関節リウマチと動脈硬化の関連と、治療についての最新の知見をお伝えします。
リウマチ治療と脂質異常症の管理を適切に行うことで、動脈硬化のリスクを抑制できることが明らかになっています。
リウマチがあると動脈硬化になりやすいと聞いて不安です
関節リウマチは動脈硬化が進行しやすい疾患とされ、動脈硬化予防・生活習慣病管理は重要です。一方、薬が増えることに抵抗感を持つ気持ちもわかります。
このページでは、『関節リウマチとコレステロールと動脈硬化』という観点で、わかりやすくお伝えします。
定期的な検査と生活習慣の改善で、健康管理をサポートできます。
この記事でわかること
- 関節リウマチ患者は動脈硬化のリスクが約2倍に上昇
- TNF-α阻害薬による治療でコレステロール値が変動する可能性
- LI-6阻害薬による治療でコレステロール値が変動する可能性
- 生活習慣の改善と適切な薬物療法の組み合わせが重要
- 定期的な検査による早期発見と継続的な管理が必須
見出し | 内容 |
---|---|
リウマチ、脂質異常症、動脈硬化の関係性 | ・関節リウマチ患者は脂質異常症と動脈硬化のリスクが高い ・リウマチ治療薬が脂質に影響する場合があり注意が必要 ・定期検査と適切な治療が重要 |
関節リウマチと動脈硬化 | ・リウマチの炎症が動脈硬化を促進 ・リウマチ治療薬がコレステロール値に影響しうる ・悪玉コレステロールが酸化しやすい状態 ・生活習慣の改善と薬物治療が重要 |
脂質異常症と動脈硬化 | ・脂質異常症と動脈硬化は密接な関係 ・コレステロールと中性脂肪の種類と役割理解が重要 ・動脈硬化には複数の要因が関与する ・健康的な生活習慣が大切 |
脂質異常症を放置するリスク | ・心血管疾患のリスク増加 ・脳血管疾患の危険性 ・さまざまな合併症の危険性がある |
リウマチ、脂質異常症、動脈硬化の合併 | ・相互作用によるリスクが高い ・合併症を防ぐための対策が必要 ・定期的な検査が大切 |
健康な生活を送るために | ・食生活の改善が重要 ・運動習慣の定着を推奨 ・禁煙が望ましい ・ストレスを溜めない工夫も必要 ・専門医への相談が大切 ・継続的な治療と検査が重要 |
リウマチ、脂質異常症、動脈硬化の関係性
関節リウマチのある患者さんは脂質異常症と動脈硬化のリスクが高まることがわかっています。
関節リウマチ治療薬の種類によっては、総コレステロールと中性脂肪を上昇させる可能性があるため、定期的な検査と適切な治療が重要です。
疾患 | 特徴 | リスク |
---|---|---|
関節リウマチ | 慢性炎症性疾患 | 心血管疾患のリスク増加 |
脂質異常症 | 血液中の脂質バランス異常 | 動脈硬化の促進 |
動脈硬化 | 血管壁の肥厚・硬化 | 心筋梗塞や脳梗塞の原因 |
最近健康診断で脂質異常症を指摘されて、動脈硬化も心配です
リウマチ治療と並行して、脂質異常症の管理も重要だと考えています
動脈硬化から、脳梗塞などで運動障害が出てしまうこともあります。
健康寿命を伸ばし、快適な毎日を送っていただきたいと思っています。
関節リウマチとは何か
関節リウマチは、免疫システムが自分の関節を攻撃する自己免疫疾患です。
関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなどの症状が特徴的で、適切な治療を行わないと関節の変形や破壊が進行する場合があります。
症状 | 特徴 |
---|---|
関節の痛み | 左右対称に複数の関節に出現 |
腫れ | 関節が腫れて熱を持つ |
朝のこわばり | 朝起きた時に関節が動かしにくい |
疲労感 | 全身のだるさや倦怠感を伴う |
関節リウマチの早期発見と適切な治療により、症状の進行を抑制することができます。
脂質異常症とは何か
脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が異常値を示す状態です。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪が高値の場合、動脈硬化のリスクが高まります。
項目 | 基準値 |
---|---|
総コレステロール | 120-219mg/dL |
LDLコレステロール | 60-139mg/dL |
HDLコレステロール | 40-119mg/dL |
中性脂肪 | 30-149mg/dL |
食事療法や運動療法、必要に応じて薬物療法を行うことで、適切な血中脂質値を維持することができます。
動脈硬化とは何か
動脈硬化は、動脈の内壁に脂質が蓄積して血管が硬くなる状態です。
動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。
危険因子 | 対策 |
---|---|
高血圧 | 血圧の管理 |
喫煙 | 禁煙 |
運動不足 | 適度な運動 |
不適切な食生活 | バランスの良い食事 |
動脈硬化を防ぐには何に気をつければいいですか?
