関節リウマチの治療中には、定期的な血液検査が必要です。
しかし、それに対し疑問を感じる方も要るかと思います。
このページでは、患者さんと医師との信頼関係を血液検査が損なわないよう、安心して治療を受けていただけるようにと思い、リウマチの定期的な血液検査について解説します。
なぜ毎月血液検査をしなければならないのですか?
- 他の病気では数か月に一度の検査でも良いことが多いのに、なぜ関節リウマチでは毎月の検査が必要なのでしょうか?
関節リウマチの治療薬は、高血圧や花粉症の薬と異なり、副作用に注意しながら使用する薬剤になります。
副作用と言うと、使用自体を躊躇してしまう患者さんもいらっしゃるのですが、
薬の良い面をなるべくしっかり出して(効果的に)、薬の悪い面(副作用)をなるべく減らす
ことが、関節リウマチの良い治療になります。
リウマチの治療薬は、添付文書(お薬の説明書)や診療ガイドラインで、血液検査の間隔について言及があり、そのルールに従って検査を実施することで、より安全に使用することができます。
例えば、こちらはメトトレキサートの診療ガイドラインです。
血液検査の頻度
- MTXを開始した後、または増量後の最初の6か月間は、2〜4週間ごとに定期的な検査が推奨されます。
- 検査項目には以下が含まれます:
- 末梢血検査:白血球分画、MCV(平均赤血球容積)
- 炎症マーカー:赤沈(ESR)、C反応性蛋白(CRP)
- 生化学検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP(アルカリホスファターゼ)、アルブミン、血糖値、クレアチニン(Cr)、尿素窒素(BUN)
- 尿検査:尿一般検査
投与量が決まった後の検査頻度
MTXの投与量が安定し、安全性と有効性が確認された後は、4〜12週ごとに定期的な検査を行います。
このように、検査間隔が診療ガイドラインで推奨されています。
サラゾスルファピリジンなどの、比較的安全性が高いとされる薬剤も
本剤投与開始前には、必ず血液学的検査(白血球分画を含む血液像)、肝機能検査及び腎機能検査を実施すること。投与中はAST、ALTの著しい上昇等を伴う肝炎、肝機能障害、黄疸があらわれることがあり、肝不全、劇症肝炎に至るおそれがあるので、臨床症状を十分観察するとともに、定期的に(投与開始後最初の3ヵ月間は2週間に1回、次の3ヵ月間は4週間に1回、その後は3ヵ月ごとに1回)、血液学的検査及び肝機能検査を行うこと。
と記載されています。(2週間に1回は、現実的には保険上難しいことが多く、1ヶ月としている医療機関が多いです)
血液検査でどんなことが分かるのですか?
- 血液検査によって、病気の進行や治療の効果をどのように判断しているのかが知りたいです。
CRPなどの炎症マーカーは、関節リウマチの疾患活動性評価のために用いられます。
SDAI(Simplified Disease Activity Index)とDAS28(Disease Activity Score using 28 joints)**は、関節リウマチ(RA)の疾患活動性を評価するために使用されるスコアリングシステムです。これらのスコアは、関節の炎症や症状の重症度を評価し、治療の効果や病気の進行具合をモニタリングするために役立ちます。
1. SDAI(Simplified Disease Activity Index)
SDAIは、関節リウマチの活動性を簡単に評価するための指標です。以下の5つの項目を合計してスコアが算出されます:
- 腫脹関節数(28か所):炎症によって腫れている関節の数。
- 圧痛関節数(28か所):圧迫時に痛みを感じる関節の数。
