桂枝加芍薬湯の特徴
おなかが張って、腹痛や排便異常を起こしているときに用います。体を温めて、緊張をほぐす作用があります。虚弱体質で、ふだんから胃腸が弱く、冷え性の人の下痢や便秘に効果があります。
桂枝湯(ケイシトウ)の処方を基本とし、芍薬(シャクヤク)の量を増やし、鎮静・鎮痛・けいれんを抑える効果を高めた漢方薬です。
中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 比較的体力が低下している
- 腹部膨満感がある
- 下痢や便秘を繰り返す人
桂枝加芍薬湯の作用・効果
桂枝湯と同じ組成ですが、桂枝加芍薬湯の名前の由来となっているように芍薬(シャクヤク)が1.5倍量含まれています。芍薬(シャクヤク)は痛みを和らげる作用があります。桂枝(ケイシ)は発汗、発散作用があります。
生姜(ショウキョウ)は体をあたためる作用があります。甘草(カンゾウ)は炎症を抑え、他の生薬の調和作用があります。
過敏性腸症候群への桂枝加芍薬湯の効果
最近の臨床試験では、過敏性腸症候群の下痢型に効果があることが認められ、漢方治療の代表的な薬となっています。
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome;IBS)は機能性消化管障害(明らかな病変がわからないような胃腸障害)の代表的疾患の 1 つです。しかし、内視鏡(胃カメラや大腸カメラ)などの肉眼的な検査で異常がなくても、それより細かい細胞のレベルでは変調が認められており、例えば神経細胞でのTRPV1受容体発現が増強しているという変化などは確認されています。
この神経細胞単位で痛みを感知しやすくなってしまっているため、腸の痛みを感じやすくなっている可能性が指摘されています。Science of Kampo Medicine 漢方医学 Vol.37 No.3 2013で述べられていることとして、桂枝加芍薬湯はこの痛みを感じる刺激(TRPV1受容体による刺激)を減らし、鎮痛効果に関与しているのでは、と結んでいます。
ただし、TRPV1受容体のないマウスにも鎮痛効果が見られたことから、一つだけの薬効では説明できない効果があるかもしれないと考えられています。
桂枝加芍薬湯と小建中湯の使い分け
小建中湯の方が、より体力がない状態に向いています。
桂枝加芍薬湯の成分
桂枝加芍薬湯は、5種類の生薬からなります。
・桂皮 (ケイヒ):クスノキ科カヅラの木の樹皮を乾燥させたもの。薬効は、身体を温め、痛みを止め、血行を改善し、動悸を抑える作用があります。
・芍薬 (シャクヤク):ボタン科シャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・生姜 (ショウキョウ):ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの。薬効は、腹部を温め、発汗させ、嘔気を止める作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科ナツメの果実。薬効は、消化を補い、精神を安定させる作用があります。
・甘草 (カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める作用があります。
桂枝加芍薬湯の副作用
配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。また、過敏症として皮疹(皮膚の赤みやかゆみ)の報告もあります。
桂枝加芍薬湯の服用方法
ツムラ桂枝加芍薬湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。