脂質異常症・高血圧・糖尿病などの動脈硬化予防をしっかりすることと
食事と運動、そして定期的な検査を心がけることが大切だと考えています
生活習慣の改善と定期的な検査により、動脈硬化の予防をすることができます。
関節リウマチと動脈硬化
関節リウマチがある場合、動脈硬化のリスクが増加することが分かっています。
持続的な炎症による血管への影響とに注意が必要です。
リウマチによる炎症が動脈硬化を促進する
関節リウマチによる慢性的な炎症が血管内皮を傷つけ、動脈硬化を進行させやすい状態を作ります。
TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインが、血管壁の脂質蓄積を促進することが研究で示されています。
リウマチの痛みは良くなってきましたが、血管の健康も大事だと分かって不安です。
最新の研究では、関節リウマチの心血管疾患リスクは約2倍に増加することも報告されています。
生活習慣の改善と適切な薬物治療を組み合わせることで、リスクを低減できます。
リウマチ治療薬が脂質に影響を与える可能性
TNF-α阻害薬やIL-6阻害薬(特にIL-6阻害薬)では、脂質が上がりやすくなることがあります。
薬の影響も気になりますが、どうしたらいいですか
このような変化に対しては、必要に応じてスタチンなどの高脂血症治療薬を併用することで、脂質異常を改善できます。
悪玉コレステロールが酸化しやすい状態
関節リウマチの炎症により、悪玉コレステロールが酸化されやすい状態になっています。
酸化されたコレステロールは血管壁に付着しやすく、動脈硬化を促進します。
特に以下の患者さんは注意が必要です。
リスク因子 | 重要度 |
---|---|
高齢 | ◎ |
喫煙 | ◎ |
高血圧 | ◯ |
糖尿病 | ◯ |
肥満 | ◯ |
定期的な検査で脂質値をチェックし、生活習慣の改善と適切な治療を続けることが大切です。
特に喫煙は動脈硬化のリスクを大きく高めるため、禁煙が推奨されます。関節リウマチの病勢にも悪影響のため、禁煙を強く推奨します。
脂質異常症と動脈硬化
脂質異常症と動脈硬化は密接な関係があり、適切な管理が必要です。
脂質異常がどの程度深刻なのか心配で不安です
コレステロールの種類と役割
コレステロールには良いものと悪いものがあり、それぞれが体内で重要な働きをしています。
名称 | 役割 | 正常値 |
---|---|---|
HDLコレステロール(善玉) | 血管壁から余分なコレステロールを除去 少ないと異常値 | 40mg/dL以上 |
LDLコレステロール(悪玉) | 血管壁にコレステロールを蓄積 高いと異常値 | 140mg/dL未満 |
総コレステロール | 体内の総コレステロール量 | 220mg/dL未満 |
特にLDLコレステロールが高い場合は、下げるようにしましょう。
中性脂肪とは
中性脂肪は、体のエネルギー源として重要な役割を果たす脂質の一種です。
項目 | 特徴 |
---|---|
正常値 | 150mg/dL未満 |
増加要因 | 過食、運動不足、飲酒 |
減少方法 | 食事制限、運動習慣、節酒 |
中性脂肪高値はLDLほどの影響ではないですが、血管壁に悪影響を及ぼすので注意が必要です。食事の影響を受けやすいため、数値の経過をみながら総合的に判断します
動脈硬化の原因
動脈硬化は複数の要因が関係する病態で、慢性的な炎症が促進因子となります。
要因 | 影響 |
---|---|
高LDLコレステロール | 血管壁への蓄積 |
低HDLコレステロール | コレステロール除去能力の低下 |
高血圧 | 血管壁への負担増加 |
喫煙 | 血管内皮の損傷 |
糖尿病 | 血管の機能障害 |
健康な生活習慣を心がけ、定期的な検査で早期発見・早期治療を行うことが大切です。
閉経や女性ホルモンのバランスと脂質異常症
関節リウマチは女性が多く、関節リウマチを発症しやすい年代の方は、女性ホルモンのバランスの関係で脂質異常症を合併していることが多いです。そういった影響の場合、頑張って食事運動療法を行っても数値が改善しない場合もあり、症状がないといって放置しないようにしましょう。
合併症を防ぐには
スタチンと呼ばれる脂質異常症の薬を併用することで、コレステロールの上昇を抑制でき、動脈硬化予防ができることがしられています。
定期的な検査の必要性
3つの病気の状態を把握するために、定期的な血液検査が重要です。
以下の3つの指標を継続的にモニタリングすることで、早期発見・早期対応が可能になります。
検査項目 | 確認ポイント | 頻度 |
---|---|---|
炎症マーカー | 関節リウマチの活動性 | 1-3ヶ月 |
脂質プロファイル | コレステロールや中性脂肪の値 | 3-6ヶ月 |
動脈硬化指数 | 血管の状態 | 6-12ヶ月 |
定期的な検査と適切な治療により、これらの病気のリスクを低減させることができます。
健康な生活を送るために
リウマチ、脂質異常症、動脈硬化の合併を予防するため、総合的な健康管理が必要です。
食生活の改善
食事内容を見直すことで、炎症と脂質異常症のリスクを軽減できます。
項目 | 推奨される食品 | 避けるべき食品 |
---|---|---|
魚介類 | 青魚(サバ、サンマ、イワシなど) | フライなどの揚げ物 |