- 患者の全般的な健康状態の自己評価(VAS):患者自身が100mmのビジュアルアナログスケールで評価する自己申告のスコア。
- 医師による全般的な疾患活動性の評価(VAS):医師が100mmのスケールで評価するスコア。
- C反応性蛋白(CRP):血液検査で測定される炎症マーカー。
SDAIのスコア範囲は以下の通りです:
- 寛解:3.3以下
- 低疾患活動性:3.4~11.0
- 中等度疾患活動性:11.1~26.0
- 高疾患活動性:26.1以上
2. DAS28(Disease Activity Score using 28 joints)
DAS28は、28か所の関節の活動性に基づいて関節リウマチの疾患活動性を評価するスコアで、炎症の程度を測定するための標準的な指標として広く使用されています。DAS28では、以下の4つの要素を基にスコアが算出されます:
- 腫脹関節数(28か所)
- 圧痛関節数(28か所)
- 患者の全般的な健康状態の自己評価(VAS)
- 炎症マーカー:赤沈(ESR)またはCRP
DAS28のスコア範囲は以下の通りです:
- 寛解:2.6未満
- 低疾患活動性:2.6~3.2
- 中等度疾患活動性:3.2~5.1
- 高疾患活動性:5.1以上
DAS28は、関節リウマチの症状がどの程度進行しているか、または治療によって改善しているかを評価するために使用されます。
3. CRP(C反応性蛋白)
CRPは、体内で炎症が発生している場合に血中で増加する炎症マーカーです。関節リウマチの活動性をモニタリングするための重要な指標の一つです。炎症が強くなるとCRP値が上昇し、治療によって炎症が抑えられるとCRP値は低下します。CRPの測定は、SDAIやDAS28などのスコアリングシステムにおいて、炎症レベルを定量的に評価するために使用されます。
CRP(C反応性蛋白)は炎症を反映する重要なマーカーであり、関節リウマチ(RA)の疾患活動性の評価に広く使用されます。しかし、CRPが陰性(正常範囲内)でも、関節リウマチの病勢が進行している場合があります。以下では、CRPが陰性でもリウマチの病勢が存在する理由やその背景について解説します。
1. CRPが必ずしもリウマチの病勢を完全に反映しない理由
CRPは炎症が強いときに上昇しますが、関節リウマチにおける全ての炎症が必ずしもCRPに反映されるわけではありません。関節リウマチの炎症は主に免疫系が関与しており、そのメカニズムが複雑なため、炎症が局所的に起こっていてもCRP値が正常であることがあります。
2. CRP陰性のリウマチ患者
一部のリウマチ患者では、CRPが正常範囲内に収まっているにもかかわらず、関節の腫れや痛み、変形が進行していることがあります。また、IL-6阻害薬(アクテムラ・ケブザラ)などの生物学的製剤やJAK阻害剤は、CRPのような炎症マーカーの反応を抑える効果があります。そのため、治療が不十分であっても、CRPが上昇しないことがあります。この場合、CRPが陰性でも疾患活動性が低下していない可能性があります。CRPが陰性でも、関節リウマチの病勢を評価するためには、他の指標を組み合わせることが重要です。具体的には以下の方法があります。
関節の腫脹や圧痛:関節の状態を直接評価することは、疾患活動性を把握する上で非常に重要です。腫れや痛み、可動域の制限などの症状がある場合、CRP値が低くても病勢が進行している可能性があります。
画像検査:関節超音波検査(関節エコー)やMRIなどの画像検査は、関節の内部で起こっている炎症や損傷を確認するために有用です。これにより、CRP陰性でも関節リウマチの活動性が分かります
検査項目の意味を教えてもらえますか?
