あなたのコミュニティーで下痢のアウトブレイクがあり、症状は微熱を伴っていて、数日で改善する。多くの人が感染し、特にそれらの人は一緒に住んでいる人との接触があり、3-7日後に発症する。下痢が主体で、吐き気はない。
こういう場合に想定される起因菌は?
1.Salmonella typhimurium
2.Shigella sonnei
3.Campylobacter jejuni
4.Vibrio parahaemolyticus
5.Aeromonas hydrophila
解説
まず、下痢や腹痛などの急性胃腸炎かな?と考えたら、急性胃腸炎様症状を呈する疾患が隠れてないかを考えます。
急性胃腸炎様症状を呈する疾患の鑑別
(青木先生のレジデントのための感染症診療マニュアル第三版より)
感染症関連
骨盤内・後腹膜:骨盤内炎症性疾患、骨盤内膿瘍、腸腰筋膿瘍、穿孔した虫垂炎膿瘍
胆道系感染症
肺炎(特に異形肺炎)
敗血症一般:黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、毒素性ショック症候群などのトキシン関連疾患
その他:小児中耳炎
非感染症
血管系:心筋梗塞、肺塞栓、解離性大動脈瘤、腸間膜動静脈血栓塞栓症、くも膜下出血、虚血性腸炎
悪性腫瘍:上部・下部消化管の悪性腫瘍、膵臓癌、肺癌リンパ管転移
消化器系疾患:消化性潰瘍、膵炎
内分泌・代謝疾患:糖尿病性腎不全、尿毒症、副腎不全、甲状腺クリーゼ、ホルモン分泌腫瘍などその他:妊娠、緑内障
問題文を読むと、下痢症の起因菌となりうる菌名たちが並んでいるので、今回は感染症の範疇で考えます。
下痢症を見たときに、大腸型と小腸型に分けて考える
大腸型:テネスムスと呼ばれる、少量、頻回の下痢が起こる。トイレから離れられない。粘膜に菌が入り込んで炎症が起こるため、熱が出やすい。
覚えるべき3つの菌:シゲラ、サルモネラ、カンピロバクターを覚える(カンピロバクターは大腸病変が多いが水様便も多い)
メチレンブルー染色で便中白血球を確認する
小腸型:1回の量が多い、数はそれほど多くない。
大枠で上記を覚え、下痢症の分類をもう少し細かく考えます。
下痢症の分類(大腸型と小腸型)
感染性下痢症の例
急性大腸型(少量、頻回、粘血便、裏急後重(テネスムス)、発熱、腹痛、便中白血球あり)
Shigella sp
Salmonella sp
Clostridium difficile(偽膜性腸炎)
Entamoeba histolytica
Enteroinvasive E coli(EIEC)
男性同性愛患者の直腸障害
単純ヘルペスウイルス
Neisseria gonorrhoeae
Chlamydia trachomatis
Mycobacteria avium-intracellulare complex
急性小腸型(大量、水様便、発熱・腹痛は軽度、便中白血球なし)
Vibrio cholerae
Clostridium perfringens
enterotoxigenic E.coli(ETEC)
原虫疾患(Giardia、Cryptosporidium)
混合型(上記の特徴で分類しにくい)
Vivrio parahaemolyticus(毒素も粘膜障害も)
Campylobacter sp(大腸病変も多いが水様便も多い。便中白血球あり)
Yersinia enterocolitica(下痢、回腸末端の潰瘍、リンパ節炎など)
Aeromonas sp(粘血便も水様便もあり)
Plesiomonas sp(粘血便も水様便もあり)
急性胃腸炎型(急性小腸型の臨床像に加え、悪心嘔吐が強い)
ウイルス性胃腸炎
ロタウイルス
ノークゥオーターウイルス
コクサッキーウイルス
毒素型(短い潜伏期間+悪心・嘔吐が強い)
Staphylococcus aureus
Bacillus cereus
消化器症状以外が目立つ型
Salmonella typhi
Campylobacter fetus
(敗血症になりやすく、Campylobacter jejuniと感受性もだいぶ違う)
Yersinia enterocoloitica
(結節性紅斑や関節痛を起こす、夏に多い敗血症、
自己免疫疾患:関節炎、甲状腺疾患、咽頭炎も)
Vibrio vulnificus
(軟部組織感染症、敗血症)
非感染性下痢症の例
大腸型
潰瘍性大腸炎
小腸型
浸透圧性下痢症(経管栄養、Mg入り制酸剤)など
吸収不良
腸管閉塞・狭窄
運動異常
答え
この問題の場合は、
100個以下で感染してしまう、感染しやすい(移りやすい)ものは(ノロ、シゲラ、大腸菌)