麻杏薏甘湯の特徴
慢性の関節痛、筋肉痛がある人に用いられる漢方薬です。夕方になると痛みが特にひどくなったり、熱も上がってくる人や、皮膚が乾燥し、頭にフケが多い人に効果的です。
急性の関節痛で、下肢が浮腫んでいる人には、越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)が適します。
皮膚の乾燥はないが、関節の動きが悪く、手足が冷える人には、桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)が適します。
中国・漢時代の「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力は中程度
- 皮膚が乾燥している
- 慢性の関節痛、筋肉痛がある
- 汗は出ない
麻杏薏甘湯の作用
薏苡仁(ヨクイニン)は腫れを抑える作用があります。麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)は水分代謝を促進する作用があります。甘草(カンゾウ)は胃腸を助け、他の生薬との調和作用があります。
臨床では、関節リウマチで筋肉、関節痛が強い時や、肌荒れやのぼせの治療にも使われています。
麻杏薏甘湯の成分
麻杏薏甘湯は、下記の4種類の生薬からなります。
・薏苡仁(ヨクイニン):イネ科ハトムギの種子。薬効は、膿をだし、腫れを抑え、消化を整える作用があります。
・麻黄(マオウ):マオウ科マオウの茎を乾燥させたもの。薬効は、発汗作用、気管を広げ、咳を止める作用があります。交感神経や中枢神経を興奮させる作用のあるエフェドリン類が含まれているため、高齢者や心臓病・高血圧のある人には注意が必要です。
・杏仁(キョウニン):バラ科アンズの種子。薬効は、咳を止め、腸を潤し、便通をよくする作用があります
・甘草(カンゾウ):マメ科の甘草の根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
麻杏薏甘湯の副作用
麻黄が含まれていますので、不眠、発汗過多、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が起こる可能性があります。高血圧や心臓病の既往歴のある人は注意が必要です。麻黄を含む他の漢方薬、エフェドリン類含有製剤、MAO阻害薬、カテコールアミン製剤、キサンチン系製剤を服用している人の併用は注意してください。
配合生薬に薏苡仁が含まれているので、心窩部不快感、下痢、便秘の症状が出る可能性があります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
麻杏薏甘湯の服用方法
ツムラ麻杏薏甘湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。