DANBIO(ARD2018)、関節リウマチで癌既往のある方の生物学的製剤と2次癌

癌の既往がある人で、関節リウマチの活動性が高い人が居る場合、どのように治療をするか悩みます。

primary cancerの診断を受けた患者に、生物学的製剤を使用すると、2次癌 (SMN)が上昇するのか?というStudyです。DANBIO registerからです。(死亡率に関しても記載はありますので、そちらに関しては詳しくは原文を参照いただければと思います)

Risk of second malignant neoplasm and mortality in patients with rheumatoid arthritis treated with biological DMARDs: a Danish population-based cohort study

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背景ーACR recommendation2015では

Previous solid organ cancer
PICO H.1. The recommendation is conditional because the evidence is of very low quality (105,108).

上記のように記載はあるものの、エビデンスが十分ではないため暫定的なものである、としています。

参考:2015 American College of Rheumatology Guideline for the Treatment of Rheumatoid
Arthritis

という感じで、今回のDANBIOの論文では、Introductionより

more recent meta-analyses of RCTs and observational studies have reported no overall increased risk of primary cancer in patients with RA treated with TNF-I, but increased risks of specific cancer types have been reported or are still being discussed.

最近のメタ解析や観察研究では、初発癌を増やさないが、特定の癌腫によっては増える報告もあり(議論を要する)とあります。それは、下記の論文が引用されていました。

癌とTNF-α阻害剤の関係(ARD2011)からの先行研究(Systematic reviewとmeta-analysis)

こちらから引用されています。
Malignancies associated with tumour necrosis factor inhibitors in registries and prospective observational studies: a systematic review and meta-analysis.

一般的な癌腫はTNFαを使用していても有意差はない

メラノーマは多かった

初期癌については、上記のようなデータでした。では2次癌(もともと癌があった人があって治療をした人が、再度癌を起こす)は増えるのか?というのが、今回のDANBIO ARD2018の研究です。

これは、癌既往のある人に生物学的製剤はどうだろう?と考える参考の一つになるかと思います。

DANBIOレジストリーとは?

DANBIOは、2000年以降Denmarkで調査されているRAの調査のレジストリーです。関節リウマチの患者数、bDMARDs(生物学的製剤)使用者数、bDMARDs(生物学的製剤)開始時期・終了時期、疾患活動性などを調査しているレジストリーです。

2000-2006年はvoluntaryに調査、以降はcompulsory(強制的に)登録するようになっています。All departments of rheumatology in Denmark report to DANBIOです。

なんと、デンマークでbDMARDs使用者のうち、90%の人が登録されています。Treatment with bDMARDs is tax paid and free of charge for the individual treated patients.

デンマークでは、癌のレジストリーもあり、

All cancer cases in Denmark have been registered in the Danish
Cancer Register (DCR) since 1943

というように、癌が登録されているようです。

研究方法

DANBIO Register 2000-2011, Danish Cancer Registry で

RA患者 (n=15286)のうち、1678人がprimary cancerあり。DANBIOにentry前に見つかった70人は除外して、調査を行っています。

1st primary cancer + non-use with bDMARDs :1176人
1st primary cancer + bDMARDs: 502人
ー1st cancer前にbDMARDs使用:190人 
ー1st cancer後にbDMARDs使用:220人
ー1st cancer前後にbDMARDs使用 :92人

というグループに分け、癌があり生物学的製剤を使用していない群や、癌の前にバイオを使っていて以降中止した群、癌がありその後バイオを開始した群、癌の前後両方とも使用していた群の4つに分けています。

初期癌の後に使用した生物学的製剤は、

The first biological treatments following the primary cancer among the 312 (220+92) patients were: adalimumab (16%), etanercept (21%), infliximab (23%), rituximab (30%), golimumab (2%), certolizumab (1%) and other (7%).

分析 :Cox ハザードモデル 

癌の前後にバイオを使用しても、2次癌は増えていなかった

結果としては、table2にまとめられています。

このように、癌の前後でのバイオで、2次癌の合併は増えていませんでした。

また、気になるところは、癌治療の5年後に始めた人、癌治療の5年以内に始めた人で差があるのか?ということですが、こちらについては、Appendixにまとめられています。

The HR of SMN was 1.25 (95% CI 0.71 to 2.18) among patients initiating bDMARDs more than 5 years after the first cancer diagnosis compared with non-users, while the HR was 0.92 (95% CI 0.40 to 2.10) among patients initiating bDMARDs less than 5 years after the first
cancer diagnosis. During follow-up,

と、このように

1st cancerの後のDMARDs開始時期:
1st cancerの5年以降にDMARDs開始 →HR 1.25(95% CI 0.71-2.18)
1st cancerの5年以内にDMARDs開始 →HR 0.92 (95% CI 0.40-2.10)

ということでした。

In our study, we found no increased risk of an SMN among bDMARD-treated patients with RA compared with non-treated.

ということで、このような内容を朝活で共有しました。

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