杏仁とは、バラ科の成熟したホンアンズ又はアンズの種子を乾燥させた、止咳平喘薬に分類される生薬の一つです。中国、北朝鮮、日本を産地とし、青酸配糖体、ステロイド、脂肪油、酵素を成分としています。
また、キョウニン油はバラ科の成熟したホンアンズ又はアンズの種子を圧搾して得た脂肪油で、ポマードやコールドクリームなどに用いられています。
【中医学的に見る杏仁の効能】
杏仁は肺、大腸を帰経とし、味は苦、性は微温とする生薬です。風邪による痰を伴う咳や、喘息咳の症状に効果を示します。また、体が乾燥して腸に元気がない為にコロコロ状の便しかでない便秘時には腸管内を潤滑する役割を果たします。
なお青酸配糖体を有している為、多量に摂取しないでください。特に子供には慎重に使用してください。
【杏仁が使用される主な漢方薬】
- 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ):炎症による咳、痰、呼吸困難、喘息に有効です。杏仁はこの漢方薬において、止咳・去痰作用を発揮しています。
- 潤腸丸(ジュンチョウトウ):体液が減少したことにより、腸内が乾いて潤滑性を失った為にコロコロ状の便しか出ない場合の便秘症状に用いられます。老人や産後の女性に適しているといわれています。杏仁はこの漢方薬において、潤下作用を発揮しています。
- 五虎湯(ゴコトウ):生薬「石膏」のページを参照して下さい。杏仁はこの漢方薬において、止咳・去痰作用を発揮しています。
- 麻黄湯(マオウトウ):生薬「麻黄」のページを参照して下さい。杏仁はこの漢方薬において、止咳・去痰作用を発揮しています。
【西洋医学的に見る杏仁】
青酸は微量で呼吸興奮を起こさせます。また、キョウニンエキスはヒスタミンによる気管支平滑筋収縮を抑制する為、呼吸困難を改善し鎮咳します。