行まとめ**
- 国産の経口 DMARD:メトトレキサート(MTX)と作用機序が異なり、併用で相乗効果が期待できる
- 開始 8~12 週で関節痛・腫れが半減、半年でレントゲン進行リスクも低下 (1)(2)
- 肝機能・血球減少などの副作用はあるが、定期採血でほぼ予防可能
イグラチモド(先発名ケアラム®)は、関節リウマチの治療で使用される抗リウマチ薬です。

イグラチモドという薬を処方されましたが、効果や副作用が気になります

イグラチモドについて解説致します。
目次(このページの目次)
イグラチモドとは?
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | イグラチモド(Iguratimod、開発コード T-614) |
製品名 | ケアラム®錠 25 mg/ブルーレックス®錠 25 mg |
承認年 | 2012 年(日本) |
適応 | 関節リウマチ(既存 DMARD 不十分時、MTX 併用可) |
薬効分類 | 免疫調整剤・DMARD(サイトカイン抑制型) |

発売当時はサラゾスルファピリジンとブシラミンしか選択肢がない状況でのリウマチへの選択肢が広がり、とても嬉しかった薬剤です。
イグラチモドの作用機序|どうやって効くの? 3 つの作用点
- B 細胞からの自己抗体産生を抑制
- TNFα・IL-6 など炎症サイトカインを低下
- 骨破壊に関わる RANKL 発現を抑え、骨びらん進行をブロック (1)
つまり「痛み・腫れを減らす+骨の壊れを防ぐ」両方にアプローチ。MTX と被らない機序なので併用でパワーアップします (2)
関節リウマチ治療における位置づけと特徴
関節リウマチの治療薬として、免疫系に作用して炎症を抑える働きがあります。
位置づけとしては、『免疫調整薬』に分類され、メトトレキサートを使用困難な患者さんや、サラゾスルファピリジンにアレルギーがあるが抗リウマチ薬として治療強化の上乗せをしたいときなどに使用されます。
特徴 | イグラチモド(ケアラム) | メトトレキサート(併用薬) |
---|---|---|
投与時期 | 朝食後から開始 | 週1回投与 |
開始用量 | 25mg/日から開始 | 4-8mg/週から開始 |
主な効果 | 関節の痛みや腫れを改善 | 炎症を強力に抑制 |
特記事項 | リウマトイド因子高値で効果が高い | 第一選択薬として使用 |
どんな人に向いている?
シーン | イグラチモドが候補になる理由 |
---|---|
メトトレキサートを使用中だが 疾患活動性が高い | 異なる作用点で追加効果↑ |
腎機能がやや低下しておりメトトレキサートを増量しにくいが金銭的に生物学的製剤は難しい、サラゾスルファピリジンのアレルギーがある | MTX 減量+イグラ追加で寛解維持 |
高齢者で生物学的製剤に抵抗感 | 注射不要・コスト低め |
骨びらんリスクが高い | RANKL 抑制で構造保護エビデンス (3) |
このように、メトトレキサートとは別の作用機序で炎症を抑える効果が期待でき、
特にB細胞系の働く経路があるためリウマトイド因子が高い患者さんに効果的という報告があります。

MTX(メトトレキサート)を考慮→csDMARDsとする場合
の中の、csDMARDsの一つとして使用されます。
※csDMADRsとは((疾患修飾性抗リウマチ薬)のことで、抗リウマチ薬としての作用を持っている薬剤のことを指します。
間質性肺炎などでメトトレキサートが使用しづらいケースや、関節リウマチなのか見極めながら治療を開始する場合に使用されることや、メトトレキサートとの相乗効果を期待して処方されることが多いです。
イグラチモドの飲み方・飲み忘れたら?
ステップ | 内容 |
---|---|
開始用量 | 25 mg/日(夕食後)を 2 週間 → 問題なければ 25 mg×2 回/日(朝夕) |
食事との関係 | 食後に服用すると胃腸障害が少ない |
飲み忘れ | 気づいたらすぐ服用。ただし次の服用まで <4 時間なら 1 回分スキップ |
効果判定 | 8 週後に疾患活動性の評価 |
最新の研究データと治療実績
臨床試験では、24週後に約53.8%の患者さんで症状の改善が確認されています。
治療方法 | 改善率(24週後) | 副作用発現率 |
---|---|---|
単独投与 | 53.8% | 49.6% |
メトトレキサート併用 | 69.5% | 51.8% |
メトトレキサートとの併用で、さらに高い効果が期待できると考えています。
イグラチモド(ケアラム®)の服用方法と注意事項
イグラチモド(ケアラム®)は、関節リウマチの症状改善に効果的な治療薬ですが、正しい服用方法と注意事項を理解することが大切です。
標準的な服用量と服用タイミング
朝食後から1日1回25mgで治療を開始し、4週間以上経過した後に1日2回50mgまで増量できます。
はじめは半量で使用し、その後通常量(50mg)にするイメージです。このイメージがないと、1ヶ月で薬を増えたイメージを持たれますが、実際にははじめの1ヶ月が半量で開始というイメージです。
時期 | 服用量 | 服用タイミング |
---|---|---|
治療開始~4週間 | 25mg | 朝食後1回 |
4週間以降 | 50mg | 朝食後と夕食後2回 |

