香蘇散の特徴
軽い発散作用があり、体の熱や腫れ、あるいは痛みをやわらげる働きをします。かぜのひき始めによく用いられる漢方薬です。軽い悪寒や頭痛、鼻づまり、食欲不振、蕁麻疹などの際に好んで使用されます。
麻黄(マオウ)を含まないため、葛根湯(カッコントウ)などで食欲不振をおこすような人や高齢者、高血圧の方などにも適しています。
中国・宋時代の「和剤局方(ワザイキョクホウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力があまりない
- 胃腸が弱い
- 風邪の初期
香蘇散の作用
主薬の香附子(コウブシ)と蘇葉(ソヨウ)から名付けられました。香附子には血行を良くすることで痛みを取り去る作用があります。また、蘇葉には健胃、利尿、発汗、鎮咳などの働きがあります。
香蘇散は、「気」をめぐらす作用があるため、ストレス性の病気にもよく用いられています。胃腸症、過敏性腸症候群、神経症、自立神経失調症、心因性頭痛、不眠、不安、抑うつなどに処方されます。さらに、出産直後のマタニティーブルーと呼ばれる症状にも処方されます(主治医と相談しましょう)。
精神科領域で、咽喉頭異常感症に有効であるとの報告もあります。(日本東洋医学会1986~2002)
また、婦人科領域では、胃腸が弱いと気が不足して妊娠する状態がつくれないと考え、胃腸を丈夫にする目的で香蘇散が処方されることもあります。
香蘇散の成分
香蘇散は、5種類の生薬からなります。
・香附子(コウブシ):カヤツリグサ科ハマスゲの根茎を乾燥させたもの。薬効は、うつ気分を改善し、痛みを止める作用があります。
・蘇葉(ソヨウ):シソ科シソの葉を乾燥させたもの。薬効は、皮膚を温め、発汗させ、胃腸の機能を改善する作用があります。また、蕁麻疹を抑える作用もあります。
・陳皮(チンピ) :ミカン科ウンシュウミカンの果皮を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、痰や咳を鎮める作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科ウラルカンゾウの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、のどの痛みを止める作用があります。
・生姜(ショウキョウ) :ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの。薬効は、腹部を温め、発汗させ、嘔気を抑える作用があります。
香蘇散の副作用
配合生薬の蘇葉で発疹がでる場合があります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
香蘇散の服用方法
ツムラ香蘇散エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5 gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。
香蘇散は、体をあたためる「散寒剤」ですので、お湯で溶かし、あたためて服用するとより効果的です。