治頭瘡一方の特徴
頭部や顔にできた湿疹・皮膚炎・ただれ、かさぶたに用いられる漢方薬です。分泌物の多い湿疹、とくに子供の顔や頭にできるものにも使用されます。大人の湿疹に用いることもあります。脇の下、陰部の湿疹にも用いられます。
昔、胎毒や「くさ」という小児の頭の湿疹の治療に用いられていました。治頭瘡一方の名前は、頭の瘡を治す一
つの処方という意味で、ここでいう頭の瘡とは「できもの」のことで、皮膚疾患という意味です。
次のような人に有効です。
- 体力がある人
- 分泌物が多い
- ジュクジュクした湿疹がある
治頭瘡一方の作用・効果
防風(ボウフウ)、荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)、忍冬(ニンドウ)は皮膚の湿疹や、炎症を改善し、腫れを抑える作用があります。
蒼朮(ソウジュツ)は、体内の余分な水分を排泄する作用があります。大黄(ダイオウ)、川芎(センキュウ)、紅花(コウカ)は血行をよくする作用があります。甘草(カンゾウ)は、炎症を抑え、他の生薬の調和作用があります。
アトピー性皮膚炎に対する治頭瘡一方の効果
かゆみ、化膿を伴い、便秘傾向の方にむいているとされます。臨皮52巻5号にて、アトピー性皮膚炎に対し治頭瘡一方を使用し、内服3時間で顔表面の熱を冷ます働きが示唆されたという報告があり、頭部に炎症がある皮疹に対する使用経験が多い漢方薬です。
治頭瘡一方の成分・効能
治頭瘡一方は、9種類の生薬からなります。
・防風 (ボウフウ) :セリ科ボウフウの根を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の湿疹を治し、かゆみや痛みを抑える作用があります。
・荊芥 (ケイガイ) :シソ科ケイガイの花穂の部分を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の炎症を抑え、かゆみを抑える作用があります。
・連翹 (レンギョウ) :モクセイ科レンギョウまたはシナレンギョウの果実を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、炎症を抑えて、腫れをひかせる作用があります。
・蒼朮 (ソウジュツ):キク科ホソバオケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は、関節などの水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・川芎 (センキュウ) :セリ科センキュウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・紅花(コウカ):キク科ベニバナの管状花の部分。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・忍冬(ニンドウ):スイカズラ科スイカズラの茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を抑え、痛みを緩和したり、下痢を止める作用があります。化膿性皮膚炎の治療にもちいられます。
・大黄 (ダイオウ) :タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、便秘を改善する作用、「気血(キケツ)」の過剰状態を解消して「熱」をさます作用があります。
・甘草 (カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
治頭瘡一方の副作用
虚弱体質の人には適しません。
配合生薬の大黄(主な成分はセンノサイド)は、過量投与で腹痛、下痢、胃腸障害が起こる場合があります。さらに、子宮収縮作用、下腹部の充血作用があるので、下痢傾向の人や、妊娠している人には適しません。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
治頭瘡一方の服用方法
ツムラ治頭瘡一方エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。