症状の特徴
肥満は体脂肪が過剰に蓄積された状態です。肥満を判定する方法で、広く行われているのは、BMI(肥満指数)です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25を超えると肥満と判断されます(日本肥満学科会判定基準)。
生活習慣病の多くが肥満との関連が強く、糖尿病、高血圧や動脈硬化、痛風、脂肪肝、がんなど様々な病気が発症しやすいと言われています。
また、お腹の臓器のまわりにつく内臓脂肪が過剰に蓄積される「内臓脂肪型肥満」も病気を引き起こしやすい状態と言われています。
西洋医学の治療
まずは食事・運動療法による減量が行われます。食事療法では、脂肪・コレステロール・糖質の過剰摂取を制限し、カロリーの適正化を行います。アルコールや嗜好品の過剰摂取を控える指導をします。
極度の肥満症の治療として、マジンドールと言われる食欲抑制薬がありますが、BMIが35以上で試用期間が3ヶ月までに限定されているため、あまり広く使われることはありません。
また、ダイエットの薬として輸入代行や保険外の外来などで使用されている薬剤もあります。SGLT2阻害剤であるスーグラ®などもカロリー排出効果や糖尿病の方での減量効果が知られています。これは尿から糖分を排出する薬です。またゼニカル®という腸で脂肪を吸収するのを抑える薬などが使用されます。
これらの薬のダイエット効果については、安全性や副作用なども含め確立されたものでないため注意が必要です。
漢方医学の治療
体質改善を通して、体重の減少を促すような効能を持つとされる漢方薬が選ばれます。皮膚や筋肉が引き締まっているか、体力があるか、便秘や下痢があるか、瘀血症状があるかなどによって漢方薬を選択していきます。
具体的には、体力ががっちりしている固太りタイプには大柴胡湯や防風通聖散など、体力がなく、色白で肉が柔らかく、水太りタイプには防已黄耆湯を用います。また、腹部に瘀血がみられ、便秘傾向には桃核承気湯、通導散を用います。
肥満に対して用いられる主な漢方処方
以下に体力別に用いられる漢方処方を挙げます。
- 体力のある人
- 腹部全体ががっちりしている、腹部に脂肪が多く、便秘がち→防風通聖散
- 肩こり、胸脇苦満、高血圧、便秘がち→大柴胡湯
- 頭痛、めまい、肩こり、のぼせ、便秘、痔→桃核承気湯、通導散
- 頭重感、めまい、肩こり、のぼせ、下腹部の膨満感→桂枝茯苓丸
- 体力がない人
- めまい、発汗、手足のむくみ、冷え→防已黄耆湯
- 頭重感、血色不良、貧血、めまい→当帰芍薬散
ライフスタイルで注意すること
ライフスタイルを見直し、規則正しい食事、適度の運動が大切です。毎日体重を測り、減量を意識することも効果的です。やはり基本となるのはライフスタイルです。
参考文献
・NHKきょうの健康 漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)