関節リウマチの症状と季節性、春夏秋冬の痛みの最新エビデンスを解説します

関節リウマチ(RA)は、慢性の炎症性疾患で、主に関節の炎症が起こる病気です。炎症が持続すると軟骨や骨の破壊を引き起こし、機能障害や障害の原因となりえるため、炎症がしっかりとコントロールできているかはとても重要です。

・痛み
・腫れ

で、炎症が残っているかどうかを判断していくことがおおいのですが、痛みや腫れの季節変動や、リウマチの病勢の季節変動に対する影響は無視できないことです。

リウマチ専門医
 高杉浩司

季節による痛みや、リウマチの症状の季節性をわかりやすく解説します。

季節変動に関する最新の研究結果

リウマチ患者さんの多くは、天候や季節の変化で症状が悪化すると感じており、実際「冬に症状が悪化する」との訴えは古くから知られています。また患者アンケートでは約半数が季節による症状の変動を自覚しているとの報告もありました。

しかし、冬の痛みは疾患活動性の悪化(リウマチの病勢の悪化)だけではなく、冬場に痛むだけというのも含まれています。

近年になり、大規模データを用いた解析により関節リウマチの病勢への季節性がより明確に示されています。例えば、日本の全国規模のRAデータベース研究(NinJaデータなど)では、春に疾患活動性が最も高く、秋に最も低いことが明らかになりました​

リウマチの病勢であるDAS28やSDAIといった活動性スコアの季節別平均値は春に最高となり、秋に最低となっています。(つまり春は寛解率が低く、高疾患活動性の割合が増加)​

また2023年に報告された日本の国民医療データベース解析では、2010~2017年の生物学的製剤およびメトトレキサート(MTX)開始件数に季節性が認められました。生物製剤・MTXの新規導入は毎年5~7月(春から初夏)にピークを迎え、11~1月(冬季)に底を打つという正弦波状の季節変動が示されたのです​。このパターンは日本全国の地域や患者層(性別・年齢)で共通しており、著者らは「日本において春先にRAが増悪しやすい傾向」を示すものと結論付けています​

冬場、寒さのせいと様子をみていた痛みが春になり顕在化してきたという場合もあると思います。

リウマチ専門医
 高杉浩司

痛みが残り、関節エコーでも炎症が強い場合、しっかり治療を強化することが大事です。

冬は痛みが強いことが多く、春は炎症が悪化していることが見つかることが多いという季節変動があります。

気温・湿度・地域差の影響

季節性の背景には、気温や湿度などの気象因子の変化が症状に影響する可能性が指摘されています。実際、気象条件と関節リウマチ症状との関連を検討した研究もこの10年でいくつか報告されています。イギリス・北アイルランドの研究では、日照時間が長い日ほどDAS28が低下(疾患活動性が低い)し、湿度が高い日ほどDAS28が上昇する傾向が有意に認められました​

気温が高いほど活動性が低下する傾向もみられましたが、著者らは「晴天や乾燥した気候で症状がやや軽減し、高湿度の環境で悪化する」ことを報告しています​。

一方、北アフリカ・モロッコの研究では冬季の湿度上昇が圧痛関節数の増加と相関し、夏季には降水(降雨)が圧痛関節数の増加と関連しました。また夏季においては気温の低下および気圧の低下が疼痛悪化と関連し、総じて寒冷で低気圧・高湿度な気候で痛みが増す傾向が示唆されています​

この研究では客観的な炎症所見(腫脹関節や炎症マーカーなど)と気象因子との間に有意な関連は認められず​、気候の変化は主に痛みやこわばりといった主観的症状に影響を及ぼす可能性が示唆されました​

以上のように地域によって注目される因子は多少異なるものの、寒冷かつ湿潤な気候条件で関節リウマチの自覚症状(痛みやこわばり)が悪化しやすい点は共通しており、反対に暖かく乾燥した環境では症状が和らぎやすいという報告が多いです。​

このような季節変動は一部の患者に留まらず集団レベルでも確認されつつありますが、一方で気温や湿度の変化に対する個人差も大きく、季節による影響の感じ方は患者ごとに異なることも念頭に置く必要があります​

日本の気候にと関節リウマチの症状

日本は四季の変化が明瞭で、冬季の寒さと高湿度の梅雨・夏季を経験する気候です。その日本における研究から、RAの季節性について興味深い知見が得られています。前述の通り、春先の疾患活動性悪化および秋の改善傾向は日本の大規模コホート(IORRAなど)で示されており​

保険データ解析においても日本全国で同様のパターンが確認されており、これは、日本のどの地域でも春に増悪・冬に沈静化する傾向が一貫して見られたことを意味します​。日本人関節リウマチ患者の主観的な季節変動についての調査でも、「」および「」に症状が悪化しやすいと感じる患者が多いとの報告があります(63%の患者が季節による悪化を自覚)​

こうした季節性の要因の一つや、また関節リウマチ患者さんへのプラスの影響を考える要素として、日本では冬季の日照不足によるビタミンD不足が注目されています。実際、RA患者ではビタミンD欠乏がしばしば認められ、その程度が強いほど疾患活動性が高い傾向が報告されています​。特に冬~春に発症したRAは骨破壊の進行が早く、寛解達成率が低いとの報告もあり、冬季の低い日照(低UV)環境で発症することが予後不良に関与する可能性が示唆されています​

このように、日本の気候下では冬から春にかけて関節リウマチの病勢管理に注意が必要であり、また関節リウマチは骨粗鬆症のリスク因子でもあること、日本人女性の多くはビタミンD欠乏があることから、必要に応じて骨粗鬆症やビタミンDの検討は有効かもしれません。さらに、冬季はインフルエンザなど感染症の流行期でもあり、これらの感染症が関節リウマチの増悪誘因となりうることも考慮すべきです。実際、ある報告では冬季は全身性炎症反応が亢進しやすい(健常者でもCRPやIL-6受容体が上昇傾向)ことが示されており​、寒冷による自律神経・内分泌リズムの変化や感染増加が免疫系に影響を与える可能性があります。以上より、日本では季節ごとの気候を念頭に置き、冬~春にかけての悪化に備えた計画を立てることが有用です。

臨床的意義

近年のエビデンスは、関節リウマチの症状や疾患活動性に季節性の変動が存在しているだろうと考える報告が増えています。一般的に寒冷で湿度の高い冬季や春先に関節症状が悪化しやすく、温暖で乾燥した夏季~秋口には症状が落ち着く傾向があります​

このような季節要因を理解すると、例えば冬季に多少関節炎が悪化しても「季節的な揺らぎ」と考え過度に心配せず経過を見る判断につながる一方、適切な関節評価ができていないと春先に増悪するため、冬の痛みが疾患活動性の悪化に由来するようなら事前に治療強化を検討するといった予防的アプローチも可能です。また、患者にとっても自身の症状変化に季節要因が関与すると知ることで心理的な安心感を得たり、寒冷環境を避け保温に努めるなど自己管理に活かしたりできます。

季節に応じたきめ細やかな診療を心がけることで、関節リウマチ患者さんが年中ずっと調子がよく過ごせることにつながるのだと思います。

参考文献

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