関節リウマチ治療方法を専門医がなるべく詳しく分かりやすく。治療から副作用対策まで徹底ガイドします

医師 高杉

関節リウマチと診断されると、将来のことが不安になってインターネットで色々検索してしまうと思います。ですが、関節リウマチの治療は“怖くない”そして、薬を続ける理由、ちゃんとあります。

このページでは、関節リウマチ治療の全体像と選択肢について、リウマチ専門医の私高杉が丁寧に解説します。

関節リウマチの治療は劇的に進歩しています。そのため、今は痛みや腫れをほとんど感じない方が多くいらっしゃいます。
そして、関節が変形してしまうリスクも、寛解(かんかい)という状態で防ぐことができます。

一人でも多くの患者さんが良い治療を受けられるよう、このページでは関節リウマチの治療について、どのホームページよりも分かりやすい説明を心がけ、徹底的に解説します。解説内容はリウマチ専門医が正確性にこだわり解説します。

・関節リウマチと診断されたばかりの方
・関節リウマチで痛みが続いている方
・関節リウマチで将来が心配な方
・どんな治療があるのか治療方法を探している方
・痛みや変形がどんな結果になっていくのか心配な方
・今受けている関節リウマチの治療結果に満足がいっていない方
・持病があってリウマチの治療を受けるのが心配な方
・医療費のことが心配な方
・生活のことが心配な方

関節リウマチの治療方法について悩む全ての方に、全体像をつかむための解説ページです。

このページでは、関節リウマチ治療の全体像について、患者さん向けてわかりやすく解説します。治療の流れや種類、薬の効果や副作用への対策などを順番に見ていきましょう。各項目の末尾には詳細ページへのリンク(「あわせて読みたい」)を設置していますので、気になる部分はそちらも参考にしてください。

この記事を書いた医師(リウマチ専門医 高杉 浩司)

リウマチ専門医・指導医 医師 髙杉 浩司
豊田土橋リウマチクリニック 院長 

CAREER
トヨタ記念病院 初期臨床研修
トヨタ記念病院 腎臓膠原病内科 医員
中部ろうさい病院 腎臓内科リウマチ科 医員
聖路加国際病院 リウマチ膠原病センター 
クリニカルフェロー
中部ろうさい病院 腎臓内科リウマチ科 副部長
三九朗病院 副院長
豊田土橋リウマチクリニック 院長

医師になった後、母が関節リウマチを発症しました。持病も多かったため治療方法を色々考え、研鑽も積んできました。リウマチの治療は急激に進歩しており、そのおかげで母は変形もなく定年を迎えられました。少しでも多くの患者様が良い関節リウマチ治療を受けてほしい。その思いでリウマチ治療専門のクリニックを開院しました。

 

関節リウマチは、『治療法がある、治療できる疾患』となりました。

関節リウマチは、『治療法がある、治療できる疾患』となりました。

関節リウマチは、関節の痛みや腫れを引き起こす自己免疫疾患です。適切に治療しないと関節の破壊が進み、日常生活に支障をきたす恐れがあります。

しかし現在では治療法が飛躍的に進歩し、早期発見・早期治療によって症状のない状態「寛解(かんかい)」を目指すことが可能になっています。

寛解とは痛みや腫れなどの症状がほとんどない健康な人と同じ状態のことで、これを維持することで関節の破壊を防ぎ、普段と変わらない生活を送ることが治療の目標です。

かつては痛み止め中心の対症療法が主流でしたが、今では「寛解」を達成して維持することが治療のゴールとなりました。

リウマチ治療の目的は関節の炎症を抑え、痛みを和らげて関節の変形や破壊を防ぎ、生活の質(QOL)を維持・向上させることです。

関節リウマチ治療の流れ|関節リウマチ診断後の早期治療

関節リウマチと診断されたら、できるだけ早期に治療を開始します。発症早期(特に1年以内)に炎症を十分に抑えることで、関節破壊の進行を食い止め寛解に持ち込める可能性が高まるからです。

初期治療では、まずメトトレキサート(MTX)という抗リウマチ薬を中心とした薬物療法を開始するのが一般的です

メトトレキサートは関節リウマチ治療の“アンカードラッグ”(基軸薬)と位置づけられ、世界的な治療ガイドラインでも第一選択として推奨されています。実際、日本でもリウマチ患者さんの50~70%がMTXを使用しています。

