加味帰脾湯の特徴
虚弱体質で、貧血症状、不眠症、精神不安があり、さらに微熱が出る人に用いられる漢方薬です。
「済生全書(サイセイゼンショ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力が虚弱
- 貧血ぎみ
- 精神不安、抑うつ
- 微熱、寝汗がでる
加味帰脾湯の作用
帰脾湯に熱を冷ます作用のある山梔子(サンシシ)と精神不安を改善する柴胡(サイコ)を加えた処方です。
当帰(トウキ)、酸棗仁(サンソウニン)、竜眼(リュウガン)は、血を補い、遠志(オンジ)とともに、精神を安定させて、不眠、不安を改善する作用があります。
木香(モッコウ)は気を巡らせる作用があります。
人参、黄耆(オウギ)、は体力を増進する作用があります。
白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)は胃腸の働きを助ける作用があります。
加味帰脾湯の成分
加味帰脾湯は、14種類の生薬からなります。
・人参(ニンジン):ウコギ科オタネニンジンの根を乾燥させたもの。薬効は、免疫機能を賦活し、体力を増進し、消化を補い、体液の産生を促進し、精神を安定にする作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ):キク科ホソバオケラ(白朮はオケラ)の根茎を乾燥させたもの。薬効は、関節などの水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・茯苓(ブクリョウ):サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたもの。薬効は、水分の循環をよくし、消化を整える作用があります。
・甘草(カンゾウ):マメ科ウラルカンゾウの根を乾燥させたもの。薬効は、熱を除き、のどの痛みを止める作用があります。
・生姜(ショウキョウ):ショウガ科ショウガの根茎を乾燥させたもの。薬効は、腹部を温め、発汗させ、嘔気を抑える作用があります。
・大棗(タイソウ):クロウメモドキ科ナツメの果実。薬効は、消化を補い、精神を安定させる作用があります。
・酸棗仁(サンソウニン):クロウメモドキ科サネブトナツメの種子。薬効は、精神を安定させ、不眠を治す作用があります。
・竜眼(リュウガン):ムクロジ科リュウガンの果肉。薬効は、精神安定作用があります。
・遠志(オンジ):ヒメハギ科イトヒメハギの根を乾燥させたもの。薬効は、精神を安定させ、痰を鎮める作用があります。
・当帰(トウキ):セリ科トウキの根を乾燥させたもの。薬効は、血を補い、血液循環をよくし、痛みをとめる作用 があります。
・黄耆(オウギ):マメ科キバナオウギの根を乾燥させたもの。薬効は、気を補い、汗を止め、腫れを抑える作用があります。
・柴胡(サイコ):セリ科ミシマサイコの根を乾燥させたもの。薬効は、炎症を抑え、ストレスを軽減する作用があります。・山梔子(サンシシ):アカネ科クチナシの果実。薬効は、熱を除き、イライラを抑える作用があります。
・木香(モッコウ): キク科モッコウの根を乾燥させたもの。薬効は、消化を整え、腹痛を止め、下痢を止める作用があります。
加味帰脾湯の副作用
体力のある人は適しません。
配合生薬の酸棗仁(サンソウニン)を胃腸が虚弱な人が服用すると、食欲不振、腹痛、下痢が起こる可能性があります。
配合生薬の遠志(オンジ)によって、血糖コントロールの指標のひとつである血中のAG(1,5-アンヒドログルシトール)の数値に影響することがあります。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
加味帰脾湯の服用方法
ツムラ加味帰脾湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5 gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。