リウマチ治療の第一選択は従来型合成DMARD(csDMARD)のメトトレキサート(MTX)が推奨されますが、近年バイオ製剤(bDMARD)やJAK阻害剤(tsDMARD)を早期から併用する戦略の有効性が検討されています。
そのメリットとして疾患活動性の迅速な低下や関節破壊進行の抑制が期待されますが、一方で副作用リスクや費用の問題も考慮が必要です。このページではでは過去5年間を中心としたエビデンス(RCTやメタ解析)にもとづき、初期治療からバイオ製剤(抗TNF薬、IL-6受容体阻害薬など)またはJAK阻害剤(トファシチニブ、バリシチニブ等)を用いる戦略の有効性とリスクについて整理します。

関節リウマチの初期治療としてのバイオ製剤・JAK阻害剤の疾患活動性の改善(臨床効果)
初期からのバイオ製剤併用: 治療開始時からMTXにTNF阻害剤などのバイオ製剤を併用すると、従来のMTX単独療法よりも高い寛解率・奏効率が得られることが多数のRCTで示されています。
例えば、抗TNF薬アダリムマブ+MTX併用群では6か月時点の寛解率が約48%に達し、MTX単独群の30%弱を有意に上回りました。(p=0.02)1)
同様に1年間のACR50/70改善率も併用群で有意に高く、関節の痛みや機能障害の指標(HAQ)も改善しています1)。IL-6阻害薬についてもMTX未使用の早期RA患者を対象にMTX単独 vs トシリズマブ±MTXで比較した無作為化試験で、トシリズマブ開始群の方が寛解達成が有意に多いことが報告されています6)。
さらに近年の大規模比較試験(NORD-STAR試験)では、MTX+ステロイドによる集中的治療(従来療法)では1年後の臨床的寛解率は約39%でしたが、初期から生物学的製剤(例:アバタセプトや抗TNF)を併用した群では50–60%と上昇し、特にアバタセプト併用群で有意に高い寛解率が得られています2)。
これらのエビデンスは、予後不良因子を有する活動性の高いRAでは、初期から生物学的製剤を併用することで疾患活動性をより速やかかつ大幅に低下させうることを示しています<sup>1) 2)</sup>。
初期からのJAK阻害剤: JAK阻害剤も同様に、MTX未治療の早期RAにおいて単独あるいはMTX併用で高い有効性を示します。バリシチニブの第III相試験(RA-BEGIN試験)では、バリシチニブ4mg単独群の24週時ACR20改善率が77%と、MTX単独群の62%を有意に上回りました3)。臨床指標の改善は投与開始1週目から認められ、症状の迅速な軽減が報告されています3)。

またトファシチニブについても、MTX初回治療として用いた2年間の試験でMTX単独より有意に高い臨床効果と寛解達成率を示しています5)。さらに近年承認されたウパダシチニブについては、MTX未投与の早期RA患者を対象としたSELECT-EARLY試験でプラセボ対照比較が行われ、ウパダシチニブ投与群の方が有意に高い低疾患活動性・寛解達成率を示しました。
その長期追跡結果(5年間)でも、MTX初期治療群に比べウパダシチニブ初期治療群の方が一貫して高い寛解率を維持しており、5年時点での臨床的寛解到達率はウパダシチニブ群で約53%と、MTX群の43%を上回ります4)。このようにJAK阻害剤の初期使用は高い臨床効果の持続につながる可能性があります。
リウマチを早く治したい場合の生物学的製剤の関節破壊の進行抑制(画像上の効果)
生物学的製剤(バイオ製剤による構造的損傷抑制): 関節リウマチの治療では、「早期から炎症を抑え込むことで関節の不可逆的な破壊を防ぐこと」が重要です。その点で、初期治療にもバイオ製剤を用いる戦略は、X線評価での関節破壊進行(Sharpスコア増加)の抑制にも有利であることが示唆されています。
抗TNF薬+MTX併用群では、MTX単独群よりも1年後のX線上の関節破壊進行が有意に少ないとの結果が複数報告されています1)。そのため、費用やリスクに合わせて、初期から生物学的製剤を使用することのメリットはあります。
例えばHIT HARD試験では、48週時点で初期からMTX単独だった群の方が関節破壊の進行が明らかに大きく、最初からADA+MTX併用した群は構造損傷をより抑制できました1)。
またこれはIL-6阻害薬でもデータが出ており、IL-6阻害薬トシリズマブ(アクテムラ®)初期導入群も、MTX群と比較して2年間でのX線進行を有意に抑制したとの報告があります。
実際、U-Act-Early試験の延長追跡でも、試験期間中はトシリズマブ群で関節破壊の進行が少なかったことが示されています6)。以上より、
生物学的製剤の初期併用は関節炎の炎症制御を通じて早期の関節破壊を防ぎ、構造的損傷の蓄積を減らしうると考えられます。
