自律神経失調症の特徴
自律神経失調症とは、交感神経と副交感神経のバランスが崩れた状態です。
自律神経は体内の臓器や器官が円滑に働くように常にコントロールをしているため、自律神経のバランスが崩れると、全身に様々な症状があらわれてきます。
自律神経失調症の原因のひとつは、体質によるもので、交感神経と副交感神経のバランスの崩れが大きく影響しています。また、性格や精神状態、環境、心理、社会的なストレスなどの大きく影響をしています。
自律神経失調症の症状は、倦怠感、めまい、不眠、食欲不振などの全身症状や、肩こり、頭痛、耳鳴り、便秘などの部分症状、そして、不安感、イライラ、憂鬱などのこころの症状がよくあらわれます。症状は、多種多様で、個人差が大きく、人によって表れ方も異なることが多いです。
検査を行っても内臓などの身体の器官の検査結果に異常はなく、検査で異常が認知されないために、「気のせいだ」とか「怠けている」などと言われて、精神的に傷ついたり、よけいに症状がひどくなったりする人か多く、漢方療法を希望される人がとても多い疾患です。
西洋医学の治療
薬物療法としては、抗不安薬、睡眠剤、抗うつ薬、自律神経調整薬、β遮断薬が使用されます。
抗不安薬は、不安や緊張、興奮を落ち着かせたり、催眠効果、パニックを抑える効果があります。抗うつ薬は、うつ状態を改善し、気分を高め、うつに伴う様々な症状を緩和します。
睡眠薬は、不眠を改善し、寝覚めを爽やかにします。寝つきが悪い場合は、短時間型作用薬、夜中や早朝に目が覚める人には中間型や長時間型が処方されます。
自律神経調整薬は、生まれつき自律神経の調節機能が乱れやすい体質の本体性自律神経失調症や更年期障害に用いられます。β遮断薬は、交感神経の興奮を抑え、動悸や緊張を緩和する作用があります。
漢方医学の治療
虚弱体質で、西洋薬では副作用が強く発言してしまう人に対して、漢方薬が非常に効果的です。自律神経失調症の人は体力的にも弱い人が多く、抗不安薬でふらついたり、眠気が強く出たりして、西洋薬では適さないことがあります。
特に老人、子供、体力の低下した人や、虚弱体質の人には、漢方治療薬が第一選択薬となることもあります。気・血・水のバランスを整える漢方薬を選択します。
自律神経失調症と診断され、なかなか症状が回復せずに困っている方で、漢方の治療を行ってみたい、けど自分に合うかどうか不安、効果がでそうか基準があるという方は、ぜひ一度このページを読んでいただいた後、漢方の外来や薬局にかかってみてください。
西洋医学では説明のつかない症状で自律神経失調症とまとめられることがありますが、漢方の場合は証という全身の状態に合わせて漢方薬を使用します。ここではどのような症状だとどのような漢方が選択肢になるかの紹介を行いますので、もし相談したいと思った時にはお近くの漢方医の先生や漢方薬局に相談してみてください。
気虚、血虚、水滞の状態である全身倦怠感には、補中益気湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯がよく用いられます。
めまい、立ちくらみには、水の流れを整える作用のある、真武湯、当帰芍薬散、苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯が用いられます。
気逆状態ののぼせ、顔面紅潮には、理気剤の黄連解毒湯、三黄瀉心湯、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、加味逍遙散が用いられます。
水毒による頭重感、頭痛には、呉茱萸湯、半夏白朮天麻湯が用いられます。
動悸には柴胡剤の柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯が用いられます。
なんとも言えない症状に対して、女神散、加味逍遙散を用いて楽になったという経験もあります。
自律神経失調症に対して用いられる主な漢方処方
以下に症状別に用いられる漢方処方を挙げます。
- 全身倦怠感がある人
- 食欲不振、無気力→補中益気湯
- 熱感→柴胡桂枝乾姜湯
- 動悸、神経過敏→桂枝加竜骨牡蛎湯
- のぼせ、顔面紅潮の人
- 体力があり、イライラする人→黄連解毒湯
- 体力があり、便秘がち→三黄瀉心湯
- 体力があり、便秘がち、イライラする→桃核承気湯
- 体力中程度、冷えがあり、月経障害がある→桂枝茯苓丸
- 体力はなく、冷えがあり、イライラ、月経障害がある→加味逍遙散
- たちくらみ、めまい
- のぼせ、冷え、動悸がある→苓桂朮甘湯
- 食後に眠気が出る、疲労感→半夏白朮天麻湯
- 冷え性、胃腸虚弱→真武湯
- 冷え性、疲労感がある→当帰芍薬散
- 頭重感、頭痛がある
- 冷え性、胃腸虚弱→呉茱萸湯
- 食後の眠気、疲労感→半夏白朮天麻湯
- 動悸がある
- 不安、イライラがある→柴胡加竜骨牡蛎湯
- 不定愁訴
- のぼせ、イライラ→女神散
- 冷えのぼせ、イライラ→加味逍遙散
ライフスタイルで注意すること
自律神経失調症の多くは、虚弱体質が原因で生じる場合が多いので、食事、睡眠、休養、軽めの運動など、普段の生活で健康的な日常を送ることが大切です。
参考文献
・漢方薬・生薬の教科書(新生出版社)
・漢方薬事典(主婦と生活社)
・漢方相談ガイド(南山堂)
・自分で治す女性の自律神経失調症(主婦と生活社)