荊芥連翹湯の特徴
細菌の増殖を抑えたり、熱や腫れを発散させる作用や血液循環をよくする作用があり慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、炎症にともなうニキビ(赤いニキビ)に用いられる漢方薬です。
日本で用いる荊芥連翹湯は、中国・明時代の「万病回春(マンビョウカイシュン)」に記されている処方を独自にアレンジしたものです。
次のような人、体質の人に有効です。
- 体力は中等度以上
- 皮膚の色が浅黒く炎症を起こしやすい
- 手足の裏に脂汗をかきやすい
- お腹が緊張して張っている
荊芥連翹湯の作用・効果
荊芥(ケイガイ)、連翹(レンギョウ)、防風(ボウフウ)は皮膚の炎症、かゆみを抑える作用があります。
黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)、黄柏(オウバク)、山梔子(サンシシ)は熱や炎症をさます作用があります。
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)は血を補い、血行を改善する作用があります。
柴胡(サイコ)、薄荷(ハッカ)、枳実(キジツ)は気をめぐらす作用があります。
桔梗(キキョウ)、白芷(ビャクシ)は排膿を促す作用があります。甘草(カンゾウ)は炎症を抑え、他の生薬との調和作用があります。
薬効試験では、抗菌作用が確認されています。特にPropionibacterium acnesに対 す る抗菌作用などの報告もあり、、ニキビに有用な薬剤とされています。
にきびに対する他の漢方薬の使い分け例
体力が中等度以上ある方で、赤く化膿傾向(膿んでいるようなニキビ)のある場合に用います。
体力が中等度ある人のニキビで、特にニキビが月経前後に悪化する傾向が強い方に使用します。
やや虚弱な方で、月経前後にニキビが悪化する傾向があり、月経痛、冷え症、むくみやすいという方に使用します。
慢性副鼻腔炎に対する荊芥連翹湯の効果
耳 鼻 臨 床 86:10; 1499~1508, 1993の中で、4~8週間の投与 で自覚症状、診察所見に対す る有効性 で、著効・有効・やや有効をあわせ た 「やや有効以上の効果」 で73.7%の改善率を見せており、これは薬の気道粘液溶解剤や消炎酵素剤 と同程度の有効性が出た、という報告があります。
比較的軽い副鼻腔炎で、発症してからの罹患期間が短い慢性副鼻腔炎に有効であ ると考えられています。
荊芥連翹湯の成分・効能
荊芥連翹湯は、下記の17種類の生薬からなります。
・黄芩(オウゴン):シソ科のコガネバナの根の周りを除いて乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさましながら、「水(スイ)」の滞りを除く作用があります。
・黄柏(オウバク):ミカン科キハダの樹皮を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、炎症を抑える作用があります。
・黄連(オウレン):キンポウゲ科のオウレンなどの細い根を除いた根茎を乾燥させたもの。薬効は、「熱」を取って、「水(スイ)」の滞りを除き、膨満感をとる作用や嘔吐を改善する作用があります。
・桔梗(キキョウ):キキョウ科キキョウの根を乾燥させたもの。薬効は、咳を鎮める作用や膿を出して腫れを抑える作用があります。
・枳実(キジツ):ミカン科ダイダイの未熟果実を乾燥させたもの。薬効は、痰を鎮め、イライラを抑える作用があります。
・荊芥(ケイガイ):シソ科ケイガイの花穂を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の炎症を抑え、かゆみを抑える作用があります。
・柴胡(サイコ):セリ科のミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、「熱」をさまし、「気」のうっ滞を除く作用があります。
・山梔子(サンシシ):アカネ科のクチナシの果実を乾燥させたもの。薬効は、熱をさまし、精神を安定させる作用があります。
・地黄(ジオウ):ゴマノハグサ科のアカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化する作用があります。
・芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」のめぐりをよくし、血行促進作用、筋肉のけいれんを抑える作用、鎮痛作用があります。
・川芎(センキュウ):セリ科のセンキュウの根茎を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」と「気」のめぐりをよくし、体のバランスを整える作用があります。さらに鎮静作用、鎮痛作用、補血作用、強壮作用があります。
・当帰(トウキ):セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。
・薄荷(ハッカ):シソ科ハッカの葉の部分を乾燥させたもの。薬効は、熱をさまし、ストレスを緩和する作用があります。
・白芷(ビャクシ):セリ科ヨロイグサの根を乾燥させたもの。薬効は、温めて、痛みを止め、排膿を促す作用があります。
・防風(ボウフウ):セリ科ボウフウの根を乾燥させたもの。薬効は、皮膚の湿疹をなおし、かゆみや痛みを抑える作用があります。
・連翹(レンギョウ):モクセイ科レンギョウまたはシナレンギョウの果実です。薬効は、熱を除き、炎症を抑えて、腫れをひかせる作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
荊芥連翹湯の副作用
配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
間質性肺炎の報告があるオウゴンを含有しているため、ごくまれにですが間質性肺炎が起こる場合があります。
荊芥連翹湯の服用方法
ツムラ荊芥連翹湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。