しかし一方で、厳格なTreat-to-Target戦略により従来療法群でも、長期的には早期バイオ群との構造損傷抑制効果の差が縮小する可能性も示唆されています。
例えば前述のトシリズマブ初期導入試験では、5年後のX線上の損傷進行は初期MTX群と初期トシリズマブ群で大差なくなっていました6)。実際この追跡では全体の約70%で5年間ほとんど関節破壊が進まず、最終的に初期治療戦略間で有意差が認められなかったのです(進行ありは各群30%程度)6)。
この結果は、MTX単独で開始しても早期から適切に治療強化(必要時バイオ製剤追加)を行えば、長期的には関節破壊を十分抑制できることを示唆します。とはいえ、初期治療からの積極的介入で少なくとも短中期の関節破壊進行を有意に抑えられる点は、機能予後の観点から大きなメリットといえます1)。
わかりやすく言うと、早期にバイオを導入した軍はレントゲンでの変更が抑えられメリットはしっかり出るが、ガイドラインでの治療でもしっかりやればそれに近いくらいのレントゲンでの構造変化に抑えられるという意味になります。
JAK阻害剤による関節保護効果: JAK阻害剤についても、画像上の効果は同様に良好です。RA-BEGIN試験ではバリシチニブ併用群でSharpスコアの進行がMTX群より抑制され、特にバリシチニブ+MTX群で統計学的有意差が認められました3)。バリシチニブ単独群でも進行抑制効果は示され、MTX群と比較して僅差であったものの構造的損傷を減らす傾向が示されています3)。トファシチニブの初期治療試験(ORAL Start)でも、トファシチニブ投与群で関節破壊の進行がMTX群より少ないことが報告されており5)、ウパダシチニブにおいても5年間でMTX群より関節破壊が少ない傾向が示されています4)。以上より、JAK阻害剤を初期から用いることで関節破壊進展を抑える効果が期待でき、長期的な関節機能の保持に寄与すると考えられます。
初期の強い炎症を、しっかりと取る。そのために生物学的製剤やJAK阻害薬を使うというのは、値段のことさえ許容できれば十分に力強い選択肢になりえます。
生物学的製剤やJAK阻害薬の安全性・副作用リスク
バイオ製剤の安全性: 初期からバイオ製剤を用いた場合の副作用プロファイルは、MTX単独と比較して重篤な有害事象が劇的に増加するわけではないことが報告されています。
複数のRCTを統合したメタ解析によれば、早期RA患者における各治療戦略間で重篤な感染症や非重篤な副作用の発生率に大きな差は認められませんでした5)。ステロイド併用戦略も含めて全般に安全性プロファイルは良好であり、「典型的な早期RA患者において治療法間のリスク差は僅少」と結論づけられています5)。
もっとも一部指摘として、生物学的製剤単独療法ではMTX単独療法より重篤有害事象発生率がやや高い(リスク比約1.4)との解析結果もあり、安全面の慎重な観察は必要です5)。
生物学的製剤に共通する副作用としては重篤感染症(肺炎など)のリスクや結核・B型肝炎ウイルスの再活性化、注射部位反応、輸液反応などが挙げられます。またIL-6阻害剤では肝機能障害や高脂血症、抗TNF剤では希少ながら心不全増悪など、それぞれ特有の注意点があります。
とはいえ短期~中期のRCTではMTX対照と比べ明確な有害事象の増加は報告されておらず1) 5)、初期導入においてもバイオ製剤の安全性は概ね既知の範囲内と考えられます。現時点で各国のガイドラインがMTX先行を推奨する背景には、副作用というより費用対効果や長期安全性の蓄積知見の差が大きいとされています。
JAK阻害剤の安全性: JAK阻害剤も初期治療から使用可能ですが、こちらは感染症および特定の副作用のリスクに留意が必要です。RCTの短期結果では、重篤有害事象や重篤感染症の発生率はMTX単独と大差ない一方で、感染症全体(特に帯状疱疹)や一部の検査値異常(好中球減少、肝酵素上昇、脂質異常)など特有の副作用がJAK阻害剤群でやや高頻度でした3) 4)。例えば5年間のウパダシチニブ投与では、MTXに比べて帯状疱疹の発症率が高く、重篤感染症、CK上昇、好中球減少などもやや多い傾向が報告されています4)。
バリシチニブとの併用療法では感染症リスクが相加的に増える可能性も指摘され、RA-BEGIN試験ではバリシチニブ+MTX群で感染症が増加傾向を示しました3)。また血栓症(VTE)リスクについては、バリシチニブやトファシチニブで海外当局から注意喚起が出されています。
特にトファシチニブに関しては、既存治療で効果不十分な患者を対象とした長期安全性試験(ORAL Surveillance試験)の結果、抗TNF剤対照に比べて心血管イベントや悪性腫瘍の発生率が有意に高いことが報告されました7)。この試験は高リスク患者・既存治療抵抗例でのデータですが、特に50歳以上や心血管リスク因子を有する患者では慎重投与が求められています7)。
