関節リウマチ患者さんの妊娠と出産と授乳

関節リウマチは女性に多い疾患です。
また、発症する年齢は下図のように20代、30代、40代でも発症するため、妊娠出産の時期に重なってくることもあります。

そのため、関節リウマチの治療方針を考えるときには、「将来の妊娠出産を見据えた治療方法」を患者さんと相談します。

本日紹介するのは、関節リウマチと出産についての総論的な話になるため、詳細は主治医と相談してください。

当院では初診30分、再診15分~30分ほどかけて治療方針について相談するため、患者さんの状況に応じた治療方針を提案し、相談しています。

目次

関節リウマチがあっても妊娠出産できますか?

関節リウマチがあっても、妊娠出産は可能です。

昔は、妊娠中に薬を使うことに対しての知見が十分広がっていませんでしたが、現在は上記の書籍のように、妊娠中や授乳中の薬について、わかり易く解説されている本も出ています。当院の診察室でも閲覧できます。

上記は、アメリカリウマチ学会のガイドラインです(2020)。

※Reproductive healthというのが、妊娠出産関連のことを表しています。

妊娠出産中に使用しやすい薬剤として、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンなど)、タクロリムス(プログラフなど)は有益性投与(利益のほうが大きければ使用を検討できる)となっています。

メトトレキサートは、妊娠受胎の1ヶ月~3ヶ月前に中止することが推奨されています。

rate of pregnancy loss
Methotrexate in pregnancy: 42.5% とされています。

治療の流れとしては、リウマチの病勢にもよりますが

1.寛解を目指し治療し、寛解したら妊娠中に使用しやすい薬剤中心に切り替える

2.はじめから妊娠中に使用しやすい薬剤中心に治療を組み立てる

の2つの方法を取ります。

その中でも、鍵になってくるのは、TNFα阻害薬(生物学的製剤)です。

どのTNF阻害剤がよいか

TNFα阻害薬は、大きく3つに分類されます。

Yの字をしたものが抗体になりますが、レミケード、ヒュミラ、シンポニーなどの製剤はYと同じ形をしています。

エンブレルやシムジアはYの下の部分がなく、Vや/の形をしています。この形状がYの字をしていると、胎盤を介して赤ちゃんに移行すると考えられています。

上図は妊娠週数と、IgG抗体の胎盤移行を表した図になります。

母親の血中濃度が青色
子供の血中濃度が赤色の図で、エタネルセプト(エンブレル)やセルトリズマブ(シムジア)の胎盤移行が少ないというデータがあり、抗体の形態からも理にかなっています。

そのため、海外のガイドラインでは、セルトリズマブ(シムジア)の投与期間については、別のカテゴリーとして推奨されています(日本ではその限りではありません)。

男性側が関節リウマチの場合の治療薬選択

準備をして治療を開始していくのと、準備をせずに治療をしていくのでは治療戦略が異なります。

もし妊娠出産を見据えた関節リウマチの治療を気軽に相談したい、という場合は、ご予約の際にその旨を教えていただければじっくり説明致します。

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