抑肝散加陳皮半夏の特徴
「抑肝散」と同じような症状ですが、主として、中年以後でより体力が低下し、胃腸虚弱が加わっている人に用いられる漢方薬です。不眠症、神経症、更年期障害、目のピクつき、子供の夜泣き、疳症、ひきつけなどにも使用されます。
抑肝散は、時に高齢者のせん妄や、認知障害、怒りっぽいという際に使用されることがあり、病棟医をしている医師なら見たことがない医師が居ないくらい頻用されている薬ではないでしょうか。しかし、中には「肺炎や尿路感染などの感染症で入院したらせん妄になり抑肝散を使ったらせん妄は収まってきたが、その後食欲が落ちてきた」というようなこともしばしば経験します。
胃腸が弱い人や高齢者のなかには,痰湿をさばきずらい人がいるため(日本は島国で、周りを海にかこまれており痰湿になりやすいという人もいます)、そういう際には、抑肝散よりも燥湿化痰作用のある抑肝散加陳皮半夏の方が適している場合もあります。ちなみに陳皮と半夏を主とした漢方は二陳湯ですが、これは日本でよく使われる胃薬漢方である六君子湯にもそのまま入っています。
浅井南冥の「本朝経験方(ホンチョウケイケンホウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力は虚弱
- 胃腸虚弱
- 神経興奮症状
- 動悸
- 皮膚乾燥
- 肩こり
抑肝散加陳皮半夏の作用
抑肝散の作用に陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加えたものです。陳皮は、気をめぐらす作用があります。半夏は痰をとる作用があります。抑肝散に加え胃腸を守る、虚弱体質に合わせるというイメージの働きが、陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加えることで得られます。
抑肝散加陳皮半夏の成分
抑肝散加陳皮半夏は、下記の5種類の生薬からなります。
・半夏(ハンゲ):サトイモ科カラスビシャクの塊茎を乾燥させたもの。薬効は、痰や咳を鎮め、吐き気を抑える作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ):キク科ホソバオケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は、関節などの水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・川芎(センキュウ):セリ科センキュウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・陳皮(チンピ):ミカン科ウンシュウミカンの果皮を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、痰や咳を鎮める作用があります。
・当帰(トウキ):セリ科トウキの根を乾燥させたもの。薬効は、血を補い、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・柴胡(サイコ):セリ科ミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、炎症を抑え、ストレスを解除する作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
・釣藤鈎(チョウトウコウ):アカネ科カギカズラの棘の部分。薬効は、頭痛、耳鳴り、めまいを抑える作用があります。
抑肝散加陳皮半夏の副作用
配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
抑肝散加陳皮半夏の服用方法
ツムラ抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。