炙甘草湯の特徴
動悸や息切れがあり、体力が衰えている方の不整脈に使用されます。心臓神経症、弁膜症などにも応用されます。
主薬の炙甘草は、火であぶった甘草のことをいいます。東洋医学では、甘草は火を通すことで、体力を補う作用が強まるとされます。
中国・漢時代の「傷寒論(ショウカンロン)」や「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力が虚弱
- 動悸や息切れがある
- 下腹部が軟弱
- 手足がほてる
- 皮膚が乾燥している
炙甘草湯の作用・効果
炙甘草(シャカンゾウ)、人参(ニンジン)大棗(タイソウ)は滋養作用があります。
麦門冬(バクモンドウ)、地黄(ジオウ)、阿膠(アキョウ)、麻子仁(マシニン)は体液を補って潤す作用があります。
桂皮(ケイヒ)、生姜(ショウキョウ)は体を温めて気をめぐらせる作用があります。
炙甘草湯の不整脈に対する効果
炙甘草湯は、復脈湯とも呼ばれるように、昔から不整脈に対して利用されてきた漢方薬です。期外収縮が最も使用されるケースですが、応用として発作性頻拍や軽い心不全(軽症)などにも使用されることがあります。
ただし、実際の臨床現場では、使用頻度は下がっています。というのは、西洋医学での薬で副作用の少なく効果の良い物が増えてきたからです。また、不整脈が起こらないようにするアブレーションと呼ばれる治療法も発達し、治療方法が増えてきているためです。
炙甘草湯の成分・効能
炙甘草湯は、9種類の生薬からなります。
・炙甘草(シャカンゾウ):マメ科ウラルカンゾウの根を炒ったもの。薬効は、消化を整え、痛みを止める作用があります。
・人参 (ニンジン):ウコギ科オタネニンジンの根を乾燥させたもの。薬効は、免疫機能を賦活し、体力を増進し、消化を補い、体液の産生を促進し、精神を安定にする作用があります。
・桂皮 (ケイヒ) :クスノキ科カヅラの木の樹皮を乾燥させたもの。薬効は、身体を温め、痛みを止め、血行を改善し、動悸を抑える作用があります。
・阿膠 (アキョウ):ウマ科ロバの皮。ゼラチン。薬効は、血を補い、止血作用があります。
・麦門冬 (バクモンドウ):ユリ科ジャノヒゲの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、肺を潤して、咳を止め、体液の産生を促進し、便通をよくする作用があります。
・麻子仁(マシニン):アサ科アサの果実を蒸したもの。薬効は、腸を潤し、便通をよくする作用があります。
・地黄 (ジオウ):ゴマノハグサ科アカヤジオウの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血液循環をよくする作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科ナツメの果実。薬効は、消化を補い、精神を安定させる作用があります。
・生姜 (ショウキョウ) :ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの。薬効は、腹部を温め、発汗させ、嘔気を抑える作用があります。
炙甘草湯の副作用
体力のある人は適しません。
配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
特に、炙甘草等は甘草が3g含まれているため、偽性アルドステロン症には特に注意が必要です。
参考;漢方薬に含まれる甘草の含有量と偽性アルドステロン症一覧
炙甘草湯の服用方法
ツムラ炙甘草湯エキス顆粒によると、通常、成人1日9.0 gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。