酸棗仁湯の特徴
体力が低下して、心身が疲労しているのに眠れない場合に用いられる漢方薬です。不安神経症、自律神経失調症、めまいの治療にも用いられます。
中国・漢時代の「金匱要略(キンキヨウリャク)」に記されています。くたびれ果てて逆に目が冴えて眠れないときの処方とされています。
次のような証の人に用いられます。
- 虚弱体質
- 心身疲労
- 不眠
- 抑うつ、不安、焦燥感
酸棗仁湯の作用・効果
酸棗仁(サンソウニン)、茯苓(ブクリョウ)は精神を落ち着かせる作用があります。
川芎(センキュウ)は血を補い、血行を改善する作用があります。
知母(チモ)は熱をさます作用があります。
甘草(カンゾウ)は緊張を緩和し、他の生薬との調和作用があります。
効果が出るまでの期間は、個人によってばらつきがあります。比較的早く効く場合もありますが、3週間程度かかるという医師もいます。抑肝散との使い分けとしては、抑肝散はイライラや興奮で眠れない場合に用い酸棗仁湯は疲れすぎて眠れない人に用いられます。
睡眠時遊行症に対する酸棗仁湯の効果
睡眠遊行症は俗にいう、ねぼけ・夢遊病とよばれる病態で、眠っている間に行動異常が起こってしまう病気で、小児では多いですが成人では減っていくとされています。原因ははっきりしておらず、ベンゾジアゼピン系の薬剤や抗うつ剤などが報告されています。酸棗仁湯は、睡眠に対する有効性や悪夢に対しての有効性もあり、使用して良い効果を得たという報告があります。(参考:日東医誌 Kanpo Med vol.67 No.1,2016)
被災地における酸棗仁湯の働きと効果に対する報告
震災後、医師らにより持参した主な漢方薬という項目での報告があり、その中に酸棗仁湯が含まれています。酸棗仁湯は疲れや心身疲労、手足のほてりを伴う不眠症に適しており、そういった意味では疲れや緊張が溜まりやすい環境での不眠には適していると考える医師が多いのかもしれません。
酸棗仁湯の成分・効能
酸棗仁湯は、下記の5種類の生薬からなります。
・酸棗仁(サンソウニン):クロウメモドキ科サネブトナツメの種子。薬効は、精神を安定させ、不眠を治す作用があります。
・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・川芎(センキュウ):セリ科センキュウの根茎を乾燥させたもの。薬効は、血液循環をよくし、痛みを止める作用があります。
・知母(チモ): ユリ科ハナスゲの根茎を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、体液の産生を促す作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科カンゾウの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、消化を整え、痛みを止める作用があります。
酸棗仁湯の副作用
下痢または下痢傾向のある人は慎重に服用してください。
配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
酸棗仁湯の服用方法
ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。