以上より、JAK阻害剤の初期使用は強力な有効性と引き換えに、感染症(とくに帯状疱疹)や長期的な安全性リスク管理が重要です。適切なワクチン接種(帯状疱疹ワクチン等)やリスク因子の評価を行いながら慎重に適応選択することが推奨されます。
ですが、それらの副作用は、ガイドライン通りの3か月~6か月の時点で生物学的製剤やJAK阻害薬に移行しても同じリスクであり、早期に炎症を抑えるメリットと、費用対効果と副作用に留意して、最終的に一番良い選択を選ぶのがよいでしょう。
早めに生物学的製剤を使用するメリットのまとめ
初手からバイオ製剤やJAK阻害剤を用いる戦略は、疾患活動性を迅速かつ大幅に低下させ、高率に寛解へ導く点で大きなメリットがあります。
また関節破壊の進行抑制効果も優れており、短期~中期的には従来治療より関節を保護できる可能性が示されています。ただし、副作用リスクとして感染症を中心に注意が必要であり、JAK阻害剤では長期安全性も考慮し、治療プランを立てる必要があります。
総合的に、高品質なRCTやメタ分析のエビデンスは、予後不良因子を有する早期RA患者において初期からこれらの治療を併用する利点を支持しています1) 3) 4)。一方で、安全性とコストを踏まえて現行ガイドラインは依然としてMTXを第一選択としつつ、治療目標未達なら速やかに生物学的製剤やJAK阻害剤へ切り替える方針を推奨しています。したがって、患者個々のリスク・ベネフィットを評価しつつ、適切なタイミングで先進的治療を導入することが重要と言えます。
当院では、関節炎の病勢を超音波で特定し、仕事や生活との折り合いをつけながら治療方法を一緒に相談しています。
関節リウマチの症状を早く取りたい、という患者さんは、いつでもご相談ください。

参考文献(脚注)
- Detert J, et al. HIT HARD試験: 抗TNFα抗体アダリムマブ+MTX初期併用療法の有効性評価(DMARD未治療の早期RA対象).Ann Rheum Dis. 2013;72(6):844-850. (ADA+MTX群はMTX単独群に比べDAS28寛解率・ACR50/70改善率が有意に高く、1年時のX線進行も抑制)
- Hetland ML, et al. NORD-STAR試験: MTX+ステロイドによる従来治療 vs 抗TNF(CZP)、アバタセプト、トシリズマブ併用治療の比較(早期RA).BMJ. 2020;371:m4328. (48週時の臨床的寛解率は従来療法群39.2%に対し、生物学的製剤併用群は52–59%と向上(CZP・ABA群で有意差))
- Fleischmann R, et al. RA-BEGIN試験: バリシチニブ単独および併用療法 vs MTX初期治療の比較(DMARD未治療RA).Arthritis Rheumatol. 2017;69(3):506-517. (24週時点でバリシチニブ群のACR改善率・疾患活動性スコアはMTX群より有意に良好。画像上も併用群で関節破壊進行を有意に抑制)
- SELECT-EARLY試験5年追跡結果(MTX未投与RAに対するウパダシチニブ単独 vs MTX単独): Arthritis Res Ther. 2024; 26:65 (予定). (ウパダシチニブ群はMTX群より一貫して高い寛解・低疾患活動性達成率を示し、構造損傷進行も少ない傾向。長期的な安全性ではウパダシチニブ群で帯状疱疹や重感染がやや増加)
- Adas M, et al. 早期RA治療戦略の安全性に関するネットワークメタ解析.Rheumatology (Oxford). 2021;60(10):4590-4597. (20件のRCT・計9202例を解析。生物学的製剤併用群と従来療法群で重篤感染症や非重篤副作用の発生率に有意差はなく、安全性プロファイルの差異は全体的に小さい)
- Verhoeven MM, et al. U-Act-Early試験の3年延長追跡: トシリズマブ初期導入 vs MTX初期導入戦略の長期成績.Rheumatology (Oxford). 2020;59(9):2325-2333. (試験開始から5年総観察で各群の平均DAS28は同等。5年時点でのX線進行有無も初期治療群間で有意差なし(進行ありは各群30%前後))
- Ytterberg SR, et al. ORAL Surveillance試験: トファシチニブの長期安全性(抗TNF薬対照).N Engl J Med. 2022;386(4):316-326. (50歳以上かつ心血管リスク因子を有するRA対象。トファシチニブ群で抗TNF群に比べ、重大心血管イベントおよびがん発生が有意に多く報告され、安全性上の懸念を喚起)