
血液検査の結果を定期的にもらうけど、数値の意味がよく分からないです
関節リウマチの血液検査はなぜ必要か
関節リウマチの初期診断や病状の進行度を把握するために、血液検査は不可欠です。また、血液検査の項目では、肝臓や腎臓や血球数の検査を行います。これらは副作用の評価や、他の持病が出てきていないかを確認します。
検査の目的 | 内容 |
---|---|
診断確定 | リウマチ因子や抗CCP抗体の有無を確認 |
炎症評価 | CRPやESRで炎症の程度を測定 |
定期血液検査 | 薬物療法の効果や副作用をモニタリング |
合併症予防 | 肝臓や腎臓や貧血の状態を確認 |

関節リウマチ治療を安全に実施するために、必要な検査です。
血液検査で分かること
血液検査では、関節リウマチの活動性や全身状態を詳しく評価することができます。
項目 | 意味 | 数値の解釈 |
---|---|---|
CRP | 炎症の程度 | 0.3mg/dL以上で炎症あり |
リウマチ因子 | 自己免疫疾患の有無 | 陽性でリウマチ診断の参考に |
抗CCP抗体 | リウマチに特異的な自己抗体 | 陽性で早期診断に有用 |
貧血関連 | 全身状態 | 炎症が持続するときに基準値を下回ることあり |

このあたりの検査は、リウマチの診断に必要なんですね。
血液検査の種類と目的
関節リウマチの血液検査は複数の項目を組み合わせて総合的に評価します。
検査カテゴリー | 代表的な項目 | 主な目的 |
---|---|---|
一般検査 | 血算、生化学 | 全身状態の把握 |
炎症マーカー | CRP、血沈 | 疾患活動性の評価 |
自己抗体 | RF、抗CCP抗体 | 診断の確定 |
肝腎機能 | AST、ALT、Cr | 薬剤の副作用確認 |

定期的な血液検査により、病状の変化を早期に発見できます
血液検査の数値を詳しく理解しよう
血液検査の数値を正しく理解することは、関節リウマチの治療において非常に重要です。
炎症マーカーの見方
炎症マーカーは、関節リウマチの活動性を評価する重要な指標です。
項目 | 基準値 | 意味 |
---|---|---|
CRP | 0.000~0.140mg/dL | 炎症の程度を反映 疾患活動性(SDAIやDAS28に使用) |
赤沈 | 性別・年齢で基準値は変わる | 炎症の持続状態を反映 |
フェリチン | 25~250ng/mL | 貯蔵鉄で貧血のときの鉄不足を反映するが、慢性的な炎症があると上がる場合もあり |
血球数(白血球、赤血球、血小板)の基準値と意味
血球数は、貧血や感染症の有無を評価する重要な指標です。
項目 | 基準値 | 意味 |
---|---|---|
白血球数 | 3900~9800/μL | 免疫系の細胞数の状態 |
赤血球数 | 427~570×10^4/μL | 貧血の有無 |
血小板数 | 13.1~36.2×10^4/μL | 止血に関わる成分の傾向 |

白血球の数値が低い場合は、どう考えたらよいですか?

抗リウマチ薬の種類によっては、白血球数が少なくなる場合があります。その場合、絶対数とって数値を計算します。(好中球数やリンパ球数)
軽度の低下であれば、薬の減薬や調整で改善することも多いです。
例えばメトトレキサート内服中であれば、メトトレキサートの量や飲み方の調整・フォリアミン(葉酸)の量の調整で改善させられる場合があります。
また、血液の病気の早期発見にも繋がります。
白血球数(WBC)とは
白血球数は免疫系の働きを反映する重要な指標です。
リンパ球数とは
リンパ球は獲得免疫を担う細胞で、18~59%が基準値です。リンパ球の絶対数が 1,000/μL以下の場合、「リンパ球減少」と考えます。使用する薬剤によっては、ST合剤(バクトラミン)などを併用する場合があります。
好中球数とは
好中球は急性炎症時に増加し、40~74%が基準値です。好中球絶対数を計算し(白血球数✕好中球割合)が1,000~1,500/μLを軽度、500~1,000/μLを中等度、<500/μLを重度(高度)の好中球減少といいます。
好酸球数とは
好酸球はアレルギー反応で増加し、0~6%が基準値です。
Hb数とは
ヘモグロビン値は貧血の程度を示し、13.5~17.6g/dLが基準値です。
RBC数とは
赤血球数は酸素運搬能力を示し、427~570×10^4/μLが基準値です。
MCVとは
平均赤血球容積は82.7~101.6fLが基準値です。MCVが80以下の場合、多くは鉄欠乏性貧血といい、鉄分が不足している貧血の場合が多いです。関節リウマチ患者様は女性が多く、女性の場合鉄欠乏を併発している方が多いので、鉄分の補充を検討します。MCVが100を超えている場合は、メトトレキサートと葉酸の量のバランス調整を検討します。絶対的な基準はないのですが、経過をみて105を超えてくるようだと、メトトレキサートと葉酸の量のバランスを開始することが多いです。