週1回1日1回、または週1回1日2回、週1回を2日で内服する方法などがあります。メトトレキサートを内服して気持ちの悪さなどが出る方が1割前後おられ、そういう場合は分割(表の一番下)の飲み方にすると改善する場合があります。

治療開始後は3か月程度で効果の評価を行い、十分な改善が得られない場合は治療内容の見直しを行います。

リウマチの治療薬が効いてくるまでの期間は、約2-3ヶ月ほどかかります。早い方だと1ヶ月程で効果を実感する方もいますが、時間をかけて効果を発揮する方も多いです。

では、そういった方は「痛みを3ヶ月我慢しないといけないのか」というと、痛みを早く取る方法もあります。

リウマチの痛みを早く取る方法は4つあり、「ロキソニンやセレコックスなどの痛み止めの内服」「短期的にステロイドを使用する」「ステロイドの関節注射(ケナコルト®やデポ・メドロール®)」「早い段階で生物学的製剤やJAK阻害薬を開始する」の4つです。

リウマチの痛みを、速やかに取る4つの方法

ロキソニンやセレコックスなどの痛み止めの内服
短期的にステロイドを使用する効果とメリット
ステロイドの関節注射(ケナコルト®やデポ・メドロール®)
早い段階で生物学的製剤やJAK阻害薬を開始する

お仕事や家事、介護や子育てなど、痛みをどれだけ早く取りたいかの状況は人それぞれです。
生活の中での痛みの困り度合いに合わせて、早く症状を和らげることは可能なので御相談ください。

関節リウマチの治療方法とステロイド

ステロイドは忌避される方もいらっしゃいます。ですが、ご安心ください。関節リウマチに必須の薬ではありません。そのため、ステロイドなしでの関節リウマチの治療も可能です。関節リウマチの治療では、ステロイドなしでの治療が通常です。

ですが、痛みの強い時にステロイドを使うメリットもあります。①症状を早く取ることができ、早く生活の質があがること、②炎症が強いときはステロイドが関節変形抑制効果があること。初期にステロイドを使用するメリットはこの2つです。長期的には変形抑制効果はありませんが、最初の強い炎症による変形は抑えてくれます。

メトトレキサートが使用できない場合の治療方法やその他の治療方法

メトトレキサートは安全なお薬ですが、もともと肺が悪い方や、腎臓の悪い方、妊娠前の方などで、使用が難しい場合があります。また、どうしてもメトトレキサートを使用したくない方(添付文書を見て不安になった方や使用して副作用で困った方など)もいらっしゃいます。そういった場合には、メトトレキサート以外の抗リウマチ薬で治療を行うこともできます。

メトトレキサート以外の従来型抗リウマチ薬での関節リウマチ初期治療

タクロリムス(プログラフ®)

サラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)、イグラチモド(ケアラム®)、ブシラミン(リマチル®)などが使用されます。

タクロリムスは日本で使用されることの多い抗リウマチ薬で、治療効果も高いとされています。

生物学的製剤やJAK阻害薬での関節リウマチ初期治療

メトトレキサートを併用せずに効果が高いものとして

IL-6阻害薬注射(トシリズマブ(アクテムラ®)、サリルマブ(ケブザラ®)

JAK阻害薬内服

TNF阻害薬の中で非併用でも効果がある程度高いもの(エタネルセプト(エンブレル®)セルトリズマブ(シムジア®)ゴリムマブ(シンポニー®)

アバタセプト

などは、メトトレキサートよりも治療効果が高い製剤も多く、メトトレキサートが使用できない場合でもよい治療法となります。特に、予後悪化因子と呼ばれるリウマチが悪化しやすい場合では、生物学的製剤の使用を躊躇しすぎないほうがよいとされています。

