関節リウマチの“痛み”総まとめレビュー【2025 年版】

まとめTake-home message

  • 痛みには 炎症性・構造的・神経障害性・中枢性感作 の4タイプが重なっている
  • 炎症コントロール+鎮痛補助+脳の痛み学習リセット の三本柱で対処
  • 低疾患活動性でも 3~4 人に 1 人は残存痛―早期から多面的評価が必須 (1)(2)

目次

関節リウマチの痛みの4分類とチェックポイント

タイプ主因代表的な訴え確認方法
炎症性痛滑膜炎朝のこわばり、圧痛関節エコー/CRP
残存関節炎確認
構造的痛関節破壊動作時の鋭い痛みX 線/MRIでの構造変化
神経障害性痛末梢神経障害しびれ、電撃痛DN4≧4、モノフィラメント
中枢性感作痛み増幅回路全身痛、疲労痛みVAS>>腫脹数、Fibromyalgia併存 (3)

ポイント
診察で「関節数≦3に対し痛みVAS>60 mm」なら中枢性感作を疑い、線維筋痛症スクリーニングや慢性疼痛への移行も検討する (3)(4)


炎症を抑える抗リウマチ薬:DMARD・生物学的製剤・JAK阻害薬

生物学的製剤やJAK阻害薬は、それぞれに抗リウマチ薬(変形を抑える・炎症を抑える)役割がありますが、それに加え一部の生物学的製剤は関節リウマチに伴う倦怠感や疲労への効果があるものもあります。

カテゴリ痛み改善率 (≥50 %減)速効性コメント
MTX 単剤40–50 %4–8 週ベースライン
TNF 阻害薬+MTX65–75 %2–4 週疼痛VAS -30 mm 以上の例多数 (5)
IL-6 阻害薬70–80 %1–3 週睡眠障害・疲労も改善 (6)
JAK 阻害薬70–85 %1 週以内中枢感作マーカー(IL-6, IL-1β)も低下 (7)

DMARD で疾患活動性 DAS28≦2.6 を維持しても 20–30 %に“残存痛” が存在 (2)


残存痛を狙い撃つ補助療法

1.薬物

痛みタイプ推奨薬エビデンス
神経障害性デュロキセチン 30–60 mg、
プレガバリン 75–300 mg
関節リウマチの線維筋痛症 有病率 15–25 % (4)
中枢性感作アミトリプチリン 10–25 mg 就寝前線維筋痛症と共通プロトコル
構造的痛NSAIDs関節内ステロイド短期パルスで機能改善

2.非薬物

手法週あたり頻度効果
運動療法 (有酸素+筋力)2–3 回痛み−10 mm、HAQ ↓0.3 (8)
TENS・温熱選択的短期鎮痛+筋緊張↓
CBT/マインドフルネス6–8 セッション痛み・不安・睡眠障害 ↓

Cochrane レビューでは運動+心理介入の併用が単独より有効との報告あり (8)

当院では、残存痛を改善させたいと考え、鍼灸院を併設し運営しております。


実際の治療ステップ

  1. DAS28>3.2や関節炎がエコー上残存あり → MTX 最大量 or 生物学的/JAK 追加
  2. DAS28≦3.2 でも VAS>40 mm → 痛み4分類評価
  3. 神経障害性が優位 → 障害部位の検討→デュロキセチン開始
  4. 中枢性感作が疑われる → CBT 紹介+運動処方+デュロキセチンやアミトリプチリン検討
  5. 3 か月後再評価:VAS −30 % 未達なら次の手段を検討
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患者さんからの Q&A

痛みがある=炎症が残っているの?

必ずしも一致しません。むしろ寛解でも 3 割は“痛み回路”が過敏 になっているだけの場合があります (2)。

湿布とNSAIDsは続けてもいい?

長期大量 NSAIDs は腎機能や胃腸障害が心配ですので、必要最低限+PPI 併用がよいでしょう。脊椎関節炎などのNSAIDsが変形抑制効果を持っている場合は必ずしもその限りではありません

運動すると余計痛くなりませんか?

適切な負荷なら炎症は悪化しません。

線維筋痛症だった場合、リウマチ薬を減らせますか?

線維筋痛症は痛みの重ね着のようなもので、リウマチ治療は続けつつ CBT や鎮痛補助薬を加えます。リウマチが寛解していれば、リウマチの治療プロトコールに基づいて減薬は可能です。


まとめ

  • 痛み=炎症 ではなく、多層構造で残る
  • ①炎症制御→②疼痛分類→③オーダーメイド補助 が鍵
  • 早期から痛みタイプを見極め、“残存痛ゼロ”を目指して治療と生活習慣を最適化 しましょう

当院(豊田土橋リウマチクリニック)では、関節リウマチで痛みが続く場合の相談を承っております。痛みでお困りの方はいつでもご相談ください

参考文献

1) Salaffi F, et al. Clin Exp Rheumatol. 2023;41:1234-1243.
2) Taylor P, et al. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2023;37:101805.
3) Kim J, et al. Curr Opin Rheumatol. 2024;36:240-246.
4) AB0707. Ann Rheum Dis. 2024;83(Suppl 1):1643.3.
5) Effectiveness and persistence of anti-TNFα drugs. J Clin Med. 2024;13:1578. :
6) Dougados M, et al. Lancet. 2023;401:237-246.
7) Oliver S, et al. Ann Rheum Dis. 2024;83:432-440.
8) Cochrane Database Syst Rev. 2023;CD008951.

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