クローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)は、炎症性腸疾患(IBD)という疾患群と考えられています。
(ローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、腸だけの病気ではなく、多くの患者さんで消化管に限定されない全身性の症状が出ます。腸管外症状(腸管の外にある病変)と呼ばれています。
腸管外症状は、腸管外症状(EIM)と腸管外合併症の2つのグループに分けることができます。
腸管外症状は、関節に影響を及ぼすことが最も多いと言われています。(末梢および軸索関節症)
関節以外の部位では、皮膚(結節性紅斑、壊疽性膿皮症、Sweet症候群、アフタ性口内炎)、肝胆道(原発性硬化性胆管炎[PSC])、眼(上強膜炎、ぶどう膜炎)などが多いです。
腸管外合併症は、腸からの影響を受ける全身状態の変化で、例えば吸収不良による微量栄養素の欠乏などが含まれます。その他、骨粗鬆症、末梢神経障害、腎臓結石、胆石、IBD治療薬に関連する副作用などです。
腸の状態と関連して強くなる症状と、腸の状態と関係なく出現する症状
結節性紅斑、上強膜炎などは、通常、腸の疾患活動性の上昇に伴って発生します。つまり腸の調子が悪いほど出やすいと言われています。
強直性脊椎炎やぶどう膜炎などの他の腸管外症状は、通常、独立した経過をたどります。PSC や壊疽性膿皮症などの EIM は、IBD の疾患活動性と関連する場合としない場合があります
炎症性腸疾患における腸管外病変の発生頻度は、6%から47%の頻度で報告されています。
複数の腸管外病変が併発することがあり、1つの腸管外病変が存在すると、その頻度が高くなります。
少関節炎型と他関節炎型
炎症性腸疾患にかかわる関節症状は、少関節炎型が有名ですが、他関節炎型もあります。
末梢性関節痛/関節炎について
炎症性腸疾患患者における末梢性関節痛/関節炎は、関節リウマチによる関節炎などとは対照的に、関節破壊はおこりにくいとされています。
大腸に病変のある方や肛門周囲炎のある方、結節性紅斑、口内炎、ぶどう膜炎、壊疽性膿皮症を患っている方で、末梢性関節痛・関節炎のリスクが高いとされています。
タイプI(非関節型)関節炎は、通常、5関節以下の大関節を侵し、足首、膝、股関節、手首、肘、肩などの大関節5カ所未満に発症し、Ⅰ型(pauciarticular)関節炎と呼ばれます。
多くの場合、急性で非対称的、かつ移動性である。およそ20~40%の患者さんが1回以上関節痛や関節炎を発症しています。関節痛/関節炎は、通常、IBD の活動性に関連しています。
したがって、腸の炎症(大腸炎)の内科的または外科的治療は、通常、I 型関節炎の改善と関連します。
II型(多関節痛/関節炎)は、5つ以上の小関節を含む対称性の関節炎であることが多く、腸の疾患活動性とは関係なく、IBDの診断に先行することがあります。II型関節症は
中手指節関節が最もよく侵される。とされています。ぶどう膜炎のリスクが増加すると言われています。
1型末梢性関節症は HLA-B27、HLA-B35、HLADR103 と関連し、type 2 は HLA-B44 と関連するとされています。
II型末梢性関節症は、通常、腸の活動とは無関係に発症し、抗炎症治療が奏功しないこともあるとされます。
治療方針は、炎症性腸疾患の治療と関節炎の治療が重なる部分、腸を悪くする部分があるため、腸にも関節にも良い治療を行い、疾患活動性を下げる方向にしています。
例:IBD に関連した末梢性関節症の管理における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で腸が調子が悪くなる場合があるのでそれを避けるなど