- 白血球、肝機能など、具体的に何を調べているのか、そしてそれらがリウマチにどう関係しているのかが理解できていないことがあります。
関節リウマチ(RA)の治療では、定期的な血液検査を行うことで、治療の効果や副作用を確認します。以下に、代表的な検査項目である**WBC(白血球数)、RBC(赤血球数)、Hb(ヘモグロビン)、MCV(平均赤血球容積)、AST、ALT、ALP、LDH、Cre(クレアチニン)**が何を調べているのか、そしてそれらがリウマチとどのように関係しているかを解説します。
1. WBC(White Blood Cell、白血球数)
- 何を調べているか:白血球は、体内の免疫システムに関与する細胞で、感染や炎症に反応して増加します。
- リウマチとの関係:リウマチは自己免疫疾患であり、免疫系が異常をきたしているため、WBCの値は重要です。白血球が増加している場合、感染や炎症の兆候を示している可能性があります。一方、免疫抑制剤の使用により白血球数が減少することもあり、感染リスクが高まるため、定期的なモニタリングが必要です。
2. RBC(Red Blood Cell、赤血球数)
- 何を調べているか:赤血球は、酸素を全身に運ぶ役割を持つ血液細胞です。
- リウマチとの関係:リウマチ患者では、慢性的な炎症によって赤血球数が低下することがあり、貧血(慢性疾患に伴う貧血)を引き起こすことがあります。RBCの低下は体力の低下や疲労感につながるため、重要な指標です。
3. Hb(Hemoglobin、ヘモグロビン)
- 何を調べているか:ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質で、酸素を結びつけて全身に運ぶ役割を持っています。
- リウマチとの関係:リウマチ患者では、慢性炎症や薬物治療の影響でヘモグロビンが低下し、貧血を起こすことがあります。ヘモグロビンの値が低いと酸素供給が不十分になり、疲労や息切れの原因となります。
4. MCV(Mean Corpuscular Volume、平均赤血球容積)
- 何を調べているか:MCVは、1個の赤血球の平均的な大きさを示します。
- リウマチとの関係:MCVの値が異常である場合、貧血の種類を判断するのに役立ちます。リウマチの治療薬である**メトトレキサート(MTX)**は、葉酸代謝に影響を与えるため、MCVの上昇を引き起こすことがあります。MCVが上昇している場合、葉酸の欠乏が疑われることがあります。
5. AST(Aspartate Aminotransferase)
- 何を調べているか:ASTは肝臓、心臓、筋肉などの細胞内に存在する酵素で、細胞が損傷すると血液中に放出されます。
- リウマチとの関係:リウマチ治療薬(特にメトトレキサートや生物学的製剤)は、肝臓に負担をかけることがあります。ASTが高い場合、肝臓にダメージがある可能性があるため、肝機能のモニタリングが重要です。
6. ALT(Alanine Aminotransferase)
- 何を調べているか:ALTも肝臓に多く存在する酵素で、肝細胞が損傷すると血中に放出されます。
- リウマチとの関係:ALTはASTと同様に肝臓の健康状態を反映します。リウマチ治療薬が肝臓に影響を与えていないかどうかを確認するために、定期的に測定します。ASTとALTの両方が高値の場合、肝障害のリスクがあります。
7. ALP(Alkaline Phosphatase)
- 何を調べているか:ALPは、肝臓や骨に多く存在する酵素で、肝臓や骨の異常を反映します。
- リウマチとの関係:ALPは、肝臓や胆道の異常が出る場合があり、肝臓の検査の一貫としてALPも測定します。
8. LDH(Lactate Dehydrogenase)
- 何を調べているか:LDHは、細胞がエネルギーを生成する際に関与する酵素で、細胞の損傷や死に関連して血中に上昇します。
- リウマチとの関係:LDHは多くの臓器に存在し、炎症や組織の損傷を反映します。リウマチによる炎症が進行している場合や、治療薬が臓器に影響を与えている場合、LDHの値が高くなることがあります。
9. Cre(Creatinine、クレアチニン)
- 何を調べているか:クレアチニンは筋肉の代謝産物で、腎臓から排泄されます。腎機能を反映する指標として使用されます。
- リウマチとの関係:リウマチ患者では、治療薬が腎臓に負担をかけることがあります。特に、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やメトトレキサートは腎機能に影響を与える可能性があることや、腎臓が悪いと使用しづらい薬剤があることから、クレアチニンの値を定期的に確認して腎臓の健康状態を監視することが重要です。
定期的な血液検査は副作用のモニタリングに重要です
これらの血液検査項目は、関節リウマチの進行や治療の副作用をモニタリングするために非常に重要です。白血球や赤血球、肝機能、腎機能の指標を通じて、患者の全身状態を評価し、必要に応じて治療計画を調整します。
毎月検査するのは、病気が悪化している可能性があるからですか?
