うおのめ(魚の目)やたこは、皮膚の一部分に圧迫や摩擦などの刺激が常にかかることで、角質層が厚くなり硬くなっていく症状をいいます。
足の裏に現れる魚の目は名前のとおり、患部が魚の目のような円い形となり硬く角質化してゆき、芯のようなものが現れる状態で、慢性化すると皮膚の真皮という血管や神経が分布している場所を芯が圧迫するので、歩くときに痛みを伴うようになります。
一方「ペンだこ」のように足以外の場所にでき、皮膚表面が丸く盛り上がり硬くなるのがたこです。たこは皮膚表面が突起するだけで、皮膚下への角質化が進まないため、痛みを感じることは殆どありません。
西洋の治療としては、患部の角質をメスで削ったり、角質を柔らかくする軟膏薬を塗る、レーザー治療などがありますが、魚の目やたこの原因は、足に合わない靴を違和感を感じながらも履き続けたり、歩き方や姿勢が悪かったり、たこの場合はペンなど道具の持ち方や力の入れ方に問題があるためで、まずはそれらを根本から見直し改善する必要があります。
残念ながら西洋薬や漢方薬だけで改善することは少ないと言えるでしょう。ただし身体が常に冷えている人は、血流が悪く皮膚の新陳代謝が低下するため、魚の目ができやすく、治りにくいと考えることもできます。
そういったタイプの人は、身体を温め血流を改善する漢方薬を使ってみるのもよいかもしれません。
うおのめ(魚の目)・たこにおすすめの漢方薬
『紫雲膏』 ◇患部に直接アプローチ ‐
紫雲膏の生みの親は、江戸時代の外科医、華岡青洲(はなおか せいしゅう)で、全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を世界で初めて成功させた人物としても有名です。古い医書である「外科正宗」に記載されている潤肌膏に、青洲が豚脂(豚の脂)を加えて改良したものです。
大きめのバンドエイドやガーゼなどに紫雲膏を塗り、患部に貼るという湿布のような使い方がおすすめです。
肌を潤し、角質を軟化させて平らにします。ひび、あかぎれ、肌荒れなど乾燥性の皮膚の不調、やけどや痔核による痛みにも使われますが、ジュクジュクした化膿している状態には適していません。紫雲膏は赤紫色の軟膏なので、靴下など衣服が汚れないよう工夫してください。
また豚脂は入っているため、独特の匂いがあり苦手と感じる人もいるようです。しかし漢方薬の中で、唯一魚の目に効果があると表記されているのが紫雲膏です。ドラッグストアでは1000円以内で購入できるチューブタイプもあるので、是非色や匂いを気にせず試してみてください。
『四物湯』◇ 皮膚が乾燥して色つやが無い人に ‐
血そのものの質が悪く巡りが悪いため、皮膚に十分な栄養が行き届かない状態を漢方では血虚といい、四物湯は血虚の第一選択薬となります。
血液循環による体温維持ができないため身体が冷えてしまい、新陳代謝が低下しているので肌は乾燥して、しもやけやしみができやすく、足がつることがあったり、疲れやすいというのが特徴です。
四物湯は、血を補いつつ全身に巡らせる作用のある4つの生薬で構成されており、貧血や婦人科系の不調に用いられることも多い薬です。直接、魚の目やたこを改善する効果はありませんが、冷えや皮膚の状態が自分の体調に多く当てはまるようなことがあれば、試してみるのもよいでしょう。
著しく胃腸の虚弱な人、食欲不振や悪心、嘔吐がある人は使用を控えてください。