柴陥湯の特徴
咳をするたびに胸が痛い、痰が切れにくい場合に用いられる漢方薬です。昔から、強い咳・長引く咳に使用されます。心窩部につかえ感があり、胸苦しい場合に効果があります。
強い咳が出て、痰の切れにくさで、胸痛があるものなので、咳喘息やマイコプラズマ肺炎などで、胸痛もあるような咳には共通して柴陥湯が使用されます。長引く咳で、麦門冬湯で少し良くなったけれどまだ咳があり、胸の痛みもあるような時には柴陥湯を使用すると咳の改善を実感された患者さんを経験します。
小柴胡湯(ショウサイコトウ)と小陥胸湯(ショウカンキョウトウ)を合わせた漢方薬です。
「本朝経験方(ホンチョウケイケンホウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 胸痛がある
- 痰が切れにくい
- 咳が強い
- 胃部、季肋部に抵抗圧痛がある
柴陥湯の作用
柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、黄連(オウレン)は熱を冷まし、炎症を抑える作用があります。
半夏(ハンゲ)、栝楼仁(カロニン)は痰を排出する作用があります。人参(ニンジン)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)は胃腸の働きを助けて、気を補い、呼吸を整える作用があります。
臨床では、胃痛、胃酸過多、胆石、肋膜炎、肋間神経痛の治療に応用されています。
柴陥湯の成分
柴陥湯は、下記の9種類の生薬からなります。
・柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」を冷まし、「気」のうっ滞を除く作用があります。
・半夏(ハンゲ):サトイモ科カラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、痰や咳を鎮め、吐き気を抑える作用があります。
・黄芩(オウゴン):シソ科コガネバナの根茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラや炎症を抑える作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科のナツメの果実。料理にも使われるナツメの実です。薬効は、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させたりする作用があります。
・人参 (ニンジン) :ウコギ科のオタネニンジンの根をそのまま、または湯通しして乾燥させたもの。薬効は、消化機能を高め、「気」の生成をますことにより、体力を回復させる作用があります。
・黄連(オウレン):キンポウゲ科オウレンの根茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラや炎症を抑える作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
・生姜(ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め消化機能を整える作用があります。
・栝楼仁(カロニン):ウリ科キカラスウリなどの種子。薬効は、熱を除き、痰を鎮める作用があります。
柴陥湯の副作用
配合生薬の人参により、のぼせ、湿疹、蕁麻疹、皮膚炎の悪化などの症状があらわれる可能性があります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
柴陥湯の服用方法
ツムラ柴陥湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。