- 定期的な検査が病状悪化の兆候を探しているのか、単なるルーチンなのか不安に感じることがあります。
毎月行われる定期的な検査は、必ずしも病気が悪化しているという兆候を探しているわけではなく、主に安全性の確保と治療効果の確認を目的としています。特に関節リウマチ(RA)の治療において、薬物療法(例:メトトレキサートや生物学的製剤など)を使用している場合は、副作用の監視や治療の効果が適切に得られているかどうかを確認するために、定期的なモニタリングが必要です。
毎月の検査が必要な理由
- 副作用の早期発見
関節リウマチの治療薬は、肝臓、腎臓、血液の状態に影響を与える可能性があるため、副作用を早期に発見することが重要です。定期的な血液検査によって、これらの臓器に負担がかかっていないかを確認します。副作用が見つかれば、治療の調整が行われるため、重大な合併症を未然に防ぐことができます。 - 治療効果の確認
関節リウマチは炎症によって関節が破壊される進行性の疾患です。定期的な検査によって、炎症マーカー(CRP、赤沈など)や関節の状態を評価し、治療が効果を発揮しているかどうかを確認します。治療が適切に行われていない場合、早期に治療方針を見直すことで、関節破壊の進行を防ぐことができます。 - 病状の安定性を確認するためのルーチン
毎月の検査は、ルーチンとして病状の安定性を確認する役割もあります。リウマチ患者の中には、薬が効いて症状が安定している時期でも、副作用や病気の再燃を防ぐために検査を続ける必要があります。症状が安定していても、内部での炎症が見逃されないようにするための予防的な措置です。
患者さんの不安に対する回答
患者さんが検査を不安に感じるのは自然なことですが、定期的な検査は病気の進行や副作用を防ぐための重要なステップです。検査によって、病状が悪化している可能性を探るだけでなく、今の治療が効果的であるかどうかを確認し、患者さんが長期的に安定した生活を送れるようにするためのプロセスでもあります。
血液検査だけで、リウマチの状態がすべて分かるのですか?
- 血液検査での結果が良好であっても、関節の痛みや腫れがある場合、それが血液検査だけでわかるのか疑問です。
血液検査だけでは、関節リウマチ(RA)の状態を完全に把握することはできません。血液検査は炎症の程度や治療の副作用を確認するために重要な役割を果たしますが、関節リウマチの全体像を理解するためには複数の評価方法を組み合わせる必要があります。
血液検査だけでは分からないこと
- 関節の具体的な状態
血液検査では、関節が実際にどの程度損傷しているかを直接確認することはできません。関節の腫れや痛み、可動域の制限などの物理的な症状は、診察や触診によって評価される必要があります。 - 関節の内部状態や骨の損傷
**画像検査(X線、超音波、MRI)**が必要です。これらの検査を用いて、関節内部の炎症や骨の破壊がどの程度進行しているかを確認します。これにより、血液検査では見つけにくい関節の損傷や変形を把握することができます。 - 患者の症状や生活への影響
血液検査の数値が良好でも、患者さんが感じる痛みや疲労感などの症状が必ずしも反映されるとは限りません。患者自身の主観的な症状や、日常生活にどの程度支障が出ているかを把握するためには、患者さんとのコミュニケーションが不可欠です。
総合的な評価が必要
関節リウマチの状態を正確に把握するためには、血液検査に加えて、以下の方法を組み合わせることが必要です。
- 関節の触診や診察:腫れや圧痛、関節の可動域を評価する。
- 画像検査:X線や超音波、MRIで関節の状態を詳細に確認する。
- 患者の主観的な症状の把握:痛みや疲労感、日常生活への影響を患者さんと話し合う。
結論
血液検査はリウマチの炎症や薬の副作用を確認するために重要ですが、リウマチの状態を総合的に評価するためには、画像検査や診察、患者さん自身の症状の評価も必要です。これらを組み合わせて、最適な治療方針を決定します。
なぜ結果が良くても毎月検査が続くのですか?
- 病状が安定しているように見えるのに、毎月の血液検査が必要なのかを疑問に感じることがあります。
検査の頻度を減らすことはできませんか?
