漢方薬と間質性肺炎、肺の病気

漢方薬は、間質性肺炎を起こす可能性のある薬剤として知られています。オウゴンケイヒの生薬が含まれる漢方薬で起こすことが知られています。有病率は、有名な小柴胡湯で0.04%という報告があり、発症する確率は低いですが重要な副作用なのでお伝えさせていただきます。

間質性肺炎とは?漢方薬で起こる機序は?

空気を吸い込んで、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う場所が肺で、肺に炎症が起これば肺炎と呼ばれます。このガス交換を行なう場が肺胞とよばれ、ブドウの房のような肺胞が密集しています。この部分には付近に血管が豊富に含まれ、免疫細胞が集まる血管や結合組織を肺の間質と呼び、炎症細胞が集まるため炎症を起こすことがあります。その状態が間質性肺炎です。

間質性肺炎が知られるようになったきっかけとは?

小柴胡湯による薬剤性肺障害が問題となった結果、漢方薬も薬剤性肺障害の原因となることが知られるようになりました。オウゴン、ケイヒの生薬が入っているものに特に注意が必要と考えられています。間質性肺炎を起こした薬剤を再投与すると、再度肺障害が惹起されたという報告もあることから、アレルギー性の機序が考えられています。C型肝炎自体もクリオグロブリン血症や関節炎を起こすことからも、免疫学的な反応の起こしやすい状況であったことが関連あったのかもしれません。

小柴胡湯は慢性肝炎における肝機能障害の改善について、プラセポとの比較試験の成績が報告されており、その他にも吐き気、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱に効果・効能を有するとされていた薬剤です。そのためC型肝炎の方に使用されていたり、インターフェロンとの併用で使用されていました。その中で間質性肺炎の報告があり、インターフェロンとの併用禁忌剤として登録されるようになり、間質性肺炎を起こす漢方薬であることがしられるようになりました。

現在では、小柴胡湯の他に乙字湯、大柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏瀉心湯、黄連解毒湯、小青竜湯、防已黄耆湯、麦門冬湯、補中益気湯、荊芥連翹湯、潤腸湯、抑肝散、五淋散、温清飲、防風通聖散、芍薬甘草湯、竜胆瀉肝湯、二朮湯、清肺湯、柴朴湯、大建中湯、辛夷清肺湯、牛車腎気丸、清心蓮子飲、三黄瀉心湯、柴苓湯、三物黄芩湯を含む30処方で「使用上の注意」として添付文書に記されています。

 何%くらいの人が漢方薬による間質性肺炎になるか

小柴胡湯エキス製剤の市販後調査成績という報告があり、そこで有病率(飲んだ人の何%が病気を起こしたのか)のデータが出ています。参考:一使用成績調査II(1996年12月から1997年12月)一Prog Med 19:2375‒2384,1999

この研究は、全国394施設450名の医師から2,826症例を集め行われた全例調査では、登録期間中(1996年12月一1997年6月)に本剤を服用した症例で、間質性肺炎の発症率をみています。

それによると、C型慢性肝炎に使用された例が1,466例(59%)と多かったとのことですが、インターフェロンとの併用禁忌になった後の研究なので、併用はありませんでした。そういった報告では間質性肺炎の有病率は1例(0.04%)とのことでした。

薬剤性肺障害の診断・治療の手引きというところで読むことができます。

小柴胡湯に起因する薬剤性肺障害 100 例で、投与中止のみで軽快した例が 12 例、ステロイド経口投与が 29 例ステロイドパルス療法が 54 例とのことでした。ステロイドとステロイドパルスは併用することがあるので、累計はそういう影響と考えられます。90 例はすぐに治癒しているが、10 例は死亡したと報告されています。

死亡例の特徴は,症状出現から薬剤中止までの期間が長く(生存5.8 日、死亡:15.9 日)、元々の病気として肺の病気を持っていたことが多かったようです。

肺が悪い方に使用するかどうかは慎重に考慮しつつ、もし起こってしまった時にはすぐに見つけて中止する必要があります。

日常診療で注意する点と、自覚症状で注意する点

間質性肺炎が起こっていないか、漢方薬投与中の患者さんの呼吸音を聞いて、間質性肺炎で出てくるような両側肺野で fine crackle(にマジックテープを剥がすようなバリっとした音)が出てこないかを確認し、KL-6などの間質性肺炎のマーカーの確認等を行うことで早期発見ができるかもしれません。

服用している本人・周りの人は、発熱や乾性咳嗽(かわいた咳)が出現していないか、呼吸困難や息切れがないか、酸素飽和度の低下やCRP や LDH の値が変化しないかどうかというところに注意すると、より安全に使えるかと思います。

症状発現までの期間は平均 78.9 日という報告もあり、飲み始めて忘れた頃に出てくることもあるため、飲んでいるということを忘れずにいることと、もし症状があれば担当医に報告することが重要です。

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