肝機能の指標(肝酵素)
肝機能の検査値は薬剤の副作用を監視するために重要です。
項目 | 基準値 | 意味 | 評価 |
---|---|---|---|
AST | 10~40U/L | 肝細胞障害 | ◯ |
ALT | 5~40U/L | 肝細胞障害 | ◯ |
γGTP | 0~70U/L | 胆道障害 | ◯ |
ALP | 38~113U/L | 胆道系障害 | ◯ |
T-bil | 0.2~1.2mg/dL | 黄疸 | ◯ |
定期的な肝機能検査により、薬剤の副作用を早期に発見できます。
脂肪肝やアルコール性肝障害などの合併も多いです。
肝障害がある場合は、運動、摂取、体重コントロール、薬剤の見直しなどを実施し、数値を改善させていく必要があります。
腎機能の指標
腎機能は薬剤の投与量調整に重要です。
項目 | 基準値 | 意味 |
---|---|---|
クレアチニン | 0.61~1.04mg/dL | 腎機能 |
eGFR | 90mL/min以上 | 腎機能 |
BUN | 8.0~22.0mg/dL | 腎機能 |
NSAIDsや一部の薬剤や膠原病も腎障害を起こすこともあるため、数値の変化があれば原因を考えます。
自己抗体と特殊検査
自己抗体検査は診断と予後予測に重要です。
検査項目 | 意義 |
---|---|
リウマチ因子 | 悪化因子 |
抗CCP抗体 | 悪化因子 |
MMP-3 | 骨破壊予測 |
リウマチ因子は、最近では治療抵抗性リウマチの指標の一つとして使われることも増えてきました。
リウマチ因子が特に高力価の場合:
・従来型DMARDsへの反応が不良になりやすい
・生物学的製剤の効果も減弱する可能性
・結果として治療抵抗性リウマチの状態に移行するリスクが上昇すると言われています。
そのため、診断のときだけではなく、治療経過中に測定することも多いです。
MMP-3は伝統的に日本では測定することが多い、関節リウマチ治療のマーカーの一つで、
上昇する場合
・活動性関節リウマチの急性期
・関節破壊の進行時
・疾患の再燃時
・治療効果不十分時
などに上昇することが多く、適切な治療介入後や改善後や寛解期は低下していることが多く、参考になります。
基準値と異常値の読み方
関節リウマチの経過や治療効果を正確に評価するためには、血液検査の数値の読み方を理解する必要があります。
年齢別の正常範囲
血液検査の基準値は、年齢によって異なる値を示すことがあります。
検査項目 | 若年者(20-39歳) | 中年者(40-59歳) | 高齢者(60歳以上) |
---|---|---|---|
白血球数 | 3900-9800/μL | 3500-9000/μL | 3000-8500/μL |
ヘモグロビン | 13-17g/dL | 12-16g/dL | 11-15g/dL |
血小板数 | 15-35万/μL | 14-34万/μL | 13-33万/μL |

年齢とともに基準値が少しずつ変化することを知っておくと、検査結果の解釈がより正確になると考えています
検査値の変動要因
血液検査の値は、様々な要因で変動することがあります。
変動要因 | 影響を受けやすい検査項目 |
---|---|
食事 | 血糖値、中性脂肪 |
運動 | CK、乳酸値 |
ストレス | 白血球数、血糖値 |
月経 | 鉄、ヘモグロビン |
薬剤 | 肝機能、腎機能 |

検査前の生活習慣で数値が変わるなんて知りませんでした
経過観察のポイント
治療効果を評価する際は、複数の検査項目を組み合わせて判断します。
観察項目 | 重要な検査値 | 評価のポイント |
---|---|---|
炎症状態 | CRP、赤沈 | 経時的な変化 |
臓器障害 | 肝機能、腎機能 | 急激な変動 |
貧血 | ヘモグロビン、鉄 | 徐々な変化 |
免疫状態 | リンパ球数、抗体価 | 定期的な確認 |
緊急性の判断基準
一部の検査値は、緊急対応が必要な状態を示すことがあります。
検査値 | 緊急性が高い範囲 | 対応方法 |
---|---|---|
白血球数 | 1000/μL以下 | 即日受診 |
血小板数 | 3万/μL以下 | 出血に注意 |
CRP | 15mg/dL以上 | 感染症を疑う |
クレアチニン | 通常の2倍以上 | 腎機能悪化 |

緊急性の判断には、複数の検査値と症状を総合的に評価することが重要です。