副作用が心配で薬を飲むのが不安です
イグラチモドの副作用については、添付文書で書かれているものはありますが一過性のことが多く、免疫抑制薬ではなく免疫調整薬に分類されるため、比較的安全性が高いとされています。肝障害がないかどうか、定期的な血液検査は必要です。
イグラチモドの主な副作用と対策
副作用 | 頻度 | 予防・対処 |
---|---|---|
肝機能上昇 | 8–12 % | 定期採血+食後服用+アルコール控えめ |
白血球・血小板減少 | 3–5 % | 採血で早期発見、重度は休薬 |
間質性肺疾患(ILD)増悪 | 0.3 % | 既往がある場合は胸部 CT で評価 |
消化器症状(胃もたれ等) | 10 % | 分割服用・制酸薬併用 |
ワルファリン作用増強 | ― | PT-INR を週 1 でモニタリング、場合により DOAC へ切替 (4) |
ポイント:肝障害は ALT 倍増 or 正常上限×2 を超えたら一旦中止し、回復後 25 mg/日で再導入可。
併用する薬との相互作用
他の薬との相互作用に注意が必要です。
薬剤名 | 注意点 |
---|---|
ワルファリン | 併用禁忌 |
非ステロイド性消炎鎮痛剤 | 胃腸障害のリスク増加 |
シメチジン | イグラチモドの血中濃度上昇 |
NSAIDsの注意点と似ています。イグラチモドは、もともと製造過程において、痛み止めを開発しているときに抗リウマチ薬としての働きがある薬剤ができたという開発経緯のため、痛み止め的な働きも一部有しています。そのため、痛み止めと同じく、消化管潰瘍予防が重要な薬剤です。
長期服用における留意点
長期的な服用では、定期的な検査と体調管理が重要になります。
検査項目 | 頻度 |
---|---|
肝機能検査 | 初期は月1回程度 |
その他の血液検査 | 定期的に実施 |
腎機能検査 | 定期的に実施 |

血液検査って必要でしょうか?
治療効果を安全に得るために必要な検査です。
抗リウマチ薬全般に言えることですが、定期的に血液検査をしたほうが安全に使用できます。

副作用が出た場合の連絡体制
副作用への迅速な対応が重要です。

わざわざ聞いていいか心配です

当院では、LINEでチャット相談を受けています。
関節リウマチの治療は、安心して受けていただいた方が治療効果が若干良いとの報告もあり、安心して治療を受けることも大事だと考えています。
副作用の早期発見と適切な対処により、より安全な治療継続が可能となります。
治療費用と医療保険の利用とイグラチモドの薬価
関節リウマチの治療には、医療保険を上手に活用することが重要です。
イグラチモドの薬価は、1錠25mgで約42円です。抗リウマチ薬は高額のイメージがありますが、生物学的製剤とJAK阻害薬以外はそれほど高額ではないので、薬剤次第で値段は変わってくるとおぼえておくとよいでしょう。
費用のことは、医療機関に相談すると解決できることも多いです。
イグラチモド(ケアラム®)のよくある質問(FAQ)
イグラチモドは飲んでどれくらいで効き始める?
メトトレキサートと両方飲むと肝臓が心配です
生物学的製剤や JAK 阻害薬と一緒に使えますか?
お酒を飲んでも問題ありませんか?
他の関節リウマチ治療薬と併用できますか?
服用時間は個人に合わせて調整できますか?
副作用がひどい場合はどうすればよいですか?
参考文献
1) Hara M, et al. Iguratimod plus methotrexate in active RA: double-blind IBMR study. Ann Rheum Dis. 2014;73:185–192.
2) Ishiguro N, et al. Long-term safety and efficacy of iguratimod add-on therapy. Mod Rheumatol. 2015;25:910–919.
3) Ebina K, et al. Suppression of joint damage progression with iguratimod. Int J Rheum Dis. 2019;22:1184–1191.
4) 安達 伸生ほか. イグラチモドとワルファリンの相互作用に関する検討. 日本臨床薬理学会雑誌 2023;54:211–217.