関節リウマチで気だるい感じは出ることがありますか?

1. 関節リウマチとは?

関節リウマチは、自分の免疫の異常によって関節に炎症が起こる病気です。関節の内部で炎症が続くと軟骨や骨が壊され、関節の機能が失われて放置すると関節が変形する疾患ですが、関節以外の全身症状も現れることがあります。例えば微熱が続いたり、疲れやすさや倦怠感(だるさ)、食欲不振などが生じることがあります​。

これらは関節の炎症が全身に影響するために起こる症状です。発症の原因は明確には解明されていませんが、自己免疫疾患の一種であり、何らかの要因で免疫の働きに異常が生じ、自分自身の関節組織を異物とみなして攻撃してしまうことで炎症が起こると考えられています​。

関節リウマチ患者さんの約89%が疲労を経験し、そのうち40%は重度で持続的な疲労に悩まされていたとの報告もあります​。

本来、免疫は細菌やウイルスを排除する仕組みですが、関節リウマチではその矛先が誤って自分の関節に向かい、関節の痛みや腫れとして現れています。その一環として、全身の気だるさが出ることがあり、治療によって改善することが多いとされていますが、一部の薬剤ではより改善しやすいなどの治療反応性の違いもあり、治療内容により異なるため、気だるさが気になる場合はリウマチ専門医にご相談ください。

目次

関節リウマチによる気だるさ(倦怠感)の原因とメカニズム

関節リウマチの患者さんが訴える気だるさ(倦怠感や極度の疲労感)は、単なる疲れではなく十分休んでも抜けない強い疲労を指します​

この倦怠感の背後には、関節リウマチに伴う様々な要因が関与しています。

  • 慢性的な炎症反応: 関節リウマチでは体内で炎症を引き起こすサイトカイン(免疫物質)が多く放出されます。身体は持続する炎症に対処しようとしてストレス状態になり、それが慢性的な疲労感の一因となります。炎症が強い活動期ほど倦怠感が増すことがあります。そのため、炎症が持続していることが倦怠感の原因の場合は、炎症を抗リウマチ薬の調整にて、しっかりコントロールする必要があります
  • 慢性的な痛みと睡眠障害: 関節の痛みが長期間続くと、それ自体が体力を消耗させます。痛みのせいで夜間によく眠れない(何度も目が覚める、寝付きにくい)ことも多く、睡眠不足が疲労感を悪化させます。さらに痛み⇔疲労の悪循環も生じます。疲労が強いと痛みに対処する力も落ち、痛みをより強く感じてしまうため、疲労がまた痛みを悪化させるというサイクルに陥りがちです。不眠や不安感は関節リウマチ患者様では出現しやすく、早めの対処が大切です。
  • 貧血: リウマチでは炎症の影響で赤血球が十分作られない慢性疾患性貧血を合併しやすく、全身に酸素を運ぶ力が低下するため疲れやすくなります。実際、関節リウマチ患者さんの約2/3が何らかの貧血を持つとも言われます​。
  • 薬剤の副作用: リウマチの治療に使われる薬の中には、眠気やだるさを引き起こすものもあります。例えばメトトレキサートやアザチオプリンなど一部の抗リウマチ薬、鎮痛薬の一部には倦怠感をもたらす副作用があります。またステロイド(副腎皮質ステロイド)は不眠を招くことがあり、その結果日中の眠気やだるさにつながる場合があります。減らす方法や、倦怠感がでにくい処方に調整することが可能です。
  • そのほかの要因: 関節リウマチに伴う抑うつ状態や精神的ストレスも倦怠感を増大させます。活動量の低下による筋力低下(廃用症候群)も疲労しやすい体質につながります。さらに肥満傾向にある場合は身体を動かす負担が大きく疲れやすさの要因になりますし、逆に栄養不足(ビタミンやタンパク質不足)でも慢性的な疲労を感じやすくなります。当院院長は、公認心理師の資格も持ち、そういった症状の早期発見に努めています

