薬には、「良い面」「悪い面」があり、治療の効果を高めるためには良い面を引き出し、悪い面を減らしていくことが効果的です。
関節リウマチの治療薬であるメトトレキサートにも
1.薬としての良い面(関節炎の改善や変形抑制効果)
2.薬としての悪い面(注意するべき副作用)
があり、このページでは副作用について解説します。
Methotrexate as the “anchor drug” for the treatment of early rheumatoid arthritis.
• Two major advances may account for the improved status of patients with RA over the last decade.
• The first involved a major shift in the strategies for patient care. Earlier approaches had emphasized deferring treatment with DMARDs until disease had been present
for a few years… A new approach to RA was proposed in the late 1980s involving “remodeling the pyramid” and thinking of RA as a “medical emergency”, which
requires early, aggressive intervention with a goal of remission, not mere improvement.
• The second major advance in the treatment of RA over the last two decades was a DMARD which was far more potent and safe than previously available DMARDs –
weekly low dose methotrexate… However, methotrexate differs substantially from all available DMARDs , showing greater efficacy and a high level of safety… It is
recognized that 20-30% of patients remain poorly controlled with methotrexate and require further therapy. …. Nonetheless, methotrexate continues to be the “anchor
drug” for most patients with RA.
上記はメトトレキサートの添付文書からの抜粋です。
メトトレキサートの副作用と発現頻度
口内炎 1.3%
消化器症状 3.1%
肝機能障害 9.6%
感染症 3.3%
骨髄障害 0.5%
肺臓炎 0.4%
リンパ増殖性疾患 0.1%
※リウマトレックス適正使用ガイド2017より
メトトレキサートの肝障害や骨髄障害への予防
これらのうち、肝臓や骨髄(白血球数)は、メトトレキサートの量と葉酸の量のバランスで副作用が出にくくすることが可能です。添付文書にも、投与量を増量すると骨髄抑制、感染症、肝機能障害等の副作用の発現の可能性が増加するので、定期的に臨床検査値を確認する等を含め患者の状態を十分に観察すること。消化器症状、肝機能障害等の副作用の予防には、葉酸の投与が有効であるとの報告があるとの記載があります。
メトトレキサートガイドライン2017でも、葉酸の併用はメトトレキサートの副作用を減らすが効果は落とさないとされています。
添付文書では、4週間ごとの血液検査が推奨されています。
骨髄抑制、肝・腎機能障害等の重篤な副作用が起こることがあるので、本剤投与開始前及び投与中、4週間ごとに臨床検査(血液検査、肝機能・腎機能検査、尿検査等)を行うなど、患者の状態を十分観察すること 添付文書より引用
メトトレキサートの消化器症状(口内炎や吐き気や気持ち悪さ)への対処法
メトトレキサート使用ガイドライン2016からの抜粋です。
嘔気等発生時の対処方法
❶葉酸(フォリアミン®)や活性型葉酸(ホリナートカルシウム;ロイコボリン®)を併用あるいは増量する
❷MTXの分割投与により消化管障害(嘔気,食思不振)が軽減される場合がある.
❸アフタ性口内炎に対しイルソグラジンマレイン酸塩が有効であることがある.
❹MTX服用日あるいは翌日の嘔気にグラニセトロン塩酸塩(保険適用外),ドンペリドン,メトクロプラミドの併用が有用であったという報告がある.
もしくは注射製剤(メトジェクト)に切り替えると嘔気は改善するとされています。
メトトレキサートと脱毛
結核の事前検査や予防
本剤投与に先立って結核に関する十分な問診及び胸部X線検査に加え、インターフェロン-γ遊離試験又はツベルクリン反応検査を行い、適宜胸部CT検査等を行うことにより、結核感染の有無を確認すること。結核の既往歴を有する場合及び結核感染が疑われる場合には、結核の診療経験がある医師に相談すること。以下のいずれかの患者には、原則として本剤の開始前に適切な抗結核薬を投与するこ
リンパ増殖性疾患や間質性肺炎
メトトレキサートと関連する合併症で、最も注意するものはリンパ増殖性疾患と間質性肺炎です。
①リンパ増殖性疾患に好発時期はない.MTX使用中に,原因不明の発熱,寝汗,体重減少,リンパ節腫大,肝脾腫,白血球分画の異常,貧血・血小板減少,高LDH血症などを認めた場合にはLPDを鑑別する.
②リンパ増殖性疾患ではリンパ節外が原発であることも多く,皮膚病変(皮下腫瘤),咽頭・扁桃病変(難治性咽頭痛,扁桃腫大など),軟部組織腫瘤,異常肺陰影の出現などが初発症状であることも念頭に置く.
③患者には頸部や腋窩などにリンパ節の腫脹を見つけた際には,すぐ受診するようあらかじめ説明しておくことも大切である
と、早期発見が必要になります。
通常の悪性リンパ腫と異なり,MTX を中止するのみで改善する場合があることが特徴であり、特に組織検査での EB ウイルス陽性例で寛解率が高いことが知られています。
もし、これらを起こした場合の次の関節リウマチ治療については、いくつか方法があります。豊田市ではあまりそれらの治療を推奨されずに痛みを我慢している患者様もいらっしゃる印象を持っておりますので、お困りの方は相談いただければと思います。
副作用の解説をすると、どうしてもメトトレキサートは注意点の多い薬剤という面があります。
しかし、葉酸を併用すること、定期的な検査・モニタリングを実施すること、早期発見を意識することで安全度を上げていくことは可能です。
関節リウマチにとって「アンカードラッグ(中心的な役割を持つ薬)」であり、大切な薬剤です。
もし不安や心配なことがあれば、じっくり相談に乗りますので、いつでもご相談ください。