都道府県によって関節リウマチ診療の診療は、リウマチ膠原病内科が診ることが多い地域と整形外科医が診ることが多い地域とに分かれます。
愛知県における関節リウマチ診療の特徴としては、リウマチ膠原病内科医がまだ少なく、整形外科医が関節リウマチ診療を行う伝統が続いている点は、各県の先生方から指摘されることが多い興味深い点です。最近の傾向として、全国的にはリウマチ膠原病科内科医が関節リウマチの診断や治療を担うことが増えてきていますが、愛知県ではリウマチ膠原病内科医が少なく、整形外科医が診療の中心を担ってきた歴史があります。
最近の関節リウマチの治療は、良い薬がたくさん出てきたため、手術より薬物療法や全身的な治療に焦点を当てた診療が主流となってきています。リウマチの抗体などの血液検査、感染症リスクや合併症リスクに重点を置いた薬による治療は、内科医の得意な領域であり、また最近の抗リウマチ薬の選び方は、ますます免疫学の観点から考えた使い分けが増えてきています。

関節リウマチの治療において、どちらの医師に相談すべきかは、症状や治療段階によって異なります。
以下の基準を参考にして判断することもできます。
1. リウマチ膠原病内科医に相談すべき場合
リウマチ膠原病科医は、関節リウマチのような自己免疫疾患の全身的な管理を専門としています。次の場合にリウマチ膠原病科医への相談をおすすめします。
- 初期診断:関節リウマチと診断されたばかりで、全身の免疫系に関する治療が必要なとき。
- 薬物治療の管理:メトトレキサートをはじめとするDMARDs(疾患修飾性抗リウマチ薬)や生物学的製剤、JAK阻害剤などの免疫抑制剤を使用して治療を続ける場合。
- 全身症状:関節の痛み以外にも疲労や発熱などの全身症状があり、病気が進行している可能性がある場合。
- 病気の進行防止:早期の治療で炎症を抑え、関節の損傷を防ぎたい場合。
2. 整形外科医に相談すべき場合
整形外科医は、関節や骨、筋肉の外科的治療やリハビリを専門としています。次の場合に整形外科医への相談をおすすめします。
- 関節の痛みや変形が進行しており、装具の相談を含む関節の状態を確認したい場合。
- 外科的な治療(関節手術や人工関節の置換など)が検討される段階にある場合。
- リハビリテーションや理学療法を受けたい場合。
- 関節の機能改善リハビリテーションや運動機能の回復を図りたい場合。
- リウマチ以外の痛みの場合。
整形外科と得意疾患
整形外科というのは、内科でいうと内科というくくりに該当します。内科には消化器内科や呼吸器内科やリウマチ膠原病内科など色々な専門性があるのと同様に、整形外科にも下記の7つの専門性があり、リウマチはその一部です。そのため、リウマチが得意な先生だけでなく、リウマチを専門的に学んできていない先生もいらっしゃいます。
脊椎(せきつい)
脊柱(背骨)に関連する疾患や障害の診断と治療を行います。椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎の変形(脊椎側弯症など)などが含まれます。
股関節(こかんせつげか)
人工関節置換術や変形性関節症などを専門とされる領域です。
スポーツ整形外科(肩や膝)
スポーツや運動によって生じる怪我や損傷の診断と治療を行います。靭帯損傷、筋肉や腱の断裂、疲労骨折などが対象です。
小児
子ども特有の骨や関節の発達異常や疾患、外傷に対する治療を行います。例えば、先天性股関節脱臼や内反足、成長期に特有の骨折などが含まれます。
手外科
手や腕、肘に関連する疾患や損傷の治療を行います。手根管症候群、腱鞘炎、指の骨折など、特に細かい手術や再建手術が必要な場合に専門的な治療を提供します。
リウマチ
関節リウマチを専門に行います。愛知県は、リウマチを専門に行う整形の先生も多いです。
腫瘍
骨軟部にできる腫瘍を専門に扱う部門です。
上記のどれかを専門にされていても、クリニックを開業する際には整形外科・リウマチ科で開業なさることが多いので、関節リウマチ診療が得意でない先生が時々リウマチ科を標榜されていらっしゃるのが注意点かと思います。その見極め方法の一つが、リウマチ専門医資格の有無です。持っていらっしゃる先生は、一定のリウマチ診療経験を持っていらっしゃると考えることができます。
整形外科とリウマチ膠原病内科のどちらを受診するべきか
いずれのどちらでも良いですが、「リウマチ専門医」かどうかは確認していただいたほうが良いかと思います。
愛知県での関節リウマチ診療の利点
愛知県では、他県に比べて付加給付制度や身体障害申請などの社会保障が充実しており、特に関節リウマチの治療で高価な薬剤を使用する際に利用できる社会制度が整っています。これにより、患者は負担を軽減しながら、必要な治療を受けることができる環境が提供されています。
付加給付制度とは、健康保険などの公的医療保険制度でカバーされる医療費に加えて、自己負担分を軽減するために支給される追加の給付金を指します。特に高額な医療費がかかる場合や、重い病気に対する治療に際して、患者の経済的負担を軽減するために設けられている制度です。大企業などの健保組合や、公的機関の医療保険などで採用されていることが多い制度で、愛知県の場合、製造業などの産業が多いため、採用されている企業も他県より多いです。
付加給付制度の仕組み
公的医療保険制度では、患者が医療費の自己負担割合(一般的には3割)を支払います。しかし、重度の病気や高額な医療を受ける際には、この自己負担額が非常に高くなることがあります。そこで、一定の自己負担額を超えた部分をカバーするために、付加給付が支給されることがあります。
- 高額療養費制度との連携
付加給付制度は、一般的に高額療養費制度と連携して運用されます。高額療養費制度では、自己負担額が月ごとに一定額を超えた場合、超過分が払い戻されますが、付加給付制度ではさらにこの払い戻し額を増やすことで、自己負担を一層軽減します。 - 医療費の自己負担の上限を設定
付加給付制度では、患者の医療費の自己負担額に上限が設定されることが多く、例えば1か月の自己負担額が2万円を超える場合、その超過分が支給されるなどの形で支援が行われます。
付加給付制度の具体的な例
- 企業健康保険組合や共済組合では、独自の付加給付制度を設けていることがあります。これにより、特に大企業に勤務している場合や公務員などの場合は、医療費の負担が大幅に軽減されることがあります。
付加給付制度の利点
- 経済的負担の軽減
患者は高額な治療を受ける際でも、付加給付制度を利用することで、自己負担額が抑えられるため、治療を続けやすくなります。 - 治療選択肢の拡大
費用面での不安が減ることで、患者は高価な薬剤や最新の治療法を選択しやすくなります。これにより、より効果的な治療を受けることが可能です。
愛知県では、身体障害への医療費助成が、他県より手厚い
愛知県では、身体障害者に対する医療費助成が他県に比べて手厚く提供されています。特に、身体障害3級でも医療費助成の対象となる点が特徴です。これは、東京や大阪などでは一般的に2級以上の重い等級でないと助成の適用が難しいことが多いため、愛知県はこの点において患者にとって大きな利点と言えます。
まとめ
愛知県の関節リウマチ診療の特徴をまとめました。
当院院長は愛知県の各地域や県外でもリウマチ診療歴がありますが、愛知県の関節リウマチ診療と他県の差や利点もあり、それらを生かした診療を心がけています。
愛知県で関節リウマチ治療をお悩みの方に少しでもお役立ていただければ幸いです。