こうした要因が重なり合い、関節リウマチでは強い倦怠感が生じます。気だるさは日常生活に大きな支障を及ぼします。単なる寝不足の疲れと違い、関節リウマチ患者の倦怠感は十分な休息や睡眠をとっても解消しにくく、しばしば日中の活動性を著しく低下させます​

家事や仕事など普段できていたことが困難に感じられ、集中力の低下や意欲の減退につながることもあります。実際、イギリスの調査では関節リウマチ患者さんの約89%が疲労を経験し、そのうち40%は重度で持続的な疲労に悩まされていたとの報告もあります​。

このように倦怠感は関節リウマチの患者さんのQOL(生活の質)を下げる大きな要因となっていますが、対処方法もたくさんあるため、悩みのある方は相談ください。

関節リウマチによる気だるさの対処方法

関節リウマチによる倦怠感と上手に付き合うには、薬の調整、生活習慣の工夫ストレス管理、そして必要に応じた医療的サポートが重要です。以下に具体的な対処法を挙げます。

セルフケアから考える生活習慣の改善

  • 十分な休息と睡眠: 関節リウマチは関節だけでなく全身が慢性的に消耗する病気です。そのため全身の休息が必要です。睡眠不足は症状悪化の原因になるため、夜更かしを避けて十分な睡眠時間を確保しましょう。疲れを感じたら我慢せず途中で休憩や昼寝を取り、体力を回復させる習慣をつけます。特に体がだるいときや関節痛が強いときは無理をしないことが大切です。
  • 適度な運動: 安静にしすぎないこともポイントです。痛みがあると動きたくなくなりますが、全く動かさないと筋力が低下し関節を支えられなくなって余計に疲れやすくなります。主治医と相談しながら、自分のできる範囲でストレッチや軽い有酸素運動(散歩や水中ウォーキングなど)を取り入れましょう。運動後に1時間ほど休めば日常活動に支障がない程度の強度が目安です。定期的な運動は倦怠感の軽減に役立つことが科学的にも示されています。実際、関節リウマチ患者を対象とした複数の研究をまとめたレビューでは、定期的な運動習慣により疲労が軽減し、関節の機能や筋力が改善したことが報告されています。その日の体調に合わせて無理のない範囲で体を動かし、筋力と持久力を維持することが疲れにくい体作りにつながります。
  • バランスの良い食事: 栄養面からもサポートしましょう。関節リウマチになると炎症や運動不足の影響で筋肉量が減りやすく、骨粗しょう症や貧血のリスクも高まります。タンパク質やビタミン、鉄分などをしっかり摂取し、筋肉や血液を作る材料を十分に補給することが大切です。特に貧血がある場合は鉄分(レバー、赤身の肉、ほうれん草、貝類など)を意識して摂りましょう。ビタミンCと一緒に摂ると鉄の吸収が良くなります。また水分補給も忘れずに行いましょう。栄養バランスの良い食事は体力の維持だけでなく、免疫力向上や炎症緩和にもつながります。疲労がひどくて料理が大変なときは、市販の総菜や冷凍食品なども上手に利用して、無理せず食事を摂る工夫も必要です​。

ストレス管理

ストレスは万病のもとであり、関節リウマチの症状悪化にもつながります​。

心身のストレスを溜め込まないことが倦怠感対策でもあります。趣味の時間やリラックスできる時間を意識的に作り、気分転換を図りましょう。「笑い」はストレスホルモンを減らし免疫バランスを整える効果があるとされ、リウマチを悪化させる物質(サイトカイン)の減少にもつながると報告されています​

好きなテレビや本で笑ったり、ペットと触れ合ったりして心をほぐすことも大切です。また必要な時には遠慮なく泣いて涙を流すこともストレス解消になります​

自分なりのリラックス法(深呼吸、瞑想、音楽鑑賞、お風呂など)を見つけて日常に取り入れてください。

日々の生活では計画的に活動と休息を配分することも有効です。疲れやすい方は家事や仕事を細切れにして合間に小休止を挟む、優先順位をつけて無理に全部こなそうとしないといったペーシングも重要です。自分の疲労度を記録することで、どの程度活動すると疲れるか傾向を掴みやすくなり、計画に活かせます​。

