じんましんは、蚊に刺されたようなふくらみが全身にできる病気で、多くは1型アレルギーが原因で起こります。
アレルギー性蕁麻疹の原因となるのが、食品や薬品、植物や動物などで、これらに含まれる原因物質が身体の中で異物として認識されると、身体の防御機能(アレルギー反応)が過剰に現れ、それによってかゆみや痛み、腫れを引き起こします。
皮膚以外にも唇やまぶたなどの粘膜が腫れたり、呼吸器に症状が現れ呼吸困難に陥る危険な場合(アナフィラキシーと呼びます)もあります。
症状はアレルギーによる反応であり、アレルギー物質と反応した肥満細胞という細胞から、ヒスタミンを中心とした化学物質を出し、それがかゆみや膨らみにつながります。皮膚や粘膜自体の疾患ではないため、西洋薬での治療ではアレルギーに対する抗ヒスタミン薬の飲み薬が処方されます。
しかし、抗ヒスタミン薬には眠気や口の渇きなどの副作用があり、日常生活の質を低下させることが多々あります。
長期服用・外用しても改善されない場合は、じんましんの原因をつきとめて根本から対処できる場合は対処する必要があります。
ただし、体質的に蕁麻疹を起こしやすい体の状況というのがあり、それはアレルギー物質の摂取と関連なく起こります。例えば、蕁麻疹が出やすくなる体の状況というのは、気温の変化やストレス性のものがあります。
普段からストレスを強く感じており、さらに過労や睡眠不足、肉食中心で野菜不足の食事を取っているような人は、じんましんが起こりやすくなります。
過食や偏った食事をしない、辛い食べ物など刺激物を控える、お酒を飲みすぎないなど、まずは普段食生活から振り返ることも大切です。そしてストレスと疲れを和らげるだけで、もう蕁麻疹が出てこなくなる人もいるため、やはり体全体を整える必要があります。
じんましんと漢方薬
漢方薬については、じんましんの症状を改善する目的で一時的に使うものがありますので、いくつか紹介します。これは体質改善的なところもあるため、アナフィラキシーのような緊急の場合(呼吸や喉の違和感、お腹の痛み、血圧低下、声のカスレの可能性が少しでもある場合)は、迷うことなく119番(救急車call)してください。
蕁麻疹、特に慢性の蕁麻疹の場合、原因ははっきりしないこともあります。風邪のウイルスや蓄膿なども実は蕁麻疹を起こしやすくなりますし(正確には肥満細胞の脱顆粒が起こりやすくなる)、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群も蕁麻疹が出やすくなります。そして、同じ食べ物を食べても出るときと出ないときがあるのは、肥満細胞の反応する閾値がかかわってくるためで、疲れたりストレスがあると蕁麻疹が出やすくなります。
トマト・ほうれん草・なす・そば・たけのこ・ワインなども蕁麻疹が出やすい食材ですが、体調によって出ない場合もあります。
じんましんにおすすめの漢方薬
『越婢加朮湯』 ◇熱感と炎症が強いじんましんに‐
越婢加朮湯は、関節炎や結膜炎、アレルギー性鼻炎、皮膚炎などに幅広く使われる薬です。いずれも強い炎症や熱感、腫れやむくみによる痛みに対して用いられます。じんましんであれば、運動時や入浴時、寝る時布団に入った時など、身体が温かくなったときに症状がひどくなる「熱証」タイプに適しています。
構成生薬の石膏は炎症している患部の熱を冷まし、朮や麻黄が体内でだぶついている水をさばきます。構成生薬の麻黄には抗ヒスタミン作用があることが西洋医学的にもわかっています。越婢加朮湯に適した体質は、普段から体力があり、胃腸が丈夫で、体内の水の巡りが悪く、浮腫みがあったり、喉が渇いて水を飲むわりには、尿が出にくいタイプとされます。水の症状が無い場合は、黄連解毒湯も考慮してみてください。
著しく胃腸の虚弱な人、動悸、高血圧、狭心症など循環器系の障害がある人、腎障害などがある人は使用を控えるか、専門家に相談することをおすすめします。また甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。
『麻黄附子細辛湯』 ◇いわゆる寒冷じんましんに‐
普段から身体に冷えがあり虚弱な体質で、寒い季節になると現れるじんましんには、麻黄附子細辛湯が適しています。麻黄、細辛、附子と非常にシンプルな構成で、全て身体を強く温める作用があるため、自分でエネルギー(熱)を作り上げることが出来なくなった身体を内側から温めて、冷えや痛みを改善します。また麻黄には抗ヒスタミン作用があることが西洋医学的にもわかっています。
方剤名にも使われている「附子」とはトリカブトの事で、非常に毒性の強い植物です。もちろん毒を省いた安全なものが使われていますが、稀にのぼせや舌のしびれが現れることもあるため、漢方外来のドクターや漢方薬局などの専門家と相談しながら服用することがよいでしょう。体力があり、暑がりでのぼせが強い人、高血圧で循環器系に障害がある人、著しく胃腸が弱い人は服用を控えてください。副作用として肝機能障害などが記載されています。
『抑肝散』 ◇イライラタイプのじんましんに‐
漢方には身体の内臓やその働きを「肝・心・脾・肺・腎」の5つで分けて、そのバランスで病状を判断し漢方薬を選択することがあります。イライラや怒りの感情は「肝」がバランスを崩していると考えられおり、この抑肝散は名前のとおり、高ぶった「肝」を抑える働きがあります。また構成生薬は、気・血・水の巡りをよくするものがバランスよく含まれており、その中でも特に柴胡は「肝」の熱を冷ましイライラ気分を鎮める作用があります。
体力は中等度で、興奮しやすくせっかち、時に瞼がピクピクと痙攣を起こすようなタイプのじんましんに適しています。瞼や手足などの筋肉のひきつれも「肝」が関係していると言われています。
食欲不振や吐き気がある人は注意が必要です。胃腸虚弱な人は抑肝散化陳皮夏も検討するとよいでしょう。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチー、消化器症状などが記載されています。
『香蘇散』◇食事後に出てしまった軽度じんましんに –
魚を食べたら、ポツポツと腕や腹にじんましんが・・・・このような食物アレルギーによる軽度のじんましんには、昔から香蘇散が使われてきました。香蘇散は虚弱な人の風邪の初期症状にもよく使われます。また風邪の症状がなくても精神的な不調など心の安定を目的に使われる場合もあります。
構成生薬の香附子、蘇葉、陳皮はいずれも気剤とよばれ、爽やかな香りがあり、この香りを身体に取り入れることによって、滞った気を身体全体に巡らせます。またその中でも蘇葉は、食卓でもよくみかける「大葉」の仲間でで、殺菌効果やアレルギーを抑える作用もあるといわれています。刺身の下にひかれているのはお飾りではなく、きちんと役目を果たしているのです。
アレルギー症状が強い時は必ず自己判断せず、病院を受診してください。甘草を含んでいるため、他の漢方薬との併用や甘草を含む食品の摂取に注意してください。副作用として、ミオパチーなどが記載されています。