油 | オリーブオイル、えごま油 | 動物性脂肪、バター |
野菜 | 緑黄色野菜、海藻類 | 過度な塩分を含む漬物 |
果物 | 柑橘類、ベリー類 | 砂糖を多く含む果物加工品 |
食事の改善は大切だけど、何から始めればいいのかしら
関節リウマチでは、地中海食のような食事が推奨されています。良質な脂質、魚類の接種などはリウマチにも脂質異常症にも有効です。
運動習慣の定着
適度な運動は、関節の柔軟性を保ち、脂質代謝を改善します。
運動の種類 | 頻度 | 効果 |
---|---|---|
ウォーキング | 毎日30分 | 有酸素運動効果 |
ストレッチ | 朝夕各10分 | 関節柔軟性向上 |
水中運動 | 週2-3回 | 関節負担軽減 |
2022年の海外のガイドラインでは、運動療法の推奨が上がってきています。昔はリウマチがあると安静のイメージでしたが、運動の推奨度がどんどん高まってきているため、運動集患を作ることを私もおすすめします。
禁煙のすすめ
喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を進行させる原因となります。リウマチの疾患活動性(病勢)も悪くなるため、禁煙がとても大事です。
禁煙外来の受診や禁煙補助薬の使用なども検討しましょう。
ストレスを溜めない工夫
過度なストレスは炎症を悪化させ、生活習慣の乱れを招きます。
リラックス方法 | 実践時間 |
---|---|
深呼吸 | 5-10分 |
ヨガ | 15-30分 |
趣味の時間 | 30-60分 |
専門医に相談する重要性
定期的な通院と検査で、早期発見・早期治療が可能となります。
相談内容 | 相談するタイミング |
---|---|
症状の変化 | 気になったとき |
服薬の相談 | 副作用が出たとき |
生活習慣の相談 | 3ヶ月に1回程度 |
医師に相談するのは少し緊張するわ
気軽に相談してください。
当院では、医師がマンツーマンで治療にあたるため、気になることは何でも相談ください。
よくある質問(FAQ)
- 関節リウマチの薬は脂質にどのような影響がありますか?
-
薬の種類によっては、コレステロール値が上がりやすい薬剤もあります。ただし、そのリスクを上回るメリット(疼痛改善や変形予防)がありますので、脂質異常症は薬剤や生活習慣病管理で改善させていくと、トータルで得られるメリットは大きくなります。
- リウマチに加えて、動脈硬化が心配になった場合はどうすればよいですか?
-
スタチンと呼ばれる脂質異常症の薬を併用することで、悪玉コレステロールを効果的に下げることができます。また、禁煙・適度な運動・バランスの良い食事など、生活習慣の改善も重要です。
- どのくらいの頻度で検査を受ければよいですか?
-
炎症マーカーや血球数や肝機能と合わせてコレステロール値も測定できるため、1-3ヶ月ごと、動脈硬化の状態は6-12ヶ月程度の検査が推奨されます。定期的な検査により、早期発見・早期対応が可能になります。
- リウマチ患者の心血管疾患リスクは高まりますか?
-
関節リウマチ患者の心血管疾患リスクは、健常者の約2倍に増加します。これは慢性的な炎症が血管内皮を傷つけ、動脈硬化を促進するためです。
- 脂質異常症の基準値を教えてください
-
LDLコレステロールの正常値は60-139mg/dL(リスクによって治療基準値は変わります)、HDLコレステロールは40mg/dL以上、中性脂肪は150mg/dL以下(食後は175mg/dL以下)が基準値です。これらの値を参考に、定期的な検査で脂質値をモニタリングすることが大切です。
- 動脈硬化のリスク因子には何がありますか?
-
高齢、喫煙、高血圧、糖尿病、肥満が主なリスク因子です。特に喫煙は動脈硬化を大きく促進するため、禁煙が強く推奨されます。また、適切な血圧管理と体重管理も重要です。
参考文献
Cacciapaglia, F., Anelli, M. G., Rinaldi, V., et al. (2016). Effects of anti-TNF-α treatment on lipid profile in rheumatic diseases. Arthritis Research & Therapy, 18(1), 1-10. DOI: 10.1186/s13075-016-1148-1
Romas, E., Vanags, D., & Tedla, N. (2023). Lipid metabolism and rheumatoid arthritis: A critical review of emerging evidence. Frontiers in Immunology, 14, 1190607. DOI: 10.3389/fimmu.2023.1190607
Choy, E. H., Sattar, N., & McInnes, I. B. (2014). Lipid profiles in patients with rheumatoid arthritis: Mechanisms and implications for cardiovascular risk. Annals of the Rheumatic Diseases, 73(7), 1281-1286. DOI: 10.1136/annrheumdis-2013-204890