当院では、『関節リウマチ患者様のための痛みとこころケア』という冊子をお渡しし、セルフケアの指導をしております

医療的なサポート

倦怠感が強い場合はリウマチ専門医に相談しましょう。医師は必要に応じて以下のような対応を行います。

  • 薬物療法の見直し: 関節リウマチそのものの活動性が高ければ、抗リウマチ薬や生物学的製剤(バイオ医薬品)などで病気のコントロールを強化します。病気の勢いを抑えることが倦怠感軽減への根本対策になるためです​。
  • 実際、治療の進歩によりリウマチの炎症を抑え込むことで、以前よりも全身の倦怠感が軽くなったとの声もあります。例えば、生物学的製剤のトシリズマブ(IL-6阻害薬)の治療では長期的に疲労感が有意に減少したとの報告があります。一方で薬の副作用でだるさが出ている場合には薬剤の変更や減量を検討します。貧血や甲状腺機能異常など他の医学的原因が隠れていれば、その治療(例:鉄剤の投与や甲状腺ホルモン補充)を行います。
  • カウンセリング: 疲労感にはメンタルの落ち込みが影響することもあるため、必要に応じてカウンセリングや抗うつ薬の処方など心のケアを受けることも検討されます。認知行動療法(CBT)は痛みや不眠への対処スキルを身につける療法ですが、研究では関節リウマチ患者の疲労にも一定の効果があったと報告されています。専門家に気持ちを相談することで精神的な負担が軽くなれば、体のだるさも和らぎやすくなります。当院は院長が公認心理師の国家資格も持っており、カウンセリングにも力を入れています。

関節リウマチの治療とともに気だるさが改善することを知ってください

関節リウマチの倦怠感は、適切な治療によって徐々に改善が期待できる症状です。まず第一に、リウマチそのものをしっかり治療して炎症を抑えることが重要です。メトトレキサートなどの従来型抗リウマチ薬(DMARD)や、抗TNFα抗体や抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤の登場により、関節リウマチの炎症コントロールは飛躍的に向上しました。炎症が鎮まれば痛みが軽減し、夜間ぐっすり眠れるようになるなど間接的な効果を通じて倦怠感も和らいでいきます。​

発症早期から適切な治療を行い寛解(症状がほとんどない状態)を達成できた患者さんでは、将来的な疲労のリスクが低下するとの報告があります​

一部では、関節リウマチの炎症が落ち着いて関節症状が良くなっても、倦怠感だけは遅れて残るケースもあります。疲労感の改善には炎症コントロール後も時間がかかることがあり、治療開始から数ヶ月~1年ほど経ってようやく疲れにくさを実感できる場合もあります​が、それでも、焦らず主治医と相談しながら治療を続けましょう。

また、治療によって関節の状態が改善したらリハビリテーションや運動療法を積極的に取り入れることで、一層倦怠感の軽減が期待できます。前述のように運動習慣は疲労の悪循環を断ち切り、体力と気力を向上させます。生活習慣の見直し(睡眠・栄養・ストレス管理)も治療効果を高め、相乗的に倦怠感を減らす助けとなります​。

つまり、薬物治療+生活改善の両輪で取り組むことが、気だるさ解消への近道です。

患者さん自身ができるセルフケアも、治療と並行して続けていきましょう。規則正しい生活リズムを維持しつつ、疲れを感じたら適宜休む、自分のペースでできる運動を続ける、といったセルフケアは長期的に倦怠感を軽くします。調子が良い日でも張り切りすぎず翌日に疲れを残さないよう気をつけるなど、体調管理のコツを掴んでいくと良いでしょう​​。

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