柴胡清肝湯の特徴
皮膚が浅黒く、腹直筋が緊張し、触るとくすぐったがる場合に用いられる漢方薬です。体質改善の目的で他の処方と併用すると効果があります。具体的には、神経症、慢性扁桃腺炎、湿疹、小児腺病質者(病気になりやすい子供の総称)などに用いられています。
柴胡清肝湯は主として、胸部から上の炎症を治す漢方薬です。炎症がへそから下にある場合は、竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)を用います。
温清飲(ウンセイイン)に柴胡(サイコ)、連翹(レンギョウ)、牛蒡子(ゴボウシ)、栝楼根(カロコン)、薄荷(ハッカ)、甘草(カンゾウ)を加えたものです。温清飲は皮膚が乾燥して、熱感があり、のぼせがある場合に用いられますが、柴胡清肝湯は、この症状に加え、解毒作用、炎症作用のある生薬を加えることにより、慢性炎症による発熱を抑えたり、体力が落ちている子供の体質を改善のために処方されることがあります。
大正から昭和の初期に活躍した森道伯が創成した「一貫堂方(イッカンドウホウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 皮膚が浅黒く、くすんでいる
- やせ型
- 神経質
- 偏食
- 腺病質で発育が遅い
- くすぐったがり
柴胡清肝湯の作用
柴胡(サイコ)、薄荷(ハッカ)は熱をさまし、イライラや精神のたかぶりを鎮める作用があります。
黄芩(オウゴン)、黄柏(オウバク)、山梔子(サンシシ)は熱をさまして炎症を抑える作用があります。
連翹(レンギョウ)、牛蒡子(ゴボウシ)、栝楼根(カロコン)、桔梗(キキョウ)、甘草(カンゾウ)は炎症や腫れを抑え、膿の排出を促進する作用があります。
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)は血を補い、血行を改善する作用があります。
柴胡清肝湯の成分
柴胡清肝湯は、下記の15種類の生薬からなります。
・柴胡(サイコ): セリ科ミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、炎症をおさえ、ストレスを解除する作用があります。
・黄芩(オウゴン):シソ科コガネバナの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラや炎症を抑える作用があります。
・黄柏(オウバク):ミカン科キハダの樹皮を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、炎症を抑える作用があります。
・黄連(オウレン): キンポウゲ科オウレンの根茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、イライラや炎症を抑える作用があります。
・栝楼根(カロコン):ウリ科キカラスウリなどの根を乾燥させたもの。薬効は、胃を整え、乾燥を潤す作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
・桔梗(キキョウ):キキョウ科キキョウの根を乾燥させたもの。薬効は、痰を鎮めて、咳を止め、膿を出して腫れを抑える作用があります。
・牛蒡子(ゴボウシ):キク科ゴボウの果実。薬効は、皮膚の熱をさまし、のどの痛みや痰、咳を止める作用があります。
・山梔子(サンシシ):アカネ科クチナシの果実。薬効は、熱を除き、イライラを抑える作用があります。
・地黄(ジオウ):ゴマノハグサ科アカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血液循環を良くする作用があります。
・芍薬(シャクヤク):ボタン科シャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・川芎(センキュウ):セリ科センキュウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・当帰(トウキ):セリ科トウキの根を乾燥させたもの。薬効は、血を補い、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・薄荷(ハッカ):シソ科ハッカの葉。薬効は、熱を冷まし、ストレスを緩和する作用があります。
・連翹(レンギョウ):モクセイ科レンギョウまたはシナレンギョウの果実。薬効は、熱を除き、炎症を抑えて腫れをひかせる作用があります。
柴胡清肝湯の副作用
配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
柴胡清肝湯の服用方法
ツムラ柴胡清肝湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。柴胡清肝湯は「清熱剤」なので、お湯に溶かしたあと、冷やしてから服用すると効果的です。