- 毎月の検査は時間や費用がかかるため、頻度を減らすことができるのか、必要があれば理由を教えてほしいです。
検査の頻度を減らすことができるかどうかは、患者さんの病状や治療の進行状況、使用している薬剤の種類などによって異なります。関節リウマチ(RA)の治療では、初期段階や薬の調整期には頻繁なモニタリングが必要ですが、病状が安定している場合には、検査の頻度を減らすことが可能な場合もあります。
検査の頻度が高い理由
- 副作用の監視
RAの治療にはメトトレキサート(MTX)や生物学的製剤などが使用されますが、これらの薬剤は肝臓、腎臓、血液に影響を与える可能性があります。特に治療の初期段階や投薬量を調整している期間では、副作用を早期に発見し対処するために頻繁な検査が必要です。 - 治療効果のモニタリング
関節リウマチは進行性の病気であり、炎症や関節の破壊が進むことを防ぐために、治療効果を適切にモニタリングする必要があります。定期的な検査を通じて、炎症マーカー(CRPやESR)の値を確認し、治療が適切かどうかを判断します。 - 早期の異常発見
定期的な検査は、薬の副作用や病状の悪化を早期に発見する手段として重要です。特に長期の治療では、副作用が徐々に現れることがあるため、定期的なモニタリングが欠かせません。
検査の頻度を減らすための条件
検査の頻度を減らすことができるかどうかは、以下の条件が満たされている場合に検討されます。
- 病状が安定している
血液検査の結果が安定しており、炎症マーカー(CRPやESR)が正常範囲内に収まっている場合、医師と相談の上で検査の頻度を減らすことができます。 - 薬剤の副作用が出ていない
使用している薬剤が副作用を引き起こしていない場合、定期的なモニタリングの必要性が低下します。ただし、これは個々の患者の状態によりますので、医師の判断が重要です。 - 治療が長期的に安定している
治療を受けている期間が長く、症状が安定している患者の場合、検査の間隔を広げることが可能です。例えば、初期の2〜4週間ごとの検査から、3か月に1回の検査に移行することがあります。 - 自己管理がしっかりしている
自分の症状や体調の変化に敏感で、医師にすぐに相談できる体制が整っている場合、検査の頻度を減らすことが可能なケースもあります。
医師との相談が必要
検査の頻度を減らすことができるかどうかは、必ず担当の医師に相談することが重要です。医師は患者さんの病状や治療の進行状況を総合的に判断し、最適な検査の頻度を決定します。自己判断で検査を減らすことは、病状の悪化や副作用を見逃すリスクがあるため、避けるべきです。
毎月の検査は健康への影響がありませんか?
- 頻繁な採血が体に悪影響を与えることはないのかが心配です。
頻繁な採血による体への影響について心配されることは理解できますが、通常の医療機関で行われる定期的な採血、特に関節リウマチ(RA)の治療で毎月行われるような検査は、健康に悪影響を与えることはほとんどありません。ただし、個々の体質や状況により若干の注意が必要な場合もありますので、以下で詳しく説明します。
1. 採血量の影響
通常の血液検査では、採血量は5〜10ml程度です。毎月この程度の採血を行っても、健康な成人の体にはほとんど影響はありません。人間の体は約5リットルの血液を持っており、少量の採血であれば身体が問題なく補うことができます。また、血液は体内で常に新しく作られ続けているため、採血後もすぐに補充されます。
- 健康な成人では、月に1回の採血であれば、血液の量に関して特に問題はありません。
- 特に大きな健康リスクはほとんどなく、採血による貧血や血液量の不足が起こることは一般的にはありません。
2. 採血による貧血のリスク
採血によって貧血になる可能性を心配されることもありますが、頻繁な採血によって貧血になるリスクは非常に低いです。関節リウマチの患者では、もともと貧血を伴うことがありますが、これは炎症や治療薬の影響によるもので、採血が主な原因ではありません。
3. 採血部位の影響
採血を繰り返すことで、採血部位の皮膚や血管に負担がかかる場合があります。特に、一時的な痛みや内出血が生じることがありますが、通常は時間が経てば回復します。もし採血部位に痛みや腫れが続く場合は、別の部位から採血するよう医師や看護師に相談するとよいでしょう。腎臓が悪い、透析前の患者様は、血管温存のために採血部位を手の甲などにする場合がありますが、そのほかの場合は、通常は肘からの採血で問題ないとされています。当院では個々の状況に合わせ採血部位を検討しています。
4. 採血後の体調管理
採血後に一時的に気分が悪くなることがありますが、これは血液量の影響ではなく、緊張やストレスなどが原因であることが多いです。
まとめ
- 毎月の採血は、関節リウマチの管理において非常に重要であり、健康への悪影響は通常ほとんどありません。
- 採血量は少量であり、貧血や血液量の不足が起こるリスクは非常に低いです。
- 採血後に気分が悪くなる場合は、ストレスや迷走神経反射が原因であることが多く、休息や水分摂取で回復します。
- 不安や心配がある場合は、医師に相談し、検査の頻度や方法を調整することが可能です。
リウマチの状態が落ち着いている場合、検査を省略することは可能ですか?
