つわりの漢方薬(効果・使い分け・避けた方がよい生薬)

つわり症状の特徴

妊娠5~6週ころから頭痛、吐き気、嘔吐、嗜好の変化、食欲不振、倦怠感の症状をつわり(妊娠悪阻)といいます。

妊娠している人の80%近くにみられ、妊娠中期の15週頃から症状が落ち着いてくることが多いです。

つわりの原因は不明ですが、妊娠によりからだのホルモン環境が変化することによって、自律神経系に影響を及ぼすためだと考えられています。

一般的に、妊娠中は、薬の成分が胎盤を通して胎児の体内に入り、悪影響を及ぼす可能性があるため、薬の服用は慎重に行う必要があります。中には、妊娠中には「禁忌」とされている薬も少なくありません。

西洋医学の治療

上記に示した理由により、西洋薬では妊娠中に使えない薬が多い、または薬を避けようとする患者さん・医療者も多いため、西洋薬でつわり症状を処置することは多くありません。

症状が軽い場合は、食事の内容や回数を変えたり、気分転換をするなどで対処をします。症状が重く、食事も水分も取れない場合は、点滴によって栄養補給や、水分補給を行います。

漢方医学の治療

漢方薬には「安胎薬」と呼ばれて、妊娠した時に用いられる薬があります。つわりをはじめとする妊娠中の症状や、風邪、膀胱炎などの治療で、西洋薬を避けたい場合によく用いられています。ただ、漢方薬の中でも妊娠中は避けるべき薬もあるため、妊娠中に使う場合には、漢方に詳しい産婦人科医に相談することが大切です。

妊娠中に注意を要する生薬

  • 大黄:胎盤が充血して流産を引き起こす可能性があります(大黄甘草湯、調胃承気湯など)
  • 紅花:子宮筋の緊張により早産、流産を引き起こす可能性があります(治頭瘡一方、通導散など)
  • 牡丹皮:胎盤が充血して流産を引き起こす可能性があります(加味逍遙散、八味地黄丸など)
  • 桃仁:過量投与で腹痛、下痢、嘔吐がでることがあります(麻杏甘石湯、大黄牡丹皮湯など)
  • 牛膝:子宮筋の緊張により早産、流産を引き起こす可能性があります(牛車腎気丸、八味地黄丸など)
  • 芒梢:過量投与で腹痛、下痢がでることがあります(調胃承気湯、大黄牡丹皮湯など)
  • 附子:中毒症状(吐き気、動悸、冷や汗、不正脈、血圧低下)がでることがあります(八味地黄丸、真武湯など)

つわりがひどい場合は、小半夏加茯苓湯や半夏厚朴湯がよく用いられます。

つわりを軽くし、むくみや貧血の改善、子宮の収縮を抑えて、流・早産を予防する効果のある当帰芍薬散はよく用いられ、漢方の領域では代表的な安胎薬と呼ばれています。

また、吐き気に加えて、むくみがある場合は、五苓散、柴苓湯が用いられます。

選択肢になる漢方薬は世の中にあります。そして使用するかどうか、使用してよいかどうかは安全性の観点からの評価が最も大事ですので、主治医の先生と相談してみましょう。

つわりに対して用いられる主な漢方処方

以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。

  • 体力が中程度の人
  • のどや食道のつかえ感、めまい、嘔吐→半夏厚朴湯
  • 吐き気、嘔吐、胃の膨満感→茯苓飲合半夏厚朴湯
  • 体力がない人
  • 頭痛、発熱、胃腸虚弱、腹痛、下痢→桂枝人参湯
  • 貧血、めまい、疲労感、下腹部痛→当帰芍薬散
  • 胃腸虚弱、吐き気、嘔吐、食欲不振、胃もたれ→人参湯
  • 体力無関係
  • 吐き気、嘔吐、胃のつかえ感→小半夏加茯苓湯
  • のどの渇き、むくみ、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢→五苓散

 
ライフスタイルで注意すること

妊娠中は特別なことはしなくてもよいですが、なるべく薬の服用を控え、必要のないX線なども控えることが大切です。また運動不足気味になることが多いため、適度に運動をすることが大切です。急激な体重増加に注意しながら、必要な栄養は取るように心がけることが大切です。少量をこまめに取る、という食事方法が

参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方薬の服薬指導(南山堂)

  • URLをコピーしました!
目次