痛風・高尿酸血症の特徴
痛風とは、血中の尿酸の濃度が高くなることで、足の親指の付け根や足首などの関節に激痛が走る症状です。生活習慣病の一つで、30歳代、40歳代の働き盛りの男性に見られることの多い病気です。
血中尿酸濃度が7mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は自覚症状はありませんが、長い間、尿酸値が高い状態が続くと、体内の余分な尿酸同士が結合し、関節内で針状に結晶化し、徐々に蓄積されていきます。そしてこの血症が原因で起こるのが「痛風発作」と呼ばれている、独特の関節炎が起こります。
なぜ足先などにできやすいか、というと、尿酸の結晶は温度が下がると析出するためです。そのため、足先などの冷たい関節に析出し、関節炎に発展するようになります。
魚卵やビール、煮干などに多く含まれているプリン体の過剰摂取や、体質的に尿酸が排泄されにくかったり、尿酸の産生が過剰になることが原因です。また、プリン体のもとは細胞です。肥満の人ではこのプリン体の元の絶対数が多いので、痛風のリスクが高くなります。
尿酸値が高い状態が続くと、腎臓に負担をかけ、障害が現れてきます。慢性腎臓病がある人は、高尿酸血症は心筋梗塞などのリスクであり、腎不全に進行するリスクでもあります。腎不全が進行すれば、透析治療が必要となります。
西洋医学の治療
生活習慣と深い関わりがあるので、まず食事や運動によって内臓脂肪を減らしたり、減量をすることが優先されます。それと同時に尿酸値を下げる薬物治療を行うことにより、痛風の発症や合併症のリスクを低くします。
薬物治療としては、尿酸が過剰に産生する人には、尿酸合成阻害薬であるアロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットを用います。
尿酸排泄力が低下している人には、尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロン、プロベネシドを用います。
また、痛風や尿酸結石を予防するために、尿をアルカリ化するウラリット(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム製剤)を用います。
実際に痛風になってしまった時の痛風発作に対しては非ステロイド抗炎症薬やステロイド薬、コルヒチンという痛風の特効薬を使いますが、市販されている普通の鎮痛薬は効果がありません(最近はロキソニンなどの非ステロイド抗炎症薬なども出ているので、必ず効かないわけではなくなってきましたが)。激痛のピークは患部を冷やして、安静にすることが大切です。
高尿酸値血症・痛風の漢方医学の治療
漢方医学では、気・血・水のバランスが崩れ、「血」が滞り、「水」が代謝されないことによるものと考えられます。したがって、高尿酸値血症に対しては、血や水の巡りをよくする漢方薬が用いられます。
また、痛風の痛みに対しては、越婢加朮湯や大柴胡湯、疎経活血湯などが用いられます。
高尿酸値血症・痛風に対して用いられる主な漢方処方
以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。
- 体力のある人
- のどの渇き、むくみ、発汗、四肢関節の腫れ、痛み、尿量の減少→超婢加朮湯
- 胸脇苦満、食欲不振、耳鳴り、吐き気、便秘→大柴胡湯
- 肥満、動悸、肩こり、のぼせ、むくみ、便秘、高血圧→防風通聖散
- 体力が中程度の人
- 手足の荒れ、関節痛、神経痛、筋肉痛→麻杏薏甘湯
- しびれ、関節痛、筋肉痛→疎経活血湯
- 体力がない人
- 貧血、関節の腫れ、痛み、神経痛、痛風→大防風湯
- めまい、手足のむくみ、冷え、下痢、しびれ→防已黄耆湯
ライフスタイルで注意すること
アルコールや清涼飲料水の取りすぎに注意をします。特にビールなどは控える方が良いです。プリン体が多く含まれている食べ物には注意をしてください。ビールは、プリン体が多いことに加えて、アルコール自体がプリン体を尿に排出する量を減らしてしまうというダブルパンチの飲み物です。
痛風の予防には水分を多めにとることが大切です。さらに、野菜を沢山摂取して、尿をアルカリ性に保つことも大切です。適度な運動、ストレスを溜め込まない生活を送ることが大切です。
参考文献
・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・痛風・高尿酸血症(法研)