・うつ病
・不安神経症
関節リウマチでは、うつ病の合併が多いと言われています。有病率は14％～48％と報告により異なりますが、関節リウマチの治療を考える上で、うつ病が合併しやすいことを認識する必要があります。一般人口におけるうつ病の発症は約6%とされているため、2-3倍起こりやすいとされています。
関節の痛みが続くことや機能障害、寛解までの期間の長さは、うつ病の発症を増やす要素とされます。
また、うつ病があると関節リウマチの病勢の改善が遅れることがあります。うつ病は、疾患活動性、関節炎関連の合併症、疼痛のレベル、寛解の可能性、QOL、死亡率など、多くの結果に影響を与えるとされています。
関節リウマチの炎症性サイトカインであるTNF（腫瘍壊死因子）、IL-6や、IL-18などの炎症性サイトカインは、関節リウマチや膠原病の病態だけでなく、うつ病にも関与しているとされます。うつ病患者の末梢血では、対照群と比較して関節リウマチと同じ炎症性サイトカイン（IL6、IL1β、TNFα）が高値を示すという研究結果もあります。
RAとうつ病：有病率
うつ病は関節リウマチに多く併存する疾患で、ヨーロッパの関節リウマチ患者3920人の研究では、うつ病は最も一般的な併存疾患で、約15％を占めていたとされます。うつ病の有病率に大きなばらつきがあるのは、主にうつ病の診断定義のばらつきや、うつ病を特定するための尺度の違いなどの影響があるとされます。
うつ病は関節リウマチによく見られる併存疾患である一方で、精神科や心療内科や内科診療でのうつ病加療などを受けている人は多くない印象があります。これは、診断が不十分についていなかったり、精神科に相談する心理的な抵抗感も影響しているのではと考えています。
うつ病が関節リウマチに与える影響
うつ病が関節リウマチの経過に悪影響を及ぼすという報告は多数あります。うつ病は疾患活動性を高め、関節炎関連の合併症を悪化させたり、疼痛レベルを強めたり、寛解の可能性の低下させ同様に健康関連のQOLの低下させるという報告が多数あります。
うつ病と関節リウマチは、なぜ一緒に出てくるのか
うつ病と関節リウマチに共通する危険因子
両疾患の危険因子のうち、ハンディキャップ感はうつ病にかかわるリスクファクターですが、関節リウマチ患者さんではハンディキャップ感を感じることが増えると報告されています。また、心的外傷後ストレス障害（PTSD）は両者に共通するものである。この関係は、うつ病で多く報告されているが、最近はRAでも報告されてきています。
関節リウマチにおけるうつ病の頻度の増加は、慢性疾患であることと疼痛や機能障害、疲労感が患者の気分に影響を与えるとされます。これらの心理的な原因に加え、炎症性サイトカインの影響が報告されるようになってきています。
うつ病の治療と関節リウマチの治療がうつ病に与える影響
うつ病の治療で、薬は非常に重要な役割を担っています。大うつ病性障害の治療は進歩していますが、関節リウマチがある場合、最初に提案された治療レジメンに反応せず、うつ病患者の15～30％は薬物療法や心理療法によるどの治療にも満足に反応しないとされています。
うつ病はRAに非常に多く、QOL（生活の質）に大きな影響を与えることから、うつ病の症状があるかどうかスクリーニングや検討を行うことを検討するのが良い治療につながると思っています。うつ病自体は治療が進歩していますし、患者のうつ病に対して認知行動療法とマインドフルネスがよりよい転帰をもたらすという報告もあります。
当院における、うつ病と関節リウマチ治療
当院では、メンタルクリニックなどでも用いられるうつ病や不安神経症の説明冊子を用いて、それらの症状がありそうか尋ね、必要であればメンタルクリニックや精神科外来に相談しています。
関節リウマチ専門外来を行うにあたり、心の状態は大切と考えています。そのため、メンタルクリニックでうつ病や不安神経症や休職から復職への外来経験歴も重ねてきました。また、リウマチ医には珍しいと思いますが「公認心理師（臨床心理士に変わる新しい心理系国家資格）」も取得しています。
こちらは体感値になってしまうのですが、リウマチ外来で心理的な介入を行うようになってから、うつや不安の状態が良いと、寛解率や治療奏功性が良いように感じています。
メンタルクリニックは予約がなかなか取りづらく（1ヶ月待ちのところも多いことや、心理的なハードルがあるなど）、でも相談してみたい、という方がいらっしゃれば、ご相談ください。
参考文献：
