人参養栄湯の特徴
病後や産後の疲労、慢性疾患による疲労倦怠、貧血、虚弱体質、食欲不振、寝汗、手足の冷えに対して用いられる漢方薬です。滋養強壮や血行を良くする生薬が配合され、体力を補う目的で使用されます。
鉄欠乏性貧血の人で、鉄剤で胃腸障害の副作用のために服用できない場合に、人参養栄湯単独で使用し改善をみた報告があります。
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)から川芎(センキュウ)を取って、五味子(ゴミシ)、陳皮(チンピ)、遠志(オンジ)を加えたものです。
中国・宋時代の「和剤局方(ワザイキョクホウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 全身が衰弱している
- 貧血
- 食欲不振
- 手足が冷える
- 皮膚が乾燥する
人参養栄湯の作用
人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)は胃腸を強くして、体力を増進する作用があります。
当帰(トウキ)、芍薬(シャクヤク)、地黄(ジオウ)は血行を促進する作用があります。
遠志(オンジ)、五味子(ゴミシ)は精神の安定化作用があります。
陳皮(チンピ)は気を巡らせる作用があります。
桂皮(ケイヒ)は体を温める作用があります。
臨床試験では、再生不良貧血の症例131例に対し、16週間にわたって人参養栄湯を投与したところ、症状が改善されたとの報告があります(参考 臨床医薬,10 1994)
人参養栄湯の成分
人参養栄湯は、下記の12種類の生薬からなります。
・地黄(ジオウ):ゴマノハグサ科の根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、「腎」の働きを活性化します。止瀉作用、緩下作用、利尿作用があります。
・当帰(トウキ):セリ科トウキの根を乾燥させたもの。薬効は、血を補い、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・白朮(ビャクジュツ):キク科オケラの根茎を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、水分の循環を良くする作用があります。
・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核。薬効は、利尿作用、健胃作用があります。また、浮腫、めまい、胃内停水、精神安定のために用いられます。
・人参(ニンジン):ウコギ科オタネニンジンの根を乾燥させたもの。薬効は、免疫機能を賦活し、体力を増進する作用があります。
・桂皮(ケイヒ):クスノキ化のカツラの木の樹皮。薬効は、体を温め、痛みを止め、血行をよくする作用があります。
・遠志(オンジ):ヒメハギ科イトヒメハギの根を乾燥させたもの。薬効は、精神を安定させ、痰を鎮める作用があります。
・芍薬(シャクヤク):ボタン科シャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、血行をよくする作用、痛みを止める作用があります。
・陳皮(チンピ):ミカン科ウンシュウミカンの果皮。薬効は、消化を整え、咳や痰を鎮める作用があります。
・黄耆(オウギ):マメ科キバナオウギの根を乾燥させたもの。薬効は、気を補い、汗をとめ、腫れを抑える作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科カンゾウの根を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、痛みを止める作用、のどの痛みを止める作用があります。
・五味子(ゴミシ):マツブサ科チョウセンゴミシの果実。薬効は、咳を止め、体液の産生を促す作用があります。
人参養栄湯の副作用
配合生薬の地黄により、胃腸が虚弱な人が用いると、食欲不振、下痢などの胃腸障害が起こることがあります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
人参養栄湯の服用方法
ツムラ人参養栄湯エキス顆粒によると、通常、成人1日9.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。