関節リウマチの治療で、ステロイドの位置付けを解説します。
実は、関節リウマチの治療において、ステロイドは必須薬ではありません。
患者様の中には、ステロイドを使いたくないという気持ちで、リウマチの治療自体を中止してしまう方もいらっしゃいますので、このページで解説していきます。
関節リウマチとステロイド
こちらは、関節リウマチの日本におけるガイドラインです。(ガイドライン2020より抜粋)。
このガイドラインの中で、ステロイドは一番右にある「副腎皮質ステロイド」という部分です。
□の中が関節リウマチのメインの治療になり、右の
・抗RANKL抗体
・NSAID
・副腎皮質ステロイド
は、補助的な役割の薬になります。
ステロイドは除痛効果が中心、関節変形抑制効果は乏しい
関節リウマチの治療薬には、2つの効果が期待されます。
1つは、関節の腫れや痛みを取る「除痛効果」
1つは、関節の変形を抑える「関節変形抑制効果」
関節リウマチでのステロイドの効果は、除痛効果です。ステロイドの関節変形抑制効果は乏しく、ステロイドだけで関節変形抑制は抑えきれないとされています。
では、なぜステロイドが使用されるのか。それは除痛効果が高く早いためです。痛みが早く取れます。
一方、抗リウマチ薬は効果発揮まで時間がかかります。抗リウマチ薬の効果が発揮されるまで、その期間の痛み止めとして使用されます。
関節リウマチの変形を抑える薬剤である「抗リウマチ薬(メトトレキサートや生物学的製剤やJAK阻害薬)」は、効果を発揮するまでに時間がかかります。2ヶ月~3ヶ月かけて効果が出てくる薬剤もあります。
その間の痛み止めとしてステロイドは使用されます。そのため、3ヶ月くらいを目処に中止するように調節していく薬剤です。
ステロイドはあくまで痛み止めなので、ステロイドを使用しなくても、関節リウマチの治療は行うことができます。
膠原病の中には、「ステロイドが絶対的に必要な病気」もありますが、関節リウマチの場合はステロイドがなくても治療できます。
海外の関節リウマチのガイドラインにおけるステロイドの位置付け
海外のガイドラインには
・アメリカリウマチ学会(ACR)
・ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)
この2つが参考にされることが多いです。
ステロイドに関しては、ヨーロッパ学会は短期の使用を推奨、アメリカ学会は使用しないことを推奨することが多いです。
少量のステロイドは、発症して炎症が強い間は、変形抑制効果があるとされる論文があります。そのため、ヨーロッパ系のガイドラインではその効果を期待し、短期間併用することがあります。(※ただしステロイドは必須ではありません)
こちらはACRのリコメンデーションです。
こちらは、EULARのリコメンデーションです。
関節リウマチの場合、ステロイドは、
・使わないことも多い
・使う場合も、短期の使用に留める
ということが推奨されます。
関節リウマチで一時的にステロイドを使う場合の使い方
膠原病で使用するステロイドの量は、低用量、中用量、高用量、パルスの用量があります。
- 低用量 –0.1-0.2mg/kg (〜15mgというイメージ)
- 中用量 –0.5mg/kg/day (20〜50mgというイメージ)
- 高用量 –1-2mg/kg/day (50-100mgというイメージ)
- パルス –250-1000mg/day x 3 days
この中で、関節リウマチの場合は10mg以下のことが多いです。
ステロイドの量としては少ないですが、毎日、つまり1日1回で飲む場合、3週以上続けて内服すると副腎抑制のリスク(=ステロイドを中止しにくくなる)があります。
それに対して、隔日内服(2日に1日内服する)という対処方法があります。
隔日内服にすると、除痛効果は少し落ちますが、中止しやすさや感染症リスクが下がるとされます。
関節リウマチでステロイドを使用した場合の減らし方
抗リウマチ薬が効果を発揮し始める時期から減量し、2-3ヶ月以内で中止を目指します。
まとめ
関節リウマチの治療におけるステロイドは、除痛効果が中心です。
発症して活動度が高い時期に併用すると、関節変形抑制にも+に働くというデータもあり、そのためヨーロッパ系のガイドラインでは初期に併用することがあります。しかし、関節リウマチの治療に必須の薬ではありません。
ステロイドが心配で病院に行くのを躊躇してしまっている方がいらっしゃれば、一度相談してください。
初診では30分ほどお時間を確保し、関節リウマチの治療方法を説明しております。