リウマチの初期症状と病院に相談するタイミング【リウマチ専門医が解説】

関節リウマチは早期発見と治療が重要な病気です。初期の段階で症状に気づき、早めに医師の診断を受けることで、進行を抑え、生活の質を維持することができます。

リウマチを早期に発見することには多くのメリットがあり、近年ますます早期診断早期治療の重要性の報告が増えています。1つは、早期に治療を開始することで病気の進行を抑え、関節の損傷を最小限に抑えることができること。リウマチは、関節に慢性的な炎症を引き起こします。適切な治療が行われなければ、関節の変形や機能障害を招くリスクが高まります。一方、早期に治療を開始することで、こうしたリスクを低減し、将来的な関節の健康を守ることができます。

また、リウマチの早期治療は、生活の質を向上させることにもつながります。痛みやこわばりなどの症状を早めにコントロールすることで、日常生活の不便さが軽減され、仕事や趣味、家庭生活をより積極的に楽しむことが可能になります。さらに、早期治療により、使用する薬物の量や種類を抑えられる場合があり、副作用のリスクを低減することも期待されます。

the window of opportunity(機会の窓)を逃さないこと

「the window of opportunity(機会の窓)」は、リウマチ発症後早期(望ましくは3カ月以内)に早期治療を行うための非常に重要な時期です。関節の不可逆的なダメージを防ぐために、もし初期症状で気になることがあれば病院を受診し、この期間内を逸しないようにしていくことが将来のリウマチの病勢にも関わる大切な時期と言われています。

この期間内にDMARDs(抗リウマチ薬)を開始することが重要で、決して「様子を見ましょう」として鎮痛薬(NSAIDs)で対処するだけで長引かせてはいけません。抗リウマチ薬を使い、3カ月から6カ月以内に寛解を目指すことが将来の予後を大きく改善します。

リウマチとは?

リウマチ(関節リウマチ)は自己免疫疾患の一種で、免疫システムが誤って自分自身の関節組織を攻撃してしまう病気です。これにより、関節の内側にある滑膜という組織に炎症が起こり、腫れや痛みが生じます。関節の炎症が進行すると、軟骨や骨にまでダメージが及び、最終的には関節の変形や機能障害に繋がることがあります。

リウマチの原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境的要因、ホルモンの影響が関係していると考えられています。また、女性に多く見られる病気であり、特に30代から50代の女性に発症することが多いです。

リウマチの初期症状

リウマチの初期症状は、進行を食い止めるために非常に重要なサインです。以下に、リウマチの初期に見られる代表的な症状について詳しく説明します。

1. 朝のこわばり

リウマチの代表的な初期症状の一つが「朝のこわばり」です。朝起きた時、手や関節がこわばり、自由に動かしにくいと感じることがあります。このこわばりが1時間以上続く場合、リウマチの可能性が考えられます。特に朝の時間帯に強く感じられることが多いため、注意が必要です。

朝のこわばりは、関節内の炎症によって滑膜が腫れ、関節液が増加することにより発生すると考えられています。これにより、関節が硬くなり、動かしにくくなるのです。この症状はリウマチの診断の基準にも用いられているサインであり、早期に医師に相談することが重要です。

2. 関節の腫れと痛み

リウマチの初期には、指や手首、足などの小さな関節が腫れたり、痛みを感じたりします。特に左右対称に症状が現れることが多いのが特徴です。例えば、右手の指が痛む場合、左手の同じ指にも痛みが生じることが一般的です。この左右対称性は、リウマチ特有の特徴であり、他の関節炎とは異なるポイントです。

痛みは通常、何もしていなくても感じられることがあり、これが日常生活に影響を及ぼします。例えば、手を使って物を持ち上げる、扉を開けるといった動作が困難になることがあります。さらに、関節の炎症が進行すると、関節の変形や機能障害を引き起こすリスクが高まります。

特に、小関節と呼ばれる緑色の関節が初期症状として出現しやすいです。

特に、MCP関節やPIP関節、手関節は初期症状として腫れやすい関節です。

PIP(近位指節間関節)とMCP(中手指節関節)を簡単に説明すると、以下のようになります:

  • PIP関節:指の第一関節で、手のひらから最も近い部分の関節です。
  • MCP関節:指の基部にある関節で、手のひらに最も近い部分です。

3. 疲労感や倦怠感

初期のリウマチでは、原因不明の疲労感や倦怠感を感じることがあります。この疲労感は、十分な休息を取っても解消されにくく、日常の活動に支障をきたすことがあります。リウマチによる疲労感は、体内での持続的な炎症反応が原因と考えられています。

リウマチによる炎症は、免疫システムが過剰に働くことで引き起こされ、その結果として体が常に「戦っている」状態になります。このため、エネルギーの消耗が激しくなり、疲労感が慢性的に続くのです。また、倦怠感が強い場合、集中力の低下や気分の落ち込みを引き起こすこともあり、精神的な面でも影響を与えます。

4. 微熱

リウマチの初期症状として、微熱が続くこともあります。これは体内で炎症が進行していることを示しており、他の症状と併せて注意が必要です。微熱は、体の免疫システムが炎症に反応しているサインであり、感染症ではないにも関わらず、体温が上がることがあります。

この微熱は、日常生活で気づかれにくいことが多いため、他の症状と組み合わせて考えることが大切です。例えば、関節の痛みや腫れ、朝のこわばりといった症状が同時に見られる場合は、リウマチの可能性を疑い、医師に相談することをお勧めします。

5. 関節のこわばりと痛みの増悪(症状の波がある)

初期の段階では、関節の痛みやこわばりが一時的に軽減したり悪化したりすることがあります。このような波のある症状で、日によって症状の強さが変わることがあります。

例えば、ある日は関節の痛みが軽い一方で、翌日には痛みが強まり、簡単な動作が困難になることがあります。このような変動がある場合でも、決して放置せず、早めにリウマチ専門医に相談することが重要です。

リウマチの診断と治療

リウマチの診断は、主に血液検査と画像診断によって行われます。血液検査では、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体といった自己抗体の有無を確認し、炎症の程度を測るためにC反応性タンパク(CRP)や赤血球沈降速度(ESR)なども調べます。画像診断では、X線(レントゲン)や超音波を使用して関節の状態を詳しく確認します。特に超音波検査は初期の炎症を見つけるのに有用とされ、レントゲンでの変化が出る前から関節リウマチを見つけることができます。

リウマチの治療には、病状の進行を抑えるための薬物療法が中心となります。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を使用して病気の治療をします。最近では、より効果的な生物学的製剤が登場し、患者さんの生活の質を大きく向上させることが可能になっています。

生活習慣とリウマチの対処法と治療開始後の運動

リウマチの治療においては、治療と並行して生活習慣の改善も重要です。一昔前はリウマチの初期は絶対安静でしたが、最近では適度な運動は関節の可動域を保ち、筋力を維持するのに役立つと考えられています。特にウォーキングや水中エクササイズは、関節に負担をかけずに運動を行うことができるため、リウマチ患者に適しています。また、栄養バランスの取れた食事として、特にオメガ3脂肪酸を含む魚や、野菜・果物を積極的に摂取することが推奨されています。

ストレス管理もリウマチの症状コントロールにおいて重要な要素です。慢性的なストレスは免疫システムに影響を与え、症状を悪化させる可能性があります。リラクゼーション法や趣味の時間を設けることで、ストレスを軽減し、心身の健康を保つことが大切です。

まとめ

リウマチは進行性の病気ですが、The Windows of opportunityと言われる、初期の早期の診断と治療が将来の関節の変形や機能障害を防ぐ鍵となります。朝のこわばり、関節の腫れと痛み、疲労感や微熱といった初期症状に気づいたら、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることをお勧めします。リウマチの治療は大幅に進歩したため、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせることで、症状をコントロールし、生活の質を向上させることが可能です。

もし上記の症状に心当たりがある場合は、迷わず専門医に相談し、早期治療を開始しましょう。