- 症状が安定しているように感じるときでも、検査が必要かどうか疑問に思います。
関節リウマチ(RA)の状態が安定していると感じるときでも、検査を省略できるかどうかは慎重に考える必要があります。症状が安定している場合でも、リウマチは進行性の病気であり、関節の炎症や破壊が静かに進行していることがあるため、検査を続けることが推奨される場合が多いです。
状態が落ち着いている場合の検査の役割
- 症状が表に出ていない炎症を確認するため
関節リウマチでは、症状が安定しているように見えても、関節内で炎症が続いていることがあります。血液検査で炎症マーカー(CRPや赤沈)をチェックすることで、病気が進行していないか確認できます。自覚症状がなくても、炎症が潜在的に進行している可能性があるため、定期的なモニタリングが重要です。 - 薬の副作用を早期に発見するため
リウマチ治療に使われる薬(メトトレキサートや生物学的製剤など)は、副作用が現れることがあります。特に肝機能や腎機能に負担をかける場合があるため、定期的に検査を行うことで、薬の副作用を早期に発見し、適切な対処をすることができます。症状が安定していても、副作用の確認のために検査は重要です。 - 長期的な病気管理のため
リウマチは長期にわたる管理が必要な病気で、関節の変形や骨の破壊を防ぐためには、定期的なモニタリングが不可欠です。症状が落ち着いている場合でも、治療効果が持続しているかどうかを確認するために、定期的に検査を行うことが推奨されます。
検査を省略できる可能性
症状が安定している場合に、検査の頻度を減らすことができるかどうかは、次の要素に依存します。
- 病状が長期間安定しているか
病状が長期間にわたって安定しており、炎症マーカーも通常範囲内にある場合、医師と相談のうえで検査の頻度を減らすことが可能です。例えば、毎月の検査から2〜3か月ごとに減らすことが検討されることもあります。 - 薬の副作用が出ていないか
使用している薬剤が体に負担をかけていない場合、検査の頻度を減らすことが可能です。ただし、新しい薬に変更した場合や、薬の量を調整した直後は、頻繁な検査が必要です。 - 医師との相談が必須
検査を省略するかどうかは、必ず担当のリウマチ専門医と相談して決定する必要があります。医師は、患者さんの病状や治療履歴、薬の副作用リスクを総合的に判断し、検査の必要性を評価します。患者さんの自覚症状だけでは病気の進行を正確に判断することが難しいため、医師の判断が重要です。
検査頻度を減らす場合でも注意が必要な点
- 症状の変化を見逃さない
症状が安定していても、疲れやすさや痛み、関節のこわばりが少しでも感じられたら、医師に相談することが重要です。検査頻度を減らしても、体調の変化には敏感であることが必要です。 - 治療に対する反応を把握
治療が長期間安定していることを確認し、もし治療に対する反応が変わった場合には、すぐに検査を再開することが必要です。
まとめ
症状が安定している場合でも、定期的な検査を行うことは、関節リウマチの進行や薬の副作用を監視するために重要です。検査頻度を減らすことができるかどうかは、病状や治療の進行状況に応じて医師と相談し、決定します。医師の指導のもとで検査頻度を調整し、症状が悪化しないように継続的なモニタリングが不可欠です。