です。
ポイント | 内容 |
---|---|
服用タイミング | メトトレキサート服用から48時間後 |
用量 | 主治医の指示に従う |
効果 | 肝機能異常のリスク低下 |
副作用の早期発見と対処
定期的な検査と症状の観察が重要です。
安全な治療継続のために
関節リウマチの治療を安全に継続するためには、主治医との定期的なコミュニケーションと、症状の自己管理が重要です。
定期的な通院の大切さ
定期的な通院は、治療効果の評価と副作用の早期発見に欠かせません。
メリット | 内容 |
---|---|
病状の確認 | 関節症状や血液検査値の推移を評価 |
薬剤の調整 | 症状に応じた投薬量の見直し |
副作用の確認 | 早期発見による重症化予防 |
質問の機会 | 不安な点を相談できる |

定期受診で体調の変化を教えていただくと、わたしたちとしても安心です
よくある質問(FAQ)
- 検査値が高くなるのはどんなとき?
-
飲酒、高脂肪食、運動不足などの生活習慣が原因で、AST・ALTの数値が上昇することがあります。定期的なチェックと生活習慣の改善が大切です。
- メトトレキサートの服用を忘れた場合はどうすればよい?
-
気づいたらすぐに服用するのではなく、主治医に連絡して指示を仰ぐことが重要です。当院であれば、LINEで相談してください。次回の服用時期が近い場合は、その回を飛ばして通常のスケジュールに戻ることもあります。
- 肝機能を改善する食事はありますか?
-
野菜、魚介類、大豆製品などの摂取が推奨されます。特に緑黄色野菜には肝機能を助ける栄養素が豊富に含まれています。また、過度の脂質や糖質は控えめにすることが大切です。
- 肝機能の検査値が高くなった場合の対処法は?
-
検査値の上昇程度によって、薬の減量や一時的な休薬が必要になることがあります。自己判断せず、必ず主治医に相談して適切な対応を取ることが重要です。
- 運動は肝機能に影響しますか?
-
適度な運動は肝機能の改善に効果があります。ただし、過度な運動は逆効果になる可能性があるため、自分の体力に合わせた運動を選択することが大切です。
- 葉酸サプリメントはいつ飲むべき?
-
メトトレキサート服用から24~48時間後に葉酸を服用することが推奨されます。具体的な用量や服用タイミングは、主治医の指示に従うことが重要です。
参考文献
沢井製薬株式会社. メトトレキサート製剤に関する製品情報 (2022). [オンライン]. 利用可能: https://med.sawai.co.jp/file/pr22_4753.pdf. (参照日: 2025年1月19日).
日本リウマチ財団. 抗リウマチ薬 (DMARDs) の治療指針. [オンライン]. 利用可能: https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rheuma/dtherapy/dmard/. (参照日: 2025年1月19日).
医薬品インタビューフォーム. ピンズによる新薬の情報提供資料 (PINS). [オンライン]. 利用可能: https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070561.pdf. (参照日: 2025年1月19日).
日本臨床リウマチ学会. メトトレキサート使用に関する臨床報告. 日本臨床リウマチ学会誌, 第35巻, 第4号, pp. 465-470. [オンライン]. 利用可能: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsjd/35/4/35_465/_pdf. (参照日: 2025年1月19日).