薏苡仁湯の特徴
四肢の関節に溜まった水分を取り去り、熱を発散させる作用があるため、腫れや痛みに用いられる漢方薬です。慢性化した関節リウマチによくもちいられます。関節痛、筋肉痛、関節リウマチ、漿液性関節炎。筋肉リウマチ、結核性関節炎にも使用されます。
麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ)より症状が重い人に用いられます。
中国・明時代の「明医指掌(メイイシショウ)」に記されています。
次のような人に有効です。
- 体力は中程度
- 筋肉、関節が腫れている
- 熱感がある
- 発熱している
薏苡仁湯の作用
薏苡仁(ヨクイニン)、蒼朮(ソウジュツ)、麻黄(マオウ)は、体の無駄な水分を追い出して痛みをやわらげる作用があります。当帰(トウキ)、芍薬(ショウヤク)は血を補い、血行を改善する作用があります。桂皮(ケイヒ)は体を温め、気をめぐらせる作用があります。甘草(カンゾウ)は、炎症を抑え、他の生薬との調和作用があります。
薏苡仁湯の成分
薏苡仁湯は、下記の7種類の生薬からなります。
・薏苡仁(ヨクイニン):イネ科ハトムギの種皮を除いた種子。薬効は、滋養・利水・排膿・強壮作用があります。むくみをとり、関節痛や、神経痛を改善します。
・麻黄(マオウ):マオウ科のシナマオウの茎を乾燥させたもの。薬効は、発汗・鎮咳作用、気管支のけいれんを抑制する作用があります。交感神経系を興奮させる作用があるため、高齢者や心臓病、高血圧の人は注意が必要です。
・桂皮(ケイヒ) :クスノキ科のニッケイの根を乾燥させたもの。薬効は、「気」の巡りをよくし、発汗によって体表の毒を除く働きがあります。解熱作用、鎮静作用、血行促進作用、抗血栓作用があります。
・蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ):キク科のホソバオケラ(白朮はキク科のオケラ)の根を乾燥させたもの。薬効は、「水滞」の改善し体内の水分代謝を正常にする作用があります。さらに、消化機能を高める作用もあります。
・当帰(トウキ) :セリ科のトウキの根を湯通ししてから乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」の不足を補い、巡りを良くします。
・芍薬(シャクヤク):ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。薬効は、「血(ケツ)」のめぐりをよくする作用があり、血行をよくします。さらに、筋肉のけいれんを鎮めたり、鎮痛作用もあります。
・甘草(カンゾウ) :マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。薬効は、疼痛緩和の他、緊張を緩める働きがあります。
薏苡仁湯の副作用
配合生薬の薏苡仁によって心窩部不快感、下痢、便秘が起こる場合があります。体がひどく弱っている人や発汗の多い人には適しません。胃腸の調子が悪い人も慎重に用いるようにします。
麻黄が含まれていますので、不眠、頻脈、動悸、血圧上昇などの副作用が起こる可能性があります。高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。
エフェドリン類含有製剤、甲状腺製剤(チラーヂン)、カテコールアミン製剤(アドレナリン、イソプレナリン)、テオフィリン(テオドール)を服用している人で麻黄湯を服用する際は注意してください。
また、配合生薬の甘草(主な成分はグリチルリチン酸)の大量服用により、むくみが出たり、血圧が上る「偽性アルドステロン症」と呼ばれる症状がでる可能性があります。甘草が含まれている他の漢方薬や、グリチルリチン酸を長期で服用する際は注意が必要です。
薏苡仁湯の服用方法
ツムラ薏苡仁湯エキス顆粒によると、通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口服用するとされています。年齢、体重、症状により適宜増減してください。
基本的に漢方エキス製剤は、お湯に溶かしてから服用すると良い効果が期待されます。