従来型抗リウマチ薬完全ガイド(従来型 DMARD=csDMARDs)|メトトレキサートやサラゾスルファピリジンや各薬剤の特徴・用量・副作用

関節リウマチ初期治療の中心となる csDMARDs(conventional synthetic DMARDs) を網羅的に解説します。

監修:高杉 康司(リウマチ専門医)
最終更新:2025-05-01


従来型抗リウマチ薬(csDMARDs) とは?位置づけと作用機序

従来型 DMARD は「経口で価格が安く実績が長い のが最大の利点。メトトレキサートを軸に複数薬を組み合わせ、T2T(Treat-to-Target)で寛解を目指します。

  • 代表薬:MTX, サラゾスルファピリジン, イグラチモド, タクロリムス など
  • 生物学的製剤・JAK 阻害薬登場後も first-line として推奨
  • 作用機序は抗葉酸代謝(MTX)・ピリミジン合成阻害(LEF)など多様で、それぞれ異なる薬剤

関節リウマチの診断がついたばあい、費用対効果を考え、まず従来型抗リウマチ薬で寛解を目指します。

メトトレキサートが使用できる場合はメトトレキサートから開始することが多く、メトトレキサートが使用困難な場合はサラゾスルファピリジン・ブシラミン・タクロリムス・レフルノミドで使用する場合が多いです。日本ではレフルノミド(アラバ)の使用頻度は多くありませんが、当院では全ての薬剤を処方可能です。

csDMARDs、従来型抗リウマチ薬を用いた関節リウマチ初期治療のアルゴリズム

主要な従来型抗リウマチ薬(csDMARD) 一覧と用量早見表

国内添付文書+日本リウマチ学会ガイドライン に基づき、初期投与量と上限量をまとめました。

薬剤初期量/週上限量/週主要副作用解説リンク
メトトレキサート6-9 mg14–16 mg吐き気・肝酵素↑・口内炎メトトレキサートの解説はこちら
サラゾスルファピリジン500 mg ×21 g 消化器症状・皮疹サラゾスルファピリジンの解説はこちら
イグラチモド25 mg/日50 mg/日肝酵素↑・味覚障害イグラチモドの解説はこちら
タクロリムス1 mg/日3 mg/日腎機能↓・高血糖タクロリムスの解説はこちら
ブシラミン50 mg ×2100 mg ×2タンパク尿・皮疹ブシラミンの解説(作成中)

葉酸併用や副作用対策は各薬ページで詳細解説しています。

ブシラミンは300mgが添付文章量ですが、300mgだと蛋白尿が出やすいのではという懸念が伝統的にあり、200mgに留めることが多いです。


従来型抗リウマチ薬の使い分けの実際(臨床フローチャート)

MTX を土台に、忍容性・併存症・妊孕性でセカンドラインを選択 するのが王道です。

  1. MTX 6→16 mg/週(葉酸併用)
  2. MTX 不耐/併存症あり → イグラチモド or サラゾスルファピリジン
  3. 腎機能低下/糖尿病合併 → タクロリムスは注意
  4. 疾患活動性の持続・寛解まで到達困難であれば bDMARD/JAK 併用

従来型抗リウマチ薬の副作用モニタリングと対策

肝機能・腎機能・血球 を 4–8 週ごとにチェックすることが安全使用の鍵です。

検査項目推奨頻度異常時対策
AST/ALT4–8 週2×上昇→減量/休薬
クレアチニン・eGFR3 か月eGFR <50 → 用量減量や薬剤変更
CBC4–8 週白血球 <3,000→休薬
尿検査(タンパク尿)3 か月1+ 持続→ブシラミン中止

従来型抗リウマチ薬と妊娠・授乳・ワクチン

MTX・LEF は胎児毒性があるため中止必須。サラゾスルファピリジンは妊娠中も比較的安全に使用可能。

  • 妊娠計画:メトトレキサート中止後 3 か月/レフルノミド 洗浄後 11 日
  • 授乳:サラゾスルファピリジン 可、MTX 不可
  • ワクチン:不活化(肺炎球菌・インフル・COVID・シングリックス)は原則休薬不要(メトトレキサートについては休薬するメリットを調べた研究結果もある)

従来型抗リウマチ薬csDMARD と生物学的製剤bDMARD/JAK阻害薬 の併用戦略

メトトレキサートはアンカードラッグとも呼ばれ、どの薬剤とも相乗効果がある。

メトトレキサート + 生物学的製剤bDMARD が寛解率を 20 % 以上押し上げる。SSZ + TNF 阻害薬の併用も依然有用です。


従来型抗リウマチ薬のFAQ

csDMARD を併用すると副作用は増えますか?

通常は重複毒性の少ない組み合わせ(例:MTX+SSZ)を選ぶため有害事象は約5 % 増に留まります。より安全に使用するために、肝腎機能のモニタリングは必須です。

MTX を減らすタイミングは?

寛解が3~6 か月持続したら2 mg/4 週ペースで段階的に減量し、症状がぶり返せばすぐにひとつ前の用量に戻すことが多いです。

副作用が怖いので漢方だけで治療できますか?

根拠となる大規模試験がなく単独治療で寛解を維持するデータはありません。補助療法として活用する場合でも csDMARD が治療の軸となります。

メトトレキサートで血球減少が出たらすぐ別の薬や注射薬に切り替える?

まずは葉酸/投与量調整で回復を待ちます。重度の場合は中止しロイコボリンレスキューをする場合もあります。bDMARD/JAK へのスイッチを検討します。

費用が心配です。従来型抗リウマチ薬csDMARD の月額自己負担は?

従来型抗リウマチ薬は薬価が安めな薬剤が多いです。
メトトレキサート 8 mg でも自己負担は約月 1,000 円前後です。(調剤薬局での調剤基本料、薬剤服用歴管理指導料、加算等加味されるため約という表現としています)

Q
A

8. 参考文献

  1. 日本リウマチ学会 RA 診療ガイドライン 2022
  2. EULAR csDMARD Combination Strategy Update 2024 (Ann Rheum Dis 2024)
  3. Hoes JN, et al. Folate meta-analysis. Ann Rheum Dis 2018;77:97-103