今回は、大阪公立大学医学研究科 膠原病内科 講師 渡部龍先生を愛知にお招きして
関節リウマチセミナーを実施しました。
25人ほどの先生に聴講いただき、盛況な会になりました。トヨタ記念病院感染症科部長兼総合内科リウマチ科田中先生、大同病院リウマチ科部長の土師先生とも1年ぶりの講演会となり、ありがとうございました。
私のほうは、生物学的製剤についてのお話のなかで、特に関節リウマチに伴うアンメットニーズとIL-6製剤の可能性について講演させていただきました。IL-6阻害薬の持つ、疼痛の改善具合・疲労感の改善効果などの話題を取り上げました。
上記は、生物学的製剤でどんな病態に対して向いているか、という考え方の一つの表ですが、自分はこの表に近い使い方をしています。それぞれの方の抱える持病や状態に合わせて選択しています。
また、大阪の先生が見えていたので、大阪と比較した場合、愛知県のほうが社会保障制度が充実している部分もたくさんあり、そういった話も紹介しました。
渡部龍先生のお話もとても面白かったです。
特に基礎研究に関わる部分は、リウマチ治療の将来を大きく変える可能性があり、いつもワクワクさせられます。
その中で面白かった話題を記載します。
- プレクリニカルRAの防止と治療戦略
プレクリニカルRAからRAへの進展防止は現在、世界中でターゲットとされている。将来抗体陽性→関節リウマチ進展を防止する方法が確立すれば、こんないいことはないかなと思っています(研究段階) - RNAシーケンスの重要性
シングルセルRNAシーケンスは解析の最低条件となってきている。 - 関節リウマチの6つのCTAP(シータップ)とその重要性
CTAPは6つのタイプに分類され、リウマチ治療の治療反応性が異なるため、治療効果の予測に重要な役割を将来持ちうる。技術の進歩と臨床への活用に期待してしまうないようでした。 - D2TRA(Difficult to treat RA:治療が困難なRA)の治療戦略
D2TRAの患者にはJAK阻害薬がある程度良いとされていたが、IL-6阻害薬も有効である可能性がある。 - CCP抗体の多様性とその役割(Protective ACPA)の存在
CCP抗体は患者さん一人一人の中にも、異なる種類のACPAが存在し、異なるシグナル伝達を行う可能性がある。
CCP抗体は破骨細胞の分化を促進し、骨を壊す作用があるが、一部のCCP抗体は関節を守る作用がある可能性があり、それらの報告が近年増えている。 - リウマトイドファクターの役割とその結合部位の違い
リウマトイドファクターはIgGのFC部分に結合し、同じリウマチ因子陽性でもリウマチ患者と健常者で結合部位が異なる。IgM型が最も炎症を誘発しやすいが、IgA型は特異度が高い。RF156、200以上が難治性になるという報告が最近増えてきており、ここになにかの鍵がある。 - IL-6阻害薬の効果とその作用機序
IL-6阻害薬はリウマチ患者において高い継続率を示し、サリルマブスコアに効果的である。
IL-6は破骨細胞の分化を促進し、骨を壊す作用があるが、制御性T細胞の機能回復を促進する可能性がある。特にIL-6を阻害することでIL-2受容体のβ鎖発現の方向に働き、βγ鎖が揃いIL-2受容が増し制御性T細胞の機能回復へという話が面白かった。 - IL-6阻害薬の効果と安全性について
安全性については、好中球減少は有名だが、好中球減少は好中球の分布変化の結果と言われ、感染症のリスクは増加しないという報告や、むしろ投与直後に好中球減少傾向の場合、IL-6阻害薬の血中濃度が有効濃度に達している証左の一つの可能性もあり、体感値としてはその後よく効く印象がある(この話は興味深かったです) - サリルマブとトシリズマブの比較
サリルマブとトシリズマブのはIL-6レセプター濃度の比較などを図表を基に見ることができました。 - 高齢者や特定の疾患を持つ患者に対するIL-6阻害薬の効果や継続性
高齢発症の患者にはIL-6阻害薬が有効であり、副作用のリスクが少ない。
IL-6阻害薬はヘモグロビンを上げる効果があり、特に貧血の患者に有効である。
RF高値については、様々なところで聞くことが増えてきており、確かに治療ストラテジーを検討しなければならない要素としての体感もあります。
リウマチ治療を考え、一緒にお話できるのはとても充実した時間でした。ありがとうございました。