メトトレキサートや1つめの抗リウマチ薬でも関節リウマチ治療効果不十分な場合

メトトレキサートや1つめの抗リウマチ薬でも効果不十分な場合でも、今は新薬が豊富にあり、治療方法があります。

関節リウマチで使用可能な生物学的製剤・JAK阻害薬

生物学的製剤
TNF-α阻害薬:ヒュミラ、シンポニー、エンブレル、シムジア
IL-6阻害薬:アクテムラ、シムジア
CTLA4-Ig:オレンシア

JAK阻害薬
JAK阻害薬:ゼルヤンツ、オルミエント、スマイラフ、リンヴォック、ジセレカ

生物学的製剤やJAK阻害薬を積極的に考えるべき患者様、予後悪化因子とは

関節リウマチの治療は、なぜ必要なのか。

関節リウマチの治療の目標は、

・関節の腫れや痛みを取る=日常生活で感じる「痛み」を抑える
・関節破壊の進行抑制=将来の「関節の変形」を抑える

を行うことです。痛み・腫れ・変形を抑えることで、将来変形し手足が使いにくくなることを防いでいきます。

関節リウマチの診断がついたら、まずメトトレキサートという薬を使用できるかどうかを検討します。

メトトレキサートが使用できない場合は、csDMARDsと呼ばれる別の抗リウマチ薬を使用します。

csDMARDsは、日本だとサラゾスルファピリジン(商品名アザルフィジン‎Ⓡ)、ブシラミン(商品名リマチル‎‎Ⓡ)、イグラチモド(商品名ケアラム‎Ⓡ)、タクロリムス(商品名プログラフ‎Ⓡ)などが用いられます。

治療の達成状況により、生物学的製剤(TNF-α阻害薬であるヒュミラ Ⓡ 、シンポニー Ⓡ 、エンブレル Ⓡ 、レミケード、シムジア等、IL-6阻害薬であるアクテムラ Ⓡ 、ケブザラ Ⓡ 、CTLA4-Ig製剤であるオレンシア Ⓡ )等を使用していきます。最近ではこれらと同等近い効果の飲み薬であるJAK阻害薬が使用されます。

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関節リウマチの治療薬は、治療効果(痛みや腫れの改善)までの期間が長いです。

つまり飲み始めてから効果を実感するまで時間がかかり、約2-3ヶ月ほどかかります。

関節リウマチの治療効果は、3ヶ月から6ヶ月ごとに目標が達成できているかを確認し、できていなければ治療の見直しを行います。治療目標の一つに、「疾患活動性評価」があります。

痛い関節の数、腫れている関節の数、自己評価、血液検査の炎症反応で評価していきます。

治療目標を医師と共有しよう

患者様の中には、痛みが我慢できる程度には落ち着いていて困ってはいない、というところで満足している方も居ます。困っていないことは喜ばしいことである一方、もう一つの治療の目標である「関節破壊(変形)」を抑えるためには、寛解を目指して治療する必要があるか、リウマチ科医と相談が望ましいです。  

この認識は、医師と話し合っていきましょう。

メトトレキサートで寛解状態であれば、その状態を維持していきます。

メトトレキサートで寛解状態でない場合は、治療の見直しを行います。

つづいて、「メトトレキサートの使用状況」と「リウマチの病勢」に応じた、治療の流れを解説します。

①メトトレキサート内服しているが、関節炎症状が強く残っている場合

こういった場合、大きく分けると、

① 生物学的製剤やJAK阻害薬を併用し、治療を強化する

② csDMARDs(効果が少しマイルドな抗リウマチ薬)を併用する。

の2つの方法を取ることが多いです。

生物学的製剤には、メトトレキサートとの併用が望ましい薬と、併用を必ずしも必須としない薬があります。

メトトレキサートが使用できる場合には、メトトレキサート併用の方向で治療方法を組み立てていくことが多いです。

それぞれの薬剤のエビデンス、使用方法、ニーズに合わせ、治療方法を決めていきます。

メトトレキサートが内服できない場合

当院にも時々いただく相談で

「メトトレキサートが飲めないが、治療方法をどうしたらよいか」

という質問をいただきます。

メトトレキサートが使用できない基礎疾患や、使用できない患者様には、使用しない場合の治療方法がありますので、

そちらを提案していきます。

今は、メトトレキサートなしで効果が期待できる薬剤も増えてきており、いわゆる「単剤治療」といい、メトトレキサートなしの場合の治療成績を各種の薬剤が報告してきております。

患者様のニーズや状態に合わせ、最新の情報を提供し、治療方針を一緒に検討していきます。

生物学的製剤と薬価と社会保障へのリンク

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