疎経活血湯の特徴
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛など特に腰から下の痛みで、夜間に痛みが激しくなる人に用いられる漢方薬です。お酒をよく飲む人の激しい痛みに効果があります。
疎経活血湯の「経」は血液や水分の経路のことで、その経路の疎通をよくして、血液循環・水分代謝を活発にするという意味があります。疎経活血湯は当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄からなる四物湯(しもつとう)が中心となっており、血虚の症状の1つである
皮膚の乾燥傾向のある患者により効果が期待できるとされています。
皮膚、爪、舌の所見 | 皮膚につやがない、白っぽい 爪がもろくつやがない, 唇に赤みがない、髪の毛が細く抜けやすい |
肝血の不足所見 | 目のかすみ、目の疲れ・乾燥 めまい、手足のしびれ、筋肉の痙攣 |
心血の不足所見 | 動悸、不安、不眠、多夢、健忘 |
女性の血の不足所見 | 月経の遅れ、経血過少、無月経 |
中国・明時代の「万病回春(マンビョウカイシュン)」に記されています。「経を疎し(経絡の疎通をよくする)、血を活かし湿をめぐらす)とされ、筋肉・神経の痛みが出る病気に用いられます。
次のような人に有効です。
- 体力が中くらいの人
- 皮膚が浅黒い
- むくみがある
- 足腰が冷えて痛む
疎経活血湯の作用・効果
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)は四物湯(シモツトウ)の処方で、血を補い、血行を促進する作用があります。
桃仁(トウニン)、牛膝(ゴシツ)は血流の滞りを改善させる作用があります。防己 (ボウイ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)は体の余分な水分を排泄する作用があります。
防風(ボウフウ)、白芷(ビャクシ)、威霊仙(イレイセン)、羌活(キョウカツ)、生姜(ショウキョウ)は体を温めて、関節などの冷えや痛みをとる作用があります。
竜胆(リュウタン)は熱を冷まし、炎症を抑える作用があります。甘草(カンゾウ)は炎症を抑え、他の生薬の調和作用があります。
症状によっては疎経活血湯と八味地黄丸(ハチミジオウガン)を併用することもあります。具体的には、しびれを伴う腰下肢痛の場合で冷えが強く、すでに長い間こわばりでこまっているような場合です。
坐骨神経痛に対する効果
四物湯は血の働きが低下する「血虚」に対する漢方薬であり、血虚の症状の1つである
皮膚の乾燥傾向のある患者により効果が期待できます。下半身に痛いところが集中しているような方は、疎経活血湯が向いています。
抗がん剤や帯状疱疹後による痺れに対する疎経活血湯の効果
手足のしびれや冷感などの、いわゆる(末梢神経障害)と呼ばれる症状に対し使用されます。体を温めて循環を良くし痛みを改善させるとされ、疎経活血湯は比較的時間のたった帯状疱疹後の神経痛に使用されます。また抗がん剤使用後の痺れに対しても使用されます。
疎経活血湯の成分・効能
疎経活血湯は、下記の17種類の生薬からなります。
・当帰 (トウキ) :セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。
・川芎(センキュウ):セリ科のセンキュウの根茎を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」と「気」のめぐりをよくし、体のバランスを整える作用があります。さらに鎮静作用、鎮痛作用、補血作用、強壮作用があります。
・芍薬 (シャクヤク) :ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」のめぐりをよくし、血行促進作用、筋肉のけいれんを抑える作用、鎮痛作用があります。
・地黄 (ジオウ) :ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化する作用があります。
・蒼朮 (ソウジュツ)または白朮 (ビャクジュツ) :キク科のホソバオケラ(白朮はキク科のオケラ)の根を乾燥させたもの。薬効は、「水滞」の改善し体内の水分代謝を正常にする作用があります。さらに、消化機能を高める作用もあります。
・茯苓 (ブクリョウ) :サルノコシカケ科のマツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、利水作用があり、余分な水を排泄させます。
・桃仁 (トウニン):バラ科のモモの成熟した種子を乾燥させたもの。薬効は、血液凝固抑制作用があります。腸を潤し、便秘の 改善作用もあります。
・牛膝(ゴシツ):ヒユ科ヒナタイノコズチの根を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、尿を出させ、下半身の筋力を強化する作用があります。
・陳皮 (チンピ):ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟果皮を乾燥させたもの。薬効は、「気」をめぐらし整える作用や胃もたれ、嘔吐、食欲不振などの改善作用があります。
・防己 (ボウイ):ツヅラフジ科オオツヅラフジの根茎を乾燥させたもの。薬効は、水分の循環をよくし、腫れを抑え、痛みを止める作用があります。
・防風 (ボウフウ):セリ科ボウフウの根を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の湿疹を治し、かゆみや痛みを抑える作用があります。
・竜胆(リュウタン):リンドウ科トウリンドウなどの根茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラを抑えるなどの作用があります。
・白芷(ビャクシ):セリ科ヨロイグサの根を乾燥させたもの。薬効は、温めて、痛みを止め、排膿を促す作用があります。
・生姜 (ショウキョウ):ショウガ科のショウガの根茎をそのまま乾燥させたもの。薬効は、体を温め、消化機能を整える作用があります。
・威霊仙(イレイセン):キンポウゲ科サキシマボタンヅルの根を乾燥させたもの。薬効は、湿を除き、痛みを止める作用があります。
・羌活(キョウカツ):セリ科のNotopterygium incisum Ting ex H.T.Chang又は Notopterygium forbesii Boissieuの根茎及び根を乾燥させたもの。薬効は、関節を温めて、痛みを抑える作用があります。
・甘草 (カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
疎経活血湯の副作用
配合生薬の桃仁の大量服用により、腹痛、下痢、めまい、嘔吐がでる場合があります。妊娠している人や、下痢、出血しやすい人は注意が必要です。
配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
疎経活血湯の服用方法
ツムラ疎経活血湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。