自己免疫疾患の種類と症状をわかりやすく解説|免疫と自己免疫疾患を軍隊に例えると

目次

自己免疫疾患の基礎知識

自己免疫疾患とは、免疫システムが自分の体の健康な組織を誤って攻撃してしまう病気です。

自己免疫疾患と呼ばれる病気は一見難しい病気も多いですが、それぞれの病気で起こっている現象や注意点が少しずつ分かってきており、また治療方法も進歩してきています。

このページは、自己免疫疾患って何?という方向けに解説していきます。

医師 高杉

自己免疫疾患は正しい知識を持つことで、早期発見・早期治療につながります

免疫システムの仕組み

免疫システムは、体内に侵入した細菌やウイルスから体を守る防御システムです。

免疫は、本来異物を認識して攻撃する仕組みになっています。

免疫を軍隊にたとえて考えると、わかりやすいかもしれません。

1. 物理的バリア:要塞の城壁や堀

  • 皮膚や粘膜、胃酸、酵素など
    • 役割: 病原体(細菌やウイルスなど)の侵入を最初に防ぐ「城壁」や「堀」のようなもの。
    • 例え: 敵兵(病原体)が侵入を試みても、まずは侵入できないように堅固な壁(皮膚)があり、内側には様々な防衛(粘液、胃酸など)が待ち受ける。

2. 自然免疫(先天免疫):最初に出動する一般部隊・斥候兵

2-1. 好中球やマクロファージ:歩兵、斥候兵

  • 役割: 侵入してきた病原体を見つけ次第、手当たり次第に貪食・排除する。
  • 例え:
    • 好中球は大量に動員されて敵を攻撃する「歩兵部隊」。
    • マクロファージは戦場を巡回し、敵を偵察・掃討する「斥候兵」兼「掃除屋」。

2-2. 樹状細胞:情報将校・通信兵

  • 役割: 病原体の断片(抗原)を集め、獲得免疫(後述)に情報伝達する。
  • 例え: 「敵の情報を収集し、本部(リンパ節など)に報告する通信兵・情報将校」。

2-3. NK細胞:特殊部隊

  • 役割: ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞など「内部から裏切った細胞」を迅速に排除する。
  • 例え: 急襲を専門とする「特殊部隊」や「治安維持部隊」であり、不審な動きをする者を即時に排除する。

2-4. 補体系(補体)

  • 役割: 病原体の表面に結合してマーキングしたり、穴をあけたりして破壊を助けるシステム。
  • 例え: 地雷原や自動防衛装置のように、敵(病原体)の侵入を検知したら自動的に攻撃モードに切り替わる仕組み。

3. 獲得免疫(適応免疫):エリート部隊・司令部

自然免疫が敵を見つけた後、その情報を基に「特定の敵」に合わせて作られる精鋭部隊が獲得免疫です。訓練されるのに少し時間がかかりますが、その分「記憶」や「精度の高さ」が特徴です。

3-1. Tリンパ球(T細胞)

  • 役割: 情報の統括(司令官)から直接の攻撃(特殊部隊)まで、複数の機能を持つ。
  • 例え:
    • ヘルパーT細胞(CD4+): 軍全体を指揮する「司令官」。他の免疫細胞へ「攻撃命令」や「増強命令」を出す。
    • キラーT細胞(細胞障害性T細胞、CD8+): 敵が潜伏している細胞ごと排除する「特殊作戦部隊」。特定の抗原を持つ細胞だけを精密に攻撃する。
    • 制御性T細胞(Treg): 内部の暴走を防ぎ、誤射(自己攻撃)を抑える「憲兵隊」や「内部監査部門」。

3-2. Bリンパ球(B細胞)

  • 役割: 抗体(免疫グロブリン)という分子を生産し、病原体をターゲット指定して排除しやすくする。
  • 例え:
    • B細胞自体は「兵器開発部門」。
    • 抗体は「標的を正確に狙えるミサイル」や「追尾弾」。敵(病原体)の表面に結合して、他の免疫細胞や補体が攻撃しやすくなるよう目印を付ける。

3-3. メモリー細胞:情報保管庫

  • 役割: 過去に遭遇した病原体の情報を蓄え、再度侵入された際にすばやく対応できるようにする。
  • 例え: 「アーカイブ部署」や「諜報部のデータベース」。一度学んだ敵の情報はすぐに取り出せるため、二度目以降の戦いではスピードも攻撃精度も向上する。

4. 免疫寛容と自己免疫:友軍への誤射防止と内部抗争

  • 通常、免疫システムは自分自身(自己)を攻撃しないように「免疫寛容」が働いている。
  • これが破綻すると、いわゆる「味方(自己組織)を敵と誤認して攻撃してしまう」自己免疫疾患が起こる。
  • 例え: 憲兵や内部監査が機能不全になり、味方をスパイだと誤認して排除し始める「内部抗争」のような状態。

5. まとめ:免疫軍隊のポイント

  1. 第一防衛線(物理的バリア): 城壁や堀が外からの侵入を阻止。
  2. 自然免疫部隊: 斥候兵や歩兵が敵を即時に発見・攻撃。情報将校(樹状細胞)が獲得免疫へ連携。
  3. 獲得免疫の司令部・精鋭部隊:
    • T細胞 = 司令官・特殊部隊・憲兵
    • B細胞 = 兵器開発部門(抗体)
    • メモリー細胞 = 過去データの保管
  4. 自分と敵を区別するチェック機構(免疫寛容): 誤射が起こらないよう常に監視。
  5. 自己免疫疾患: 監視システムの破綻による「内部抗争」。

このように免疫システムを軍隊に例えると、各細胞や分子がどのような役割を担っているか、理解しやすくなります。ただし実際の免疫システムは、さらに複雑で多段階のシグナル伝達が行われている点に注意が必要です。あくまでイメージとして捉えることで、どの細胞が何をしているのかをざっくり把握する助けになります。

自己免疫疾患が起こるメカニズム

自己免疫疾患は、免疫システムが自分の体の正常な組織を異物と誤認識することで発症します。

一度誤認識が始まると、そのシステムを正常に戻さないと、免疫システムは継続的に自己の組織を攻撃し、炎症や組織障害を引き起こします。

自己免疫疾患は、本来なら「自己の組織・細胞」を攻撃しないように制御されている免疫システムが破綻し、「自己抗原(自分自身の成分)を外敵と誤認して攻撃してしまう」病態です。以下に、その主なメカニズムをまとめます。


1. 免疫寛容の破綻

1-1. 中枢性寛容の異常

  • 概要: 胸腺(T細胞の分化・成熟が行われる場所)や骨髄(B細胞の分化・成熟が行われる場所)などで、自己抗原に強く反応するリンパ球が排除(アポトーシス)される仕組みを「中枢性寛容」と呼びます。
  • 異常: この段階で「自己反応性」を持つリンパ球が十分に排除されず、生き残ってしまうと自己免疫反応のリスクが高まります。

1-2. 末梢性寛容の異常

  • 概要: 末梢(全身のリンパ組織など)においては、自己反応性リンパ球の活動を抑制する仕組み(制御性T細胞の働きやアナジー誘導など)が存在します。
  • 異常: 制御性T細胞(Treg)がうまく働かない、抑制性サイトカインが出ない、あるいは免疫細胞がアナジーを起こせずに活性化状態を保ってしまうなどの要因で、自己免疫反応が抑えられなくなります。

2. 交差反応(分子擬態)

  • 概要: 病原体由来の抗原と自己の組織が似た分子構造(抗原性決定基)を持っている場合、外敵を攻撃するために作られた抗体やT細胞が、自分自身の組織にも反応してしまう現象です。
  • 具体例:
    • リウマチ熱では、溶血性レンサ球菌(ストレプトコッカス)の抗原に対して産生された抗体が心臓弁や関節の組織とも反応。
    • 1型糖尿病では、ウイルス感染に対する免疫応答が膵臓のβ細胞を標的にしてしまう可能性などが指摘されています。

3. アポトーシスの異常と自己抗原の過剰露出

  • 概要: 正常な細胞死(アポトーシス)で出てくる自己抗原は、通常免疫系に「問題のない自己の残骸」として処理されます。しかしアポトーシス過程が異常になると、自己抗原が通常とは違う形で免疫系に提示され、自己反応性免疫応答を誘導することがあります。
  • 具体例:
    • **SLE(全身性エリテマトーデス)**では、核成分(DNA、ヒストンなど)に対する自己抗体が多数見られます。アポトーシスや死細胞の処理に異常があると、これらの核成分が免疫系に持続的にさらされ、自己免疫反応が起こりやすくなります。

4. 遺伝的要因

  • 概要: 自己免疫疾患には遺伝的素因が強く関わることが知られています。特に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)=ヒトではHLAの型によって発病しやすい疾患が異なります。
  • 具体例:
    • HLA-B27と強直性脊椎炎などの関連
    • HLA-DR3, DR4と1型糖尿病、SLEなどの関連
  • メカニズム: 特定のHLA型を持つと、自己抗原の提示や免疫寛容メカニズムに影響が出る場合があります。

5. 環境要因(感染、ストレス、その他)

  • 感染症: 前述のように交差反応(分子擬態)が起こりやすくなり、免疫系が活性化すると自己免疫反応が誘発されることがあります。
  • ホルモン・性差: 女性に自己免疫疾患が多いことから、エストロゲンなどの性ホルモンが免疫調節に影響している可能性があります。
  • ストレス・ライフスタイル: 強いストレスが免疫バランスを崩し、自己免疫反応を助長する要因になり得ると考えられています。
  • 薬剤・化学物質: 一部の薬剤や化学物質が自己免疫反応を誘発する報告もあります。

6. 自己免疫疾患の発症モデル

  1. 遺伝素因 + 環境因子(感染、ストレスなど) + 免疫寛容の破綻
  2. これらが重なり合って自己抗原への反応が慢性的に続くことで、さまざまな組織・臓器に炎症や破壊が生じる。

まとめ

  • 免疫寛容の破綻: 胸腺や骨髄、末梢での「自己反応性リンパ球」の制御がうまく働かず、自己組織への攻撃を抑えきれなくなる。
  • 交差反応(分子擬態): 病原体と似た自己抗原への過剰反応。
  • アポトーシス異常: 死細胞の処理不全で自己抗原が免疫系に誤って提示される。
  • 遺伝的要因 + 環境要因: HLA型の影響や感染、ホルモン、ストレスなどで発症リスクが高まる。

これらの要素が複雑に絡み合い、「自己組織を異物と誤認し、持続的な炎症反応を引き起こす」ことが自己免疫疾患の本質です。したがって、自己免疫疾患のメカニズムは単一の原因によるものではなく、遺伝背景や環境因子など、多面的な要因の相互作用として考えられています。

家族に自己免疫疾患の人がいるので、私も気をつけなければと思います

発症リスクが高まる生活習慣

不規則な生活や過度なストレスは、自己免疫疾患の発症リスクを高めます。

代表的な自己免疫疾患と特徴

自己免疫疾患には多くの種類があり、それぞれ特徴的な症状を示します。

気になる症状がある場合は、早めに